HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

スタイリストで食いたきゃ、撮影知識をつけてこい。

2013-08-24 09:42:51 | Weblog
 バブル時代、アパレルメーカーの多くが銀行の乱発融資とキャッシュフロー経営の導入で、こぞってレストラン事業に進出した。おかけで、アパレルからデザインに移ったこちらには、リーフやポスターなどの仕事が数多く入って来た。

 とにかく食材は豪勢で、キロ5万円の松坂牛や特大越前ガニなどの食材を使った料理の撮影は、枚挙に暇がないほどだった。ただ、博多でガキの頃から地元食材を食べて来た人間からすれば、メディアに躍らされるだけの大して美味くもない店も少なくなかった。
 
 クライアントにはそう言うわけにもいかず、いかに「美味そうに演出するか」がポイントだった。まあ、クリエイティブワークを請け負うからには「コースターや箸袋、マッチなんかはやらんぞ」と大見栄切りつつ、それらはそこらのデザイン会社に外注し、メーンのリーフやポスターで勝負していた。

 アパレルメーカーの依頼で、ファッション専門学校を出て2~3年のスタイリストがスタッフとして加わることがあった。ディレクターとして何気なく小道具を探してくるように命じた。箸や器などの小道具が盛り付けを演出し、味のイメージを決める重要な要素なのだ。

 ところが、彼らは何を聞くでもなく、キョトンとしている。日頃はアパレルで服のコーディネートしかしていないのだから、料理の撮影なんて門外漢と言わんばかりである。さらに仕事が進んでも撮影用語を全く知らずコミュニケーションが進まない。学校ではファッションしか勉強しておらず、お人好しの講師陣におだてられたのか、天狗になって撮影という仕事の本質など、まったく理解していなかった。

 こちらはクライアントから制作費をもらい、その範囲内でデザインやコピーなどのクリエイティブワークを組み立て、予算を割り振って仕事をしている。それがプロの仕事である。だから、最低限の知識は学んできてほしいだけ。それが機転を生み、気働きにつながるからだ。

 フードスタイリストという職種がある。料理の撮影専門で、素材はもとより、器などの道具を集めて撮影をアシストするスタッフだ。料理専門誌や食品のCMを制作をする場合は、こちらを起用する。しかし、ゴーストやハレーション、寄る、かじる、シズル、ハコ馬やレフ、けつカッチンくらいは、スタイリストと名乗るなら知ってて当たり前の撮影用語である。

 用語を理解すれば、スタッフコミュニケーションが円滑になり、撮影というものがどんな仕事かがよくわかる。それはファッションでも、料理でも変わりない。所詮、他人の褌で相撲を取っているとか、月給5万円程度のブラック業界とか言われる職種だ。

 しかし、元請け孫請けのバーチカルシステムの業界は変えようがない。それを超えたいのなら自分が行動するしかない。こちらがクライアントから予算を預かり、制作全般を仕切っている以上、限られた時間と資金で最高のものを目指すのは当たり前である。

 だからこそ、彼らが自由にできることなどはない。知識をつけてカメラマン他のチームスタッフの中で、スムーズに仕事を進めていく能力や知識が求められるのである。スタイリストになりたければ、学校では「ファッションより撮影の知識を学んでこい」ということである。
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