HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

行動を制限する段階。

2021-09-01 06:34:24 | Weblog
 8月17日、政府のコロナ対策本部は福岡県を緊急事態宣言に適用する区域に追加した。これを受けて県は、8月20日から9月12日まで緊急事態措置を実施すると決定。大規模商業施設(床面積1,000㎡超の百貨店やショッピングセンター(SC)、家電量販店等)に対し、人数管理や人数制限、誘導など、感染防止措置の徹底を促した。

 また、バーゲンやタイムセールなど混雑が予想される催事については、十分な対策を講じ食品売場等は入場者が繁忙期の半数以下となるように、入場整理等を行う旨を要請した。これ受けて早速、地元の百貨店やSC、スーパーは反応した。



 岩田屋三越は19日、岩田屋本店と福岡三越、岩田屋久留米店で、「食品フロアの入場者数を繁忙期の半数以下になるよう制限する」と、発表。出入口に設置した機器で来店する客数を測るほか、スタッフが出入口に立って目視でお客の入店状況を確認。混雑してきた場合には一時入店を制限するとした。



 福岡大丸は、J.フロントリテイリング共通の取り組みとして、「店舗ごとに滞留しているお客の上限を設定して入店を制限」「滞留しているお客の人数を店頭に設置したモニターで常時告知する」とした。また、「館内の主要施設にSIAA認定のシリカシールド施工を施すことにより、抗菌・抗ウィルス等の安全対策を行なう」と、安全・安心に対する取り組みを徹底した。



 SCはどうか。キャナルシティ博多はお客に対し、「混雑する時間帯を避けての来場に協力」を求め、「混雑時には、段階的な入場を制限する場合がある」とした。ソラリアプラザやソラリアステージなどは、「人流を測定するセンサーを活用し、混雑した場合は混んでいない別のフロアに誘導する館内アナウンスを流す」対応をとった。

 スーパーを展開するイオンは、食品フロアをもつショッパーズ福岡店とイオンスタイル笹岡店で、二酸化炭素の計測機を設置して人流の目安となる900ppm以上(厚生労働省が推奨する換気基準は1000ppm以下)になったら換気を強化する厳格な目標を設定。数値が下がらなければ入口を封鎖するとした。また、店頭のモニターでは売場のCO2濃度を表示し、買い物客に認知、協力を促している。

 福岡県は百貨店やSCでは買物客の滞留時間が長いことから、来店者数を繁忙期の半数程度の抑えることで、密(混雑)を避ける方向で要請した。それは東京都の感染防止対策と大差はない。結果的に岩田屋三越にしても、福岡大丸にしても、先に東京の高島屋が実施した対策とほぼ一緒になった。

 スーパーはお客の買い物が短時間で終えるため、福岡県の要請対象には入っていない。しかし、ほとんどが週に一度は売り出しを実施する。この時は開店から買い物客が押し寄せ、買い物時間が短くても売場は混雑する。平日夕方のピーク時も同様だ。イオンが厚労省の基準を超える厳しい換気態勢に踏み込んだのは、クラスター感染への危機感の現れと言える。

 一方、百貨店は「客数を測る機器」「客数をモニターで常時告知」、SCは「人流を測定するセンサー」を活用するが、具体的な数値を掲げて入店を規制しているわけではない。福岡県が数値目標を示していないから、どう対応していいのかわからないとの言い訳も立つ。しかし、売場の換気や入店人数の制限については、行政が売場の容積にそった基準を提示しないと、商業施設側が自社で取り組むとどうしても甘くなるのではないか。


商業施設が入店規制しても、飲食店にはお客が集中

 岩田屋のように目視でお客の入店状況を確認することが、臨機応変な混雑解消にどこまで役立つのか。やはり具体的な数値目標がないとお客もわからないし、説得力がない。出入口で押し問答といったトラブルが発生する可能性もある。

