HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

食とのコラボは意外性や裏切りを。

2015-11-01 15:57:25 | Weblog
 The FLAGのイシュー、今回は「ファッション×〇〇の次のカタチと今後の可能性とは」について考えてみたい。

 モノからコトと言われ始めて久しい。最近ではエクスマなる、体験を売る視点のマーケティングも注目されている。

 情報があり溢れ、消費への関心が薄れる中で、店舗なり商品なりに興味をもってもうらためには、モノを取り巻く何らかの仕掛けまでが必要になっているということだ。

 短絡的に考えると、イベントを行うのが手っ取り早い。比較的人が集めることが容易で、商品に注目させることもできる。次に異業種とのコラボレーションもあるだろう。互いの技術や能力を掛け合わせ、魅力的なプロダクトを作ることができる。

 10月24日に開催されたSHIBUYA FASHION FESTIVALでは、 ファッションというコンテンツでは集客は厳しいためか、ジュースセットやクーポンという「ベタ付き」が仕掛けられている。

 「もれなく何かくれる」のなら、イベントに行ってみようという気にもさせる。

 ノベルティはそれだけで経費がかかるので、企業のサンプリングなどとタイアップするれば、コスト削減ができる。渋谷というファッションタウンのポテンシャルを生かし、街一体型事業に異業種まで巻き込んで盛り上げようということらしい。

 でも、どうだろうか。それで人は集まるかもしれないが、商品が売れるのだろうか。また本当にファッションタウンの魅力が高まるのだろうか。

 街ということになれば、自治体も何らかの事業で携わらないといけないので、行政の「予算措置」という別の期待があるではないのか。

 筆者は「ファッションと◯◯」の融合とかというスローガンそのものは否定しない。でも、そうしたテーマのもとに仕掛けるのが「集客イベント」で止まっていることには、疑問を感じるし、成功の度合いも懐疑的と思っている。

 なぜなら、ファッションをクローズアップするというより、イベントに注目を集めようとするあまり、それが手段ではなく目的化している嫌いがあるからだ。

 いつのまにか主導権もファッション業界からイベント屋に移り、催事を行えばそれで終わりになっていく。さらに「ある程度の参加者、ある程度の集客があれば、成功した」と結論づけられることが常態化してしていることには、懸念を示さざるを得ない。

 どこが利益を被るかと言えば、ファッション業界であるはずもない。イベントに群がって事業企画と予算を手中にする広告代理店、制作会社、タレント事務所などの利害関係者なのである。

 筆者が居住する福岡でも、地元ファッション業界がうまく利用された事業が行われている。その問題点をこの場で解説するには文字数が足りないので、今回は差し控えることにしたい。



互いの能力を生かし、
単体以上のモノづくり

 何でもイベント頼みにするのを猛省し、反面教師としてファッション業界自ら考え、どう動くか。その意味で、前向きに「ファッション×〇〇の次のカタチ」「ファッション×〇〇の今後の可能性とは」何かを考えてみたい。

 従来、「ファッション×〇〇」では、ダブルネームの商品づくりがあった。裏原全盛期には、「ア・ベイジング・エイプ」が「アディダス」とコラボして、数々のスニーカーが発売された。

 両者のブランド力、限定モデルというレア感で売り切れが続出したのは、記憶に新しい。最近でもダブルネームスニーカーは、 マーガレットハウエルとコンバース、シュープリームとVANSなど、数多くが発売されている。

 アパレルブランドとシューズメーカー。このケースは両メーカーが互いの能力や技術を生かして、単体以上のモノづくりをしようということだ。その背景から、 ファッション×〇〇のヒントを考えてみたい。

 アパレル側にはデザインや感度はあっても、靴の生産に必要な「木型」は持たない。木型を作るには専門技術が必要だし、サイズ対応するには相当数の型が必要だ。だから、ロットが増えないアパレルにとって、オリジナル生産はリスクが高いのである。

 シューズメーカー側も、定番のデザインだけではお客に飽きられるし、値崩れが激しく陳腐化していく。ファッションとのダブルネームであれば、自社にないテイストが生み出せるし、手持ちの木型を使えばコストはかからない。

