HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

共作で開く新たなマーケット。

2015-02-11 08:23:29 | Weblog
 先日、 スポーツメーカー「アディダス」の日本法人、ジャパン社とセレクトショップの「ユナイテッドアローズ(UA)」が、スポーツとファッションを融合したウエアの新コレクション「プレミアムエクスペリエンスコレクション」を発表した。

 従来、スニーカーなどのUA仕様はあったが、スポーツウエアでは初めてという。高級なスーツや革靴、シャツなどのセレクトイメージが強くなったUAにとって、このアイテムは顧客に対し、タウンユースに着てほしいという狙いがあるようだ。

 商品内容はテニスやラグビーなどトラディッショナルなウエア、筋肉などをサポートするコンプレッションウエアなどにUAのテイストを加え、上質で都会的なコレクションに仕上げたというから、汗臭くないきれい目の「街着」のニュアンスももつと思う。

 スポーツのカテゴリーにセグメントすれば、体育会系クラブの出身者で一流企業に勤めるビジネスマン、フィットネスジムのインストラクター、トレーナー向けにも、オフのスタイリング提案ができる。当然、新規ブランドより、ネームバリュウのあるアディダスの方が売れる確率も高い。

 これまで、UAはアディダスと別注スニーカーを仕掛けているので、協業自体は珍しくない。アディダスがもつ基本の木型にUAのエッセンスを加えるだけで、あとは製造ラインに乗せるロット、バイイングパワーは持ち得るから、容易だった。

 サイズ展開もUAのメーンターゲットである20代~30代だから、それほどのバリエーションは必要ではない。それで商品が見つからなくても、WEBサイトに行けばサイズはあるだろうし、最悪は海外から通販すれば良かったはずである。

 ところが、体育会系の方々やそれに匹敵する体型の人々からよく聞くのは、「カジュアルウエアでお洒落なものがない」ということだ。サイズならGAPやエディー・バウワー、ダイエーのグランバックで十分かもしれないが、とてもお洒落とは言い難い。

 日本人の感性にフィットするユニクロですら、ビッグサイズを置いている店舗は限られている。また、通販では試着ができず、人気のデザインや色はすぐに売り切れという話を多方面から聞く。

 仕事ではスーツや紺ブレ、クラブではスポーツウエアが似合うスポーツマンでも、休日に過ごすお洒落なアイテムがないというのは、確かに切実な悩みなのかもしれない。

 コンサバOLの彼女とデートをする時、ダウンジャケットにジーンズでは、彼女の方が興ざめだろう。現実にはレギュラーサイズの男性でも、まだまだ結構見かけるが。

 であるなら、スポーツマンの爽やかさを残しつつ、がっちり体型をスポーティに見せ、決して野暮ったくないアイテムというマーケットは、十分考えられるはずである。それはジャケットスタイルとも少し違う。その辺がアディダスとUAの協業の妙だろう。

 ここからは憶測になるが、アディダスなら世界中のスポーツマンの体型を計測し、データベース化しているだろうし、それから弾き出せばタウンウエアのパターンなど容易なはずである。素材は様々な繊維メーカーからサプライされているので問題ない。

 そこにUAの感性を加えることで、体育会系出身のヤングビジネスマン、にも、売れる企画は実現できると思う。さらにマッスル自慢のフィットネスジムのインストラクターやトレーナーなどにも、裾野は広がるのではないか。

 UAは派生業態であるビューティー&ユースなどのSPA化が稼ぎ頭になっている。UA業態の顧客はどんどん歳をとっているし、それをカバーしなければならないヤング、ヤングアダルトはファッション離れが激しい。

 これまで、ヤング感覚=細身=お洒落=UAのターゲットが成功の方程式だったと思う。しかし、今のマーケットを見る限り、それはもう幻想になりつつある。そうした層はファストファションやグローバルSPAで十分だからだ。

 UAとしても新たな市場を開拓しないとジリ貧になるのは十分承知のはず。とすれば従来、UAが掘り起こせてなかったマーケットとして、体育会系出身のビジネスマン、インストラクターやトレーナーの街着やカジュアルウエアというのは、「あり」なのかもしれない。

 特に一流企業に勤めていれば、彼らは決して安物のスーツは着ていないと思う。というか、ラグビーなんかをやっていれば、柔な仕立てでは持たないだろう。ある意味、会社を代表しているわけだから、周囲の視線は嫌が上でも気になるはずだ。

 だから、スーツ姿と遜色ないオフの街着があれば、そこそこの投資はできると思う。

 アディダスはこれまで、ヨウジ ヤマモトとのY-3やダーク ショーンベルガーとのSLVRといったコラボブランドを発表して来た。ただ、これらは年2回のコレクションを基本としたもので、モード感が強く汎用にはなりにくかった。

 その点ではトラッド、アメカジがベースのUAが仕掛けるアディダスの方が体育会系出身者の感性にはフィットするはずである。雑誌のターザンなんかとタイアップするプロモーションも進んでいるように感じる。

 実際にどれくらいのサイズバリエーションがあるのかわからない。やはり、メーンはレギュラーサイズだろうが、そちらを軸にすると売れる確率はどうなのか。サイズ規格を上に拡げて、体育会系に照準を当てた方がマーケットを開拓できるのではないか。

 もっとも、UAほどのブランド力があれば、体育会系ビジネスマン、インストラクターやトレーナーの市場をラルフローレンなんかに持っていかれたままでは、全くもったいない話である。

 まあ、個人的には協業ばかりでなく、オリジナルでも新しいマーケットを開拓してほしいのだが、そちらの方がUAにとっては高いハードルなのかもしれない。

 というのか、今の大手セレクト自体にメジャーブランドを捨て、新規ブランドで勝負するような余裕は見られない。

 アディダスにしても、メディアが特集するのは「スーパースター」や「スタンスミス」であって、セレクトが手がけるのも、せいぜいこれらの協業モデルに過ぎない。

 筆者もアディダスは好きなブランドで、70年代からトレフォイルマークを愛用して来た。前出のスニーカーもこれまで履いて来たし、今も持っている。でも、そろそろデザインが陳腐化したと思っているので、昨年はTECH SUPER2.0を購入した。

 アディダス自体は、いろんな木型を持っているだろうから、夏場はシンプルなキャンバスシューズなんかをオリジナルで発売してもらいたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする