HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

太めが復活しそうな予感。

2015-09-09 10:32:10 | Weblog
 秋物がすっかり出揃った。ショップによっては、ここ10年ほど続いたタイトの反動からか、太めのシルエット=ボックス、ルーズが復活しそうな予感がある。

 ガウチョパンツが売れたからでもないだろうが、ボトムでスリム&スキニーが何年も続くと、いい加減売る側も飽きてきたということだ。

 前シーズンくらいからコクーンコートなども登場。アウターのシルエットが変わってきたことを考えると、スリム一辺倒でなくなったのは確かだ。ただ、太めのシルエットは、お客に「太って見えそう」との心理が働くから、なかなか難しい。

 だから、いかにバランス良く取り入れて、着こなすか。当然、メーカー側も企画した「太め」を売るために、それをキーアイテムにしてMDを組み立てている。

 バイヤーもそれをわかってはいるのだが、いざ仕入れて売るとなると二の足を踏んでしまう。メーカーの営業も必死なのだが、トレンドを変えるとなると説得材料に乏しい。「思いきってガラッと変えてみません」では、バイヤーも疑心暗鬼になる。

 とすれば、やはりアイテムそのものを注目して、メーカー側の企画力やクリエーション、カッティング、ディテール処理、素材使い、そして肝心なシルエットから魅力を引き出すしかないわけだ。

 懇意にする国内外のメーカーの商品が出揃い、注目するブランドもボクシー&ルーズのアイテムを売り始めている。そこで、ラインやシルエットにスポットを当てながら、注目アイテムをピックアップしてみたい。




 まず、今年らしさでいけば、コクーンとまではいかないが、肩パットを取り除いてナチュラルなラインで、フェミニンさを打ち出したコートがある。冬はどうしてもダークカラー一辺倒になるので、生成りなんかで軽やかに着こなすのもいいだろう。

 肩パッドを外したことでストンとしたシルエットになり、細身には見えない。シェイプしたニットやパンツをインナーに組み合わせると、全体のバランスはよくなるはずだ。

 昨年の流れを汲んでいるのは、コクーンシルエットのコート。共地の紐をつけてウエストをマークしたり、まちのあるパッチポケットでディテールを遊んだり。10年ほど前にはラフ・シモンズがジル・サンダーで似たラインを発表していた。

 コクーンシルエットといっても、きちんと構築されたパターン。素材にはライトなウールを使用して、女性のボディをしっかり包んでくれるから、寒さにも十分に対応してくれる。機能美とでも言うのだろうか。空気の層ができるので、それだけ温かいのだ。




 コートが少しヘビーと感じるなら、ケープはどうだろう。電車やビルはほとんど暖房が効いている。屋外を歩くことがそれほど多くなければ、ライトなアイテムの方が重宝する。自宅にいてちょっとコンビニへ行く時でも、インナーを選ばない。

 着丈によってオフィシャルやタウンか、カジュアルかのオケージョンが変わる。こちらは太めというよりAライン。もともと女性らしいシルエットなので、着こなしさえ間違えなければいいのだ。

 ユニクロなんかがカラーバリエーションを出せば、ヒットしそうに思うがどうだろうか。

 レイヤーが逆になってしまったが、インナーにも太めが出始めた。トップではボクシーなシルエットに回帰させようというのがメーカーの狙いのようだ。




 立ち上がりにカットソー素材をそのまま使用したのではストレートラインに落ちてしまうので、エッジをボンディング処理し形を整えている。単なるおばさんシルエットにならないようにするには、分量の取り方が企画の明暗を分けるということだ。

 カッティングに工夫を凝らし、ヘムをスクエアにカットしたのもそうだ。フロントとバックの長さを変えて変化を付けている。ドレープやギャザーを入れるより、接ぎあわせでシルエットを作り出したところがお洒落だ。

 これなら、コンサバにならないから、シーズンアイテムとして打ち出しやすい。

 着丈で変化が付けられなければ、袖丈や加工でメリハリをつける。上質でストレッチが効いたコットン素材を2枚重ねにして袖にドレープを出したジャージートップ。幅をとったヘムのステッチやワイドな襟ぐりで変化をつけている。