 営業的にもOEMのような生産ではないだろうから、買取を条件とすれば利益も確保できると思われる。なおさら、自社で販売するのではないから、在庫リスクもない。

 ただ、この手のダブルネームは、アパレル、シューズメーカー双方にそれなりのブランド力があるから、成り立つとも言える。シューズメーカーと言っても、アディダスやコンバースは知名度はもちろん、ファッション性も十分に持ち合わせているからだ。

 アパレル同士なら、なおさらコラボは当たり前になっている。最近ではH&Mとバルマン、ユニクロとクリストフ・ルメール、WEGOとナンバーナインなどだ。

 こちらはどちらかがデザイン面での高い感度をもち、どちらかに量産によるコスト吸収力がある。そして、どちらもブランド力、知名度は申し分ない。今のマーケット状況からすれば、最高のコラボレーションだろう。

 こうした両者がタッグを組めば、おしゃれなアイテムが手頃な価格で手に入るという消費者ニーズにも合致する。常時展開ならオリジナルの売上げにも影響するかもしれないが、スポット的のコラボなら市場の活性化にもつながるはずだ。

 もっとも、「ファッション×〇〇」ということでは、異業種と組むのが正論だ。ただ、ここでも「互いの能力や技術を生かして、単体以上のモノづくりをしよう」という精神が不可欠になるのは言うまでもない。

 市場の注目度に期待するのであれば、ある程度のブランド力や知名度がある相手がいいのかもしれない。ただ、双方が無名であっても、互いの能力や技術を生かして、単体以上のモノづくりを追求することは、決して吝かではないはずだ。

 今年行われたNYコレクションにおいて、カゴメ株式会社の新作ジュースの配布ブースがショーのバックステージに設置されていたのは、互いのポテンシャルを生かして、単体では出せないパワーを発揮しようとしたのではないか。

 NYコレクション+カゴメのような「ファッションと食」は、生活にいかに潤いや満足感を与えるかという点で、仕掛け次第では大きな力を生むと思う。

 まずNYコレクションが発する都会的でスタイリッシュなイメージ。それはそのままブランド力になっている。ランウエイを歩くモデルたちも、ギスギスした体型より健康ではつらつとした美しさを必要とするトレンド性もある。

 一方、カゴメはトマトケチャップをはじめ、ジュース製造でも高い技術をもち、日本のトップブランドとして君臨している。そうした能力がNYコレクションと合体すれば、ヘルシーかつおいしいジュースが世界中に発信できる。

 「ファッションと食のカタチ」では、ジョルジオ・アルマーニも、ミラノのショップではドルチェ、いわゆるスウィーツを販売していた。「アルマーニ・ドルチェ」で、パッケージに入ったチョコレートは目を引いた。

 その中にはジャパニーズテイストの「抹茶」味もあり、丸の内仲通りのショップで御土産に購入したが、しばらく食べるのを躊躇ったほどだ。その時は結婚式の引き出物なんかに良いんじゃないかと思ったが、いつの間にかショップの方が撤退してしまった。



ファッションブランドと
チロルチョコレート

 経営的に考えると、安い原価に高い売値がつけられ、儲けが大きい方が理想的だ。アルマーニ・ドルチェは典型的だろう。

 でも、チョコレートの場合、何も高級品である必要はないと思う。有名パティシエがつくるトリュフチョコはデパ地下に任せておけば良い。

 だから、ドラッグストアで100円くらいで売っている袋入りのチロルチョコなんかとのコラボはどうだろうか。ファッションと食の「次のカタチ」ということだ。

 生産ラインの乗せるためにはロットが必要だが、不可能ではないと思う。いろんなバリエーションが発売されているので、既存の味をアソートメントしてもいい。

 次のカタチでファッションが果たす役割は、パッケージングや包み紙のデザインにチャレンジし、ブランドの世界観を広げれば良いと思う。ロゴやカラリングをしっかりと打ち出せば、面白い商品ができ上がるのではないだろうか。

 ファッションに携わるのなら、グラフィックデザインにも大いに挑戦してみよう。Adobeのillustratorはクラウドで使用できるようになっている。身近なお菓子でチャレンジすれば、斬新さ、世界観がグラフィカルに広がっていくはずだ。

