HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

まやかし事業が狙う先。

2014-09-04 06:38:26 | Weblog
 だいぶ前になるが、ちょうどお盆休み中の8月14日、福岡アジアファッション拠点推進会議のサイトで、8月6日に開催された「福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」の事業報告がなされた。

 この事業ついては当コラムで問題視してきたが、報告内容では「すばらしいファーラムだった」を装う美辞麗句とその根拠が羅列されている。もちろん、こうした報告になるのは、こちらも想定していたから願ったりだ。

 なおかつ、推進会議がすばらしいファーラムだったと言え言うほど、矛盾点が出てくる。だから、当方としても新たなコラムテーマとなり、非常に好都合である。

 では、それをあげてみよう。報告では「従来のファッションだけではなく、コンテンツや食・観光などと合わせ『クールジャパン・フクオカ』プロモーションを行い、福岡の魅力をアピールし、集客やビジネスにつながるように情報発信を行うことを発表」とある。

 こう書けば、いかにも事業が従来のファッションから広がりを見せると受け取れる。しかし、そもそも福岡アジアファッション拠点推進会議の設立主旨では、「地場ファッション産業の振興」が目的だったはず。まず、ここで矛盾が生じてしまう。

 地場ファッション産業の振興と言っても、メーンはRKB毎日放送の事業と化したファッションイベント重視で、目的は当初から形骸化している。テレビ局の事業やタレント事務所の収入アップに貢献し、地場ファッション業界は不在なのだから、主旨自体が何の意味もなしていない。

 また、報告にあるクールジャパン・フクオカをテーマに、ファッションだけではなく、「食やコンテンツ制作と連携して、福岡の知名度向上、福岡への集客促進及び海外販路開拓を図る」は、ファッション拠点推進会議が立ち入ること自体が大間違いだろう。

 「食」ということを語る時点で福岡県なり、福岡市が「別の事業」でやればいいだけの話だ。ファッション事業の予算を引っ張り出すのに、別の「産物」まで無理矢理こじつけるのは、あまりに筋違いのことである。

 一概に福岡の食といっても、博多ラーメンから玄界灘の魚介類、苺あまおうなどの農産物と多岐に渡る。そこまでくれば、もうファッション事業の範疇ではない。報告にあるタレントグループLinQは、あまおうのキャンペーンに参画しているが、これはJA全農ふくれんの事業。ファッション事業が口出しする次元ではない。

 また、唐突に「コンテンツ」「コンテンツ制作」が出てくるのも不可解である。これはサイトを立ち上げて、食などの物販環境を整えようということなのか。それにしても、行政や推進会議は課金のプログラムまで立ちいることはできない。

 Webコンテンツは過去にも制作している。 2010年に福岡県は国の緊急雇用基金2,700万円を利用して「福岡ファッションビジネス情報発信システム」を制作した。

 この事業は企画コンペで募集されたが、なぜかRKB毎日放送の子会社が事業推進者に選定された。だが、実際にでき上がったサイトは、地場ファッション情報を発信するほどの機能は果たさず、2年前から全く更新されずに今年閉鎖された。

 まさにコンテンツの制作能力を欠いたのである。県と一緒にこの業者選定に当たったのは推進会議だ。しかも、なぜかコンテンツ制作の一部を吉原企画運営委員長の学校が請け負っている。緊急雇用基金なのに全く不公正な実態が浮かび上がるのだ。

 それゆえ、推進会議が「コンテンツ」と声高に叫ぶほど、胡散臭いものはない。見方を変えれば、コンテンツは情報発信の名を語った「イベント」を遠回しに指しているとも考えられる。いろんなタレントを使いアピールすることが事業になるからだ。

 福岡市の「カワイイ区」同様に利害関係者とっては、右から左でマージンが取れるわけだから、あからさまに言えないのは想像がつく。そういう意味からも、「コンテンツ制作」は何とでも解釈でき、予算がゲットできる打ち出の小槌のような言葉である。

 そこで肝心なのが、今後の事業予算の出所だ。推進会議の発足当初、福岡県と福岡商工会議所が年間で3,000万円の資金を拠出した。この利用条件は福岡アジアコレクションの実施、情報発信サイトの制作、新人デザイナーの発掘、その他ファッション事業と4つあった。

 しかし、事業推進者に選ばれたRKB毎日放送は、2年目以降、福岡アジアコレクションに事業資金のほとんどを費やし、残りの3つに全く触れていない。それは事業開始から6年を経過して、ますます顕著になっている。