 昨年、新型コロナウイルスが流行し始めた時、外国人旅行者のコロナキャリアを水際で封じ込めるために、空港ではサーモグラフィーによる検温が実施された。しかし、その程度の対策では、持ち込まれるウイルスをシャットアウトすることはできなかった。そうした反省に立ち、さらにデルタ株が猛威を振るっている状況を鑑みると、もっと厳格な数値目標と感染防止策が必要ではないかと思う。



 要は感染拡大を押さえ込むには、人流の抑制しかないわけだ。商業施設の場合、まず機器による人数把握や二酸化炭素濃度の測定という科学的な対策がある。館内売場の随所にはビデオカメラがあるのだから、それとアプリを連動させて混雑状況をお客に知らせて入店を規制する仕組みなど、ITを駆使した混雑解消に踏み込んでもいいはずだ。

 もう一つは、社会政策として外出そのものを規制する物理的かつ古典的な手法である。「不要不急の外出は控える」も行政が訴え始めて1年以上が経過し、形骸化してすでに全く機能していない。だから、かつて計画経済の社会主義国が実施していた「市民が外出できる日と外出時間を決める(入店規制などと連動)」もいいのではないかと思う。まあ、これにはマイナンバーカードの番号で下一桁が偶数、奇数で決める方法があるが、それにもカードの登録申請が必要なのだが。

 人流が抑えられると、商業施設や小売業者にとっては厳しいかもしれない。だが、都市部に人が流入すればそれだけ感染が拡大するのは、緊急事態宣言が発令されている都府県を見れば容易にわかる。さらに若者にもワクチン接種が始まっても、変異株への感染で重症化するリスクは払拭できておらず、感染を抑えるまでにはまだまだ時間がかかると思われる。

 福岡市の例を挙げると、緊急事態宣言下の感染者数は、8月25日が531人(20代191人、30代100人、40代66人)、26日が362人(20代133人、30代59人、40代52人)、27日が407人(20代137人、30代73人、40代45人)、28日 350人(20代123人、30代76人、40代47人)。それぞれ1週間前の18日が625人(▲94人)、19日が529人(▲167人)、20日が501人(94人)、21日が430人(▲80人)だから、感染者数は減少傾向にある。

 ただ、ワクチン未接種の20代〜40代の感染者数が多い点を考えると、とてもピークアウトとは言えない。20代〜40代は働き盛りで、福岡市の産業構造を考えるとサービス業に従事するものが多く、在宅勤務では難しい点がある。天神では再開発でSCが建て替えの最中にあるが、仮店舗で営業するショップも少なくない。昼間の人口は20代〜40代が圧倒的に多いのだから、感染者が増える傾向の一因とも言える。

 また、若者の感染者が増えているのは、夜の街との因果関係も皆無ではない。筆者の事務所近くの大名エリアがそうだ。こちらの飲食店にも福岡県から時短要請が出されているはずだが、仕事を終えた夜8時過ぎに歩いてみると、とても人通りが引く気配はない。飲食店に中には、何食わぬ顔で夜11時以降も営業しているところもある。真面目に時短要請を守る店があると、お客は営業しているところに集中するから、店は混雑して密になるのだ。

 商業施設への入店規制は行われても、仕事やショッピング後に人々が飲食に出かけて人流が減らなければ、感染の抑制にはつながらない。現行法上、自治体は一人ひとりの行動まで厳しく制限できない。だが、自分の周囲に感染リスクが膨大にあることを考えると、自ら行動を抑制するしかない防止策はない。人との交流は最大に感染因子なわけだから。

 40代以下の感染拡大傾向は、接種が完了する11月末までは続くのではないか。そうした世代から10代以下の子供たちに感染するリスクがある。新学期が始まって以降は、クラスター感染が散発的に起こることも考えられる。学校側が感染防止対策をとっていると言っても、一度多数の感染者を出してしまえば、出校が停止され在宅療養を余儀なくされる。そこで重症化すれば、病床逼迫につながるのだ。

 11月末をもって感染が下げ止まらなければ、そして、子供たちの感染が引き続き増加傾向にあるのなら、国家的命題として人流を抑える行動制限も考えなけてはいけないのかもしれない。

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