 ボトムにもややワイドなパンツを合わせて、今風を前面に出せばずいぶんトレンドが変わったと受け取れる。ミニマルなデザインアイテムをいかに存在感あるように組み合わせるか。色も含めてトップ&ボトムのコンビネーションがカギになる。

 また、着こなしのポイントとしては、どちらもウエストマークやブラージングなんかの小細工はしないで、太めのシルエットを楽しみ、リラックス感を出してほしいというのがメーカーの意図のようだ。

 ボクシー&ルーズは分量が難しい。だから、メーカーとしては最初からパターンをきちとつくって、シルエットを完成化させている。ポリエステル素材でもこしがあるものをつかって、肩にはパットを入れれば形は整うという考えか。

 前合わせではなく、プルオーバーにして、比翼処理にしたところもミソ。モード感をどこまでうち出せるか。それがトップが変わったと思わせる重要なポイントなのである。




 ボトムもシガレットやストレート、さらにワイドへと移っている。レングスが短く、くるぶしを見せるのは今シーズンも継続中だが、ストレッチスキニーで下肢が強調されるより、リラックス感のあるボトムで颯爽と歩こうというアンチテージがうかがえる。

 ワイドパンツはどうしてもボトムにボリュームがでるため、背が低い、脚が短いなど体型コンプレックスがあると、手を出すのに二の足を踏んでしまう。だから、どこに面積をとるかが重要なポイントになるのだ。
 
 その意味ではむしろ効果的である。グレーや華紺などの軽めを選び、トップにはレングスは短め、ウエストはシェイプできるものを選べばなおさらいい。この辺のスタイリングがメーカーがいちばん力を入れた点でもある。

 掛布さんの名台詞ではないが、「小さくまとめ過ぎる」と身長の低さを強調する。だから、適度にゆとりのあるものが必須アイテムとなる。シューズも思いきってフラットものを履いた方が冬場にありがちの足下の重たさを解消できるだろう。




 そして、ガウチョパンツの引き金にもなったボリュームのあるスカート。まだまだミニ丈のトレンドは収束しそうにないから、スッキリ見せるスカートはどうだろうかというのがメーカーの考え。

 スカートのポイントは、ギャザーやタックでボリュームアップされた要素がカットされたところ。落ちのいい素材やボリュームの出にくい生地を用いているので、その辺は気にならない。

スカートの履きこなしは、ポーズではなく歩いたときの流れるようなラインに出る。ふくらはぎが隠れるようなレングスにすれば、脚の太さも気にならない。

 筆者がマンションアパレルにいた頃から、関東、関西、九州で受けるレングスは微妙に違う。ただ、太さを隠したい心理は共通するだろうから、その辺をどう見せていくかになると思う。

 また、スカートで存在感を出すと言えば、やはりプリーツである。ただ、広がればワイドになるから、元のラインは至ってストレートにして分量を抑えている。

 各メーカーとも何とか新しいトレンドに切り替えようと企画に熱が入っている。業界紙誌では、ガウチョパンツからワイドパンツという流れが定着するには、まだまだ時間がかかるとの見方が多数派だ。

 メーカーもMD全体の中で、ボクシー&ルーズを打ち出しているわけで、すべてのアイテムがそうではない。あとはバイヤーがどうセレクトして、ショップMDに反映させていくか。

 当然、売場スタッフのセールストーク、コーディネート術がポイントになるのは言うまでもない。個店にとってはアイテム切りで、全体のスタイリングをどうまとめあげるかに売上げのカギがあるかもしれない。

 となると、商品量が多いグルーバルSPAはともかく、セレクトSPAのトータルMDでは個性を打ち出すのは厳しいかもしれない。また、外しを怖がって今シーズンも無難な路線に終始するのでは面白くない。

 だからこそ、個店にとっては仕入れで、エッジの利いたアイテムを打ち出し、MDにメリハリを付けられれば、シーズンを一歩リードできる公算は高くなる。メーカーの企画をトレンド変化にどう移し替え、お客のお洒落心をくすぐるかにかかっている。決して遅くはないと思う。

コメント
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