 ◯◯◯◯◯&チロルチョコなんて最高ではないか。ドットやハートなんかのモチーフがプリントされ、ロゴがバチッと入り、個性溢れるアソートの包み紙のイメージが浮かぶ。食べた後の包み紙はコレクターズアイテムになるかもしれない。

 おそらく限定品になると思うが、価格が300円、500円、いや1000円でもファンは購入するのではないか。ブランド力があるという条件付きなのだが、きなこや抹茶などいろんな製品を生んでいるので、チョコアレルギーの心配もない。

 デザイナーの川久保玲氏は、H&Mが日本上陸を果たした時、コラボ商品をデザインした。その時の狙いについて、「クリエイションミーツビジネス」というキーワードを上げ、説明していたように記憶している。

 直訳すると、クリエイションとビジネスの出会い。「ビジネスだってクリエイションだ」とのメッセージも、込められているのではないだろうか。
 
 食の方がある程度の商品開発力があり、市場に浸透して知名度もある。こう考えると、ファッションと食のコラボレーションは、クリエイションミーツビジネスという側面を持つ。アイデアの発揮で、コスト面などの吸収はいくらでもできると思う。

 チロルチョコのような駄菓子感覚では、「うまい棒」なんかもキャラクター性が打ち出せるかもしれない。ファッションだから若々しさも必要だし、ブランドのキャラクター性を打ち出すには、洒落が利いた方が受けるはずである。

 強力なブランド力を持つものは、ギフト対応にもいけるかもしれない。だが、これからブレイクさせたいブランドなら、プロモーションやノベルティの感覚でいけばいいだろう。



不味い味でインパクトを
与える方法もありか

 一方で、食とのコラボは、何も美味いものだけとは限らない。「チョー辛い」とか、「不味い」とかもありと思う。先日、凄く「わさびが利いたあられ」をもらって食べたが、うちの家族は辛過ぎて食えないと言ってた。

 パッケージにはシャレではなく、「辛さが苦手な方やお子さまは十分ご注意ください」と書かれていたのも目を引いた。まるでヴィレッジヴァンガードのPOPのようだ。

 逆に癖になりそうだったので、リピートしようと探したら、もう売り切れてしまっていた。それくらいの強烈なインパクトがあれば、それだけ訴求力もあるだろう。

 コストがかからない反面、あまり売上げは期待できない。でも、キャンペーン的な要素を持たせて、ブランドアピールに活用すればいい。その時、ファッションがもつデザイン感性を存分に発揮すればいいのである。

 筆者の地元、博多は老舗菓子舗が乱立し、全国でも類を見ない厳しい競争を繰り広げている。そんな中で、ひよこや鶴乃子、博多とおりもんと全国的なヒット商品も生まれたが、経営者はこぞって「和菓子より洋菓子の方が売上げが良い」と語る。

 日本人の生活が洋風化し、菓子についてもスウィーツに代表される洋菓子が市場を拡大している。とすれば、個人的には博多の菓子舗にコラボを持ち込めないかと考えている。

 バブル期は、銀行の融資が乱発されたので、アパレルメーカーがダイレクトに飲食店を経営していた。銀行員から「飲食業はキャッシュフロー経営ですよ」なんて、口車に乗せられたこともあるだろう。

 しかし、バブル崩壊で不景気が長引き、デフレが定着した今、よほど金銭的余裕があれば別だが、そこらのファッションブランドが飲食に手を出してもまず成功しないだろう。

 だから、ファッションと食のコラボは、互いの能力や技術を生かして、単体以上のモノづくりを進めるためのテストマーケティング程度から始めてみてもいいのではないか。

 言い換えれば、互いの弱さを補完して、新しいことにチャレンジしようという姿勢を示せば良いと思うのである。

 当然、そこから生み出されるコラボ商品は、本来の目的とは違った使い方になる。サプライズギフトとかだ。真面目に考えてもつまらないし、切り口を変えていないと可能性はないに等しい。

 商品づくりを意識する上では、良い意味での裏切りや意外性、型破り、ドラスティックなど突拍子のないベクトルで考えた方が、ファッションも際立ってくると思う。ファッションも食も先の可能性を考えるのなら、当たり前では面白くないからだ。

 ハロウィンの喧噪の中、そんなことを考えてみた。

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