HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

旬のフランス映画は、リアルクローズの研究にもってこい。

2013-07-05 10:11:28 | Weblog
 「フランス映画祭」というイベントがある。在日フランス大使館が主催し、単館上映の封切り作品から話題作のリバイバルまで、ピックアップして上映するものだ。今年の福岡上映会は、6月の29日から7月5日まで2会場に分かれて開催された。
 小学生からずっとフランス映画を見て来たものとしては、せっかくなので何とか観るようにしているが、今年は時間がなくて1本だけにとどまった。タイトルは「恋のときめき乱気流」。原題も「Amour&turbulences」と、まさに恋と乱気流である。

 だいたいプロットが想像できるものは、イントロに出てくるキャスティングのフォント使い、カメラワークやカット割、衣装などを期待する。この映画もタイトルからしてラブコメのようだったので、ウィットに富んだ台詞や秀逸な演出、ヒロインのウエアに注意を払って観た。

 ストーリーはNYのアパートで暮らす、売れ出ないアーチストのヒロイン(リュディヴィーヌ・サニエ)が目覚めるシーンから始まる。着ているナイティは全面にplisseeを寄せステッチテープを貼った「Nuisette」(ベビードール)。セクシーというより、可愛さを残す少女のようなアイテムだ。この時はわからなかったが、そのテイストが映画全体でヒロインが着る衣装のコンセプトになっていると、ストーリーが展開するに従って気づいた。

 手短に身繕いをし、向かうは生まれ故郷のパリ。トップは白のBlouse、ボトムは赤のMini Jupe(スカート)。上には短めのManteauはTrench(トレンチコート)。 すっかり定着したインド人運転手のイエローキャブを迎車し、一路、JFK空港へ。
 白のブラウスはプロモーション写真で着ているものだった。フィルムではシャツカラーのプレーンなデザインにしか見えないが、写真を見ると地模様があって抜け感があるものとわかる。白のLingerieと合わさって清潔さを感じさせつつ、コンサバに見えないところがパリらしい。

 スカートは鮮やかなRougeで、ウエストからヒップ、ヒップからヘムが切り替えられたバイマテリアル。特に下の切り替えはレーシーでふわっとしたボリューム感がある。飛行機に乗って座席の下を覗いてるとき、隣の親父がスケベそうに尻を見るシーンでは素材感がよくわかった。妻から「何見ているの」と聞かれ、「スカートを見ている」の台詞が巧く言い当てていた。



 隣に座ったのは、3年前に付き合っていた元カレ。ここからパリ到着までにドタバタ続きの回想シーンがフラッシュバックで展開される。パーティや個展、デート、ヒロインの自宅、元カノの部屋、ベッドと、ヒロインが身につける数々のリアルクローズは実に見物だ。
 パーティで着ていたのはsoireeにありがちなbustierやnoireではなく、襟がつまり袖もついたRobe(ドレス)。ここにもヒロインのフェミニンさを表そうというスタッフの意図が感じられる。エッフェル塔の最上でデートをするシーンでは、金属糸をツィード風に織った素材で、光沢とグラデーションが利いた表情がパリの夜景に映える。



 彼のプレイボーイぶりに散々振り回され、傷心状態のときに着ているワンピースは、モノトーン柄のimprimeでfluideのシルエット。恋に疲れた心情を表すかのように、広めの襟ぐりをうまく使って右肩を出す。余り背が高くないこともあって、細い脚を出した華奢な着こなしがヒロインへの好感を呼ぶ。



 そして、寄りが戻り(実際はそうではないが)、ベッドインという時の Soutien-gorgeが、classiqueなTriangleタイプ。カップレスで透け感がありMamelonが見えそうなのだけど、キャミソール風でことに及ぶ前のいやらしさは少しも感じさせない。ここにもストーリー全体で貫かれる「Mademoiselle」のテイストが表れている。



 ヒロインの リュディヴィーヌ・サニエは、パリ・ジュテームの「Parc Monceau」で米国人俳優のニック・ノルティと共演した。Courcelles通りをメトロのモンソー公園駅まで歩くシーンで着ていた衣装も、花柄のカットソーブラウスにフレアスカートというパリジェンヌの日常着だった。この時は1カットの長尺だったため、夜のシチュエーションでも衣装はよくわかった。





 ファッションが話題になる映画と言えば、古くは「華麗なるギャッツビー」や「ティファニーで朝食を」、最近では「プラダを着た悪魔」など、ハリウッドが有名だ。でも、リアルクローズを見るには旬のフランス映画の方がいい。DVD化されないものも多いので、感性を研ぎすまして衣装研究に集中することができる。

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