 県などからの資金拠出は3年で終了したが、最終年に高島宗一郎福岡市長が誕生したことで、今度は福岡市が「ファッション関連事業予算」を年間3,000万円拠出するようになった。それがそのまま推進会議に横滑りしているのである。

 穿った言い方をすれば、RKB毎日放送にとってはKBC九州朝日という競合局アナが、今度はカネづるになったのだ。ところが、ここに来て高島市長には、自治体の長にあるまじき行為ががぞろ出て来ている。

 人工島へのこども病院の移転問題、議会中の高級フィットネスクラブ利用、出張時のファーストクラスの利用、出張を利用した東京での私用滞在、思いつきで始まったPR事業「カワイイ区」などへの公費投入等々。どれも市政軽視が甚だしいものばかりだ。

 極めつけは福岡市中央保育園の移転。この事業をめぐっては不必要な土地取得を行ったとして、背任容疑で刑事告発されている。数日前には出張した韓国釜山で、「一般女性と一夜を共にした」ことが報道された。

 さらに、私的に上京した折りに公費のタクシーチケットを利用するなど、不祥事が次々と明るみに出ている。まさに福岡市政を私物化しているとしかいいようがない。市長選出馬どころか、即刻辞任に値することである。

 ところが、先日、高島市長が11月の市長選挙に出馬すると報道された。市議会の自民会派の支援、麻生副総理兼財務大臣の後ろ楯もあって、本人は現職として選挙戦を優位に戦えると思っているようだ。これが事実なら、どこまで面の皮が厚いのだろうか。

 尤も、世論はともかく推進会議はすでに高島落選、福岡市の事業見直しを想定しているようだ。それは報告書の「特別顧問である小川福岡県知事らの挨拶の後、吉原企画運営委員長より昨年度の事業及び今年度の取組みについて報告」を見てもよくわかる。

 ここ数年、一連の事業で福岡県の存在は薄かった。メーンの資金拠出が福岡市に変わっていたのだから当然である。「特別顧問である小川福岡県知事」などを強調するところは、推進会議が不祥事続きの高島市長を避け、県に寝返ったと見えなくもない。

 ただ、今度は単に「ファッション事業」というだけで、小川県知事もすんなり予算を出すわけにはいかない。そこで「クールジャパン・フクオカ」をテーマに…食やコンテンツ制作と連携して」という口実で、予算獲得の折り合いをつけたとみることができる。

 しかし、これもどこまで実現可能かは未知数だ。現に福岡県はこれまで中国・大連で大々的な展示会や見本市を行っているが、閑古鳥がなくほど集客力はほとんどなく、出店企業へのリターンはほとんど見られないからだ。

 だから、今回の「福岡の知名度向上、福岡への集客促進及び海外販路開拓を図る」は、所詮、予算獲得のための謳い文句に過ぎない。だいたい、海外マーケットがそんな簡単に反応するわけがないのは、多くの地元企業が認識していることだ。

 それを本当に信じて疑わないのなら、よほどのノー無しだし、事業自体の見通しの甘さを露呈する。だから、本音のところは予算がほしい利害関係者が勝手に身内、手前味噌で言っているというのは想像がつく。

 「クールジャパン・フクオカ」なんて言葉自体も、すでに陳腐化している。「福岡への集客促進及び海外販路開拓」にしても、これまでの事業の達成度合いを見れば、絵に描いた餅に過ぎないのは一目瞭然だ。

 RKB毎日放送、代理店、制作会社、一専門学校、タレント事務所と事業に関わる利害関係者にとっては、手段はファッションでなくてもいいはずだ。目的はコンテンツという名のイベントや制作物で収益を上げること。その事業が継続できれば、大義なんて関係ないのである。そこに地場ファッション業界振興の意図は欠片もない。

 RKB毎日放送が福岡アジアコレクション(FACo)の仕込みを丸投げしている大阪のアイグリッツは、このほどファッションイベント「東京ランウェイ」を来年2月にニューヨークに進出させると発表した。

 とすれば、「服岡」なんぞと平気でヌカしている企画運営委員長の御仁が、「クールフクオカ イン ニューヨーク」なんて言い出さないとも限らない。

 まあ、吉田前市長も天神の「朝カフェ事業」で、堂々とメディアを前に「朝、カフェで新聞を読むなら、ル・モンドだよね」なんて語るなど、ノー無しぶりを見せたのだから、もしかするかもしれない。

 ちなみに「ル・モンド」は夕刊紙だ。元新聞記者の元市長がこの低レベルで、また市長選に出るというのだから、いやはやである。ただ、こうした政策レスで無能な人間が為政者についた方が推進会議、利害関係者にとっては願ったりなのだろうが。
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