HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

今の市場に対応する暫定型。

2014-09-10 13:01:27 | Weblog
 先日、11月13日にグランドオープンを迎える福岡パルコ新館の概要が発表された。ストアコンセプトは、「20代~30代の働く女性、高い消費マインドをもつアダルト、ファミリーと幅広い層をターゲットに、福岡天神の新たなスタンダードプレイス、環境を提供する場として、毎日通いたくなる場を提供していく」という。

 ちょうど2月頃、当コラムで「10代後半から20代前半」のヤングは、嗜好の変化が激しいが、20代半ば以降のヤングアダルトはトレンドに左右されなくなる。だから、都市部のファッションビルがこうしたヤングファッションをリーシングしても、2年、3年と売上げを維持するのは難しいということを書いた。

 真偽のほどは定かではないが、地元専門店からは「パルコからセレクトでヤング業態の開発が打診された」という話が漏れ伝わってきた。しかし、前出のような理由から多くのバイヤーが開発に二の足を踏んだようで、キメキメのヤング業態が勢揃いというまでにはいかなかったようである。

 パルコ側もターゲットエージを上下に広げるというより、売上げが安定するヤングアダルト以上、あるいはコスメや雑貨をシンクロさせた「ライフスタイル提案」を軸に、コアになる女性客に照準を当てながら、売り逃さないマインド編集にならざるを得なかったというのが、筆者の見方である。

 テナントは45店中、24店が「九州初」、15店が「西日本初」という。でも、こうした冠も先日、熊本で計画が進む再開発ビルのケースを取り上げたが、テイストが既存業態と被ればライフスタイル提案と同様に、陳腐化した言葉にしか映らない。

 現に初上陸とは言っても、フリークスストアや雑貨まで揃えるアダム エ ロペ マガサンには、特に目新しさは感じない。強いて言えば、当面の集客の核はケイトスペードのディフュージョンライン「ケイトスペード サタデー」が握るくらいだろうか。

 ただ、このブランドのファーストライン「ケイトスペード 」は、もともとサンエーインターナショナルが米国のケイトスペード LLCと独占輸入販売契約を結び、2009年に同社との合弁によりケイトスペード ジャパンを設立して、事業を展開してきたものだ。

 サンエーインターナショナルは、11年に東京スタイルと共同株式移転により、TSIホールディングスという持ち株会社が設立されたため、その子会社となった。その後、TSI HDは、ケイトスペード ジャパン社の株式を米国ケイトスペード LLCに譲渡している。

 つまり、それまでは商品企画を日本の市場に合わせる意向が通ったかもしれないが、 現在ではバーバリー同様に完全に米国本社によってコントロールされるのである。これはサタデーも然りだ。

 商品を見る限り、バッグはそのカラリングやデザイン、価格からある程度の人気はあるようだが、NYウーマンを対象としたプレーンなウエアが、どこまで福岡のお客を捉えきれるかは懐疑的である。

 また、スマホケースなどのグッズを含めた販売手法は、すでに他のブランドも採用するビジネスモデルだ。現に福岡パルコはポール・スミスで、似たような業態をすでにリーシングしている。

 他にもコスメや雑貨を含め、テイストや販売スタイルの被りを見るにつけても、メーカー側が完全に業態開発で袋小路に入っている証拠だし、デベロッパー側もテナントリーシングに対する手詰まり感は、否めないように映る。

 ショップでは、ある意味ビームスも注目される。天神の隣、大名に構える4フロアの旗艦店を閉店し、移転する新館では2フロア展開。路地裏だった大名を表のファッションストリートに仕立てた主人公がここ数年の苦戦で、ついに「天神リロケート」を決断したということだ。

 ビームス福岡より天神西通り近くに店を構えていたにも関わらず、ユナイテッドアローズのB&Yは、当にソラリアプラザに移転している。ビームスのパルコ移転は天神と数百メートルの差は集客に大きく、JR博多シティ店の状況も加味した上での判断だったのだと思う。

 話は変わるが、ビームス福岡と同じ通りで、逆に西に離れた新築マンションの1階にこのほど、カレッジスポーツブランドの「チャンピオン福岡店」がオープンした。

 プレス発表には、「大学生から20-30代の若いエンドユーザーが多く訪れるが、飲食店も多く、女性客も少なくない」「同店が出店したのは天神西通りから少し入った、セレクトショップやアウトドアショップが立ち並ぶ先、静かで落ち着いたエリア」とある。

 ショップの話によると、日本製を主体に展開し、徐々にUS企画の商品も導入されるそうだ。ただ、ビームス福岡のケースを見ると、集客はもちろん、採算はどうだろうか。中央メディアは大名の本当の状況を知らないのだから、仕方ない面はある。

 早急な結論は出せないと思うが、運営するゴールドウィンが「パルコ新館の方が良かった」と、弱音を吐かないことを祈りたい。



 パルコに話を戻すが、新館にはカフェが計6店もリーシングされている。これも先日のコラム通り、今のマーケットの牽引役であることを如実に表す。言い換えれば、パルコが主要ターゲットをウエアだけで集客するのは、厳しいと認めたようなものだ。

 渋谷パルコにリーシングされたふなっしーの「FUNAcafe」が集客力をもち、他のウエア系のテナントがイベントを仕掛けても苦戦する状況を見ると、ファッションビルにおけるカフェ依存は、全国的な傾向のようである。

 ただ、こうしたカフェのリーシング、それによるコンフォータブルストア、癒しの空間がファミリーまで捕捉できるとは思わない。現にファミリー層が天神にいちばん求めるニーズは、乳幼児を預けたり、遊ばせる機能だからだ。

 「ベビーカーを押して、家族でゆっくりお茶する」なんてことは、幻想に過ぎない。少なくとも岩田屋のように乳幼児に対するハード&ソフトを充実しない限り、パルコがファミリー層を集客するのは難しいだろう。

 それにしても、飲食業態は物販に比べると歩率家賃は低いから、パルコ側がカフェや雑貨依存で収益を上げるには限界がある。また、飲食は一過性の流行に左右され易く、物販のように顧客化できないという課題も残ったままだ。

 まさかカフェくらいで、博多シティにある「くうてん」のように好調を維持できると思ったわけでもないだろう。そう考えると、パルコ側がいう「さらに進化する。パルコの次の業態を示す場としたい」は、「暫定型」というのが適当かもしれない。

 渋谷パルコのようにヨウジヤマモトがエドウィンと共同開発した「Yohji JEANS(ヨウジ ジーンズ)」は、リーシングされていないようだから、まだまだ地方店の域は脱していない。

 当面は天神を「そうつく」階層にアプローチする市場対応型の館というところだろう。そして、状況を見ながらテナントの入れ替えやコムデギャルソン「GANRYU」なんかのリーシングが検討されるのではないか。

 筆者なら、Yohji JEANSはY-3以外の選択肢が増えるので購入すると思う。でも、今回もまたパルコ新館のターゲットからは、外れたようである。
コメント
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