HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

記号ブランドに負けたくない。

2011-09-16 15:20:06 | Weblog
 ファーストリテイリングの事業戦略説明会では、同時にユニクロの「 イノベーション プロジェクト(IPJ)」も発表された。
 柳井社長は「IPJの服は進化する究極の普段着。10年を目処に、ユニクロ全商品に対してIPJを反映させたい」と語ったが、ユニクロがこれまでに捕捉できなかったベーシック路線に飽き足りない層、また「カジュアル・スポーティー」という新たな市場開拓に着眼したのがこのプロジェクトではないかと思う。
 キャッチコピーには「画期的な機能性+普遍なデザイン性 これからの服、進化した服を、ユニクロから」とある。ユニクロが得意とする高品質、高機能ではすでに目新しさがないので、更なる機能アップと、新たな概念である「普通のデザイン」で、攻めようということだ。
 ユニクロがメーンとして攻略するアジアの主要都市を見ると、欧米ブランドの進出が著しい。ビルボードには派手なビジュアルを使ったインパクトのある広告。かつて日本がそうであったように、高度成長期で最初にファッションを知るのはロゴマークだ。これはコピー商品が出回るアジアの方がより顕著といえる。

 先に書いたようにアジアではいくら有名ブランドでも、地域性や消費者の職業階層からクロージングやドレスはそれほど売れない。ただ、人間が裕福になった証しとしてブランドを着たい気持ちはみな同じで、そうしたニーズに応えているのがアディダスやナイキではないだろうか。
 広告戦略が巧みで、ログマークは際立つ。何よりスポーツは世界共通の言語である。すでに両社がスポーツの領域を超えて、カジュアルメーカーとして世界戦略を狙っているのは、周知の事実だ。
 注目すべきは、こうしたメガブランドのビジネスモデル。本国では競技スポーツを中心とした商品開発に惜しみない投資を行い、北米、アジア、欧州などの地域によってマーケティング戦略を行なう。
 しかし、莫大な利益を生むのは、各地域の商社や委託メーカーが製造する汎用商品やライセンス商品からのロイヤルティ収入だ。

 かつてユニクロは「スポクロ」というスポーツカジュアルな商品を発売した。あえなく失敗には終わったが、転んでもただで起きない柳井社長ゆえ、捲土重来のチャンスをうかがっていたはず。
 それは有名スポーツブランドがロゴマークをつけるだけで儲かることへの反抗心へと昇華し、「ならば、うちはより進化した機能と普遍のデザインで勝負する」と、戦略を先鋭化させたのが、今回のイノベーションプロジェクトのように思う。
 もっとも、スニーカー市場はアディダス、ナイキの牙城であることに変わりない。だから、スポーティライクなウエアなら十分切り崩すことは可能だと、柳井社長は踏んだに違いない。
 ブレーンには、グラフィックデザインでは日本を代表する佐藤可士和、元イッセイミヤケのデザイナーでFR傘下のヘルムートラングも手がける滝沢直己。その手練で秀逸な広告クリエイティブワークと、日本人ならではの繊細で緻密なデザイン感性で、進化するユニクロを世界に発信する。

 IPJのコレクションではスポーティ以外にタウンカジュアルも披露された。これは滝沢直己がファッションデザイナーとして譲れなかった部分だろうが、IPJが10月14日にオープンするニューヨーク5番街店で披露される背景には、世界のカジュアルマーケットで更なる市場深耕を目指す狙いもあるようだ。
 世界のトップメーカーやカジュアルSPAに比べると、ブランド力で落ちるユニクロが機能性と普遍デザインでどこまで世界市場を攻略し、名実ともにグローバルブランドになり得るか。今後の動向を見ていきたい。
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アジア攻略の糸口は見えたか。

2011-09-16 12:09:13 | Weblog
 さる9月14日、ファーストリテイリングが2011年の事業戦略説明会を開いた。出席者は世界中から招集されたスタッフ、
および株主、メディアなど。壇上には同時に発表された「 ユニクロ イノベーション プロジェクト」に携わったクリエイティ
ブディレクターの佐藤可士和、デザイナーの滝沢直己の姿もあった。
 柳井正社長は以前に語っていた「ユニクロがグローバルブランドになり世界中のあらゆる人に、本当に良い服を楽しんで
いただく存在になる=世界一のアパレル製造小売業になる」を繰り返しながら、具体的な数値目標として「2020年 売上高
5兆円 経常利益1兆円」を公言した。
 攻略先のメーンはアジア市場のようで、中心都市にその国の旗艦店をつくり、総出店数は中国100店舗、韓国50店舗、台
湾30店舗という。

 市場規模を考えると、世界で一番人口が多いのはアジアだから、この戦略は間違ってない。また、歴史と伝統に裏打ちさ
れた技術とクリエーションの宝庫で、常に発信されるトレンドに左右される欧米より、ファッションにまだまだ関心が薄い
アジアの消費者の方がFRのブランド、テイストの双方で洗脳しやすいと考えたのも理解できる。
 特に中国は南に下ると、気候は温暖湿潤、亜熱帯になる。1年を通してTシャツやジーンズで過ごせるわけで、それはユニ
クロが最も得意とするアイテムだ。逆に北上すれば冷帯、寒帯に入る。こちらもヒートテックやダウンジャケットという武
器があるので、十分に攻めることができる。
 経済発展が著しい北京や上海ならホワイトカラー向けのビジネススーツも必要だが、地方都市は工場や農村で働くブルー
カラーが主体。ロードサイドでカジュアルの方が売れるのは、火を見るより明らかだ。

 中国国内では増値税の還付がないため、ユニクロは高級ブランドで、一般国民の年収からすれば決して安い商品でない。
しかし、ザラはハルピンや長春、 H&Mは成都や重慶、オランダSPAのC&Aは瀋陽や無錫などの地方都市にも続々進出して
おり、彼らより先に中国でのシェアを取らなければ、グルーバル企業にはなれないとの危機感もあると思う。
 まあ、柳井社長にしてみればアジア発のFRだから、市場に対する感性もマインドも一番近く、ビジネス戦略でも十分勝算
はあるという考えだろう。
 柳井社長は発言中、居眠りしているスタッフに向かって、「聞く気がなければ、会場から出て行ってください」と辛辣な
言葉を浴びせた。そんな状況のみならず時々売場で突っ込んだ質問をすると、明確に説明できないスタッフはいる。柳井社
長の思惑とスタッフの意識には、まだまだ乖離があるように思うが。
(…続く)
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