半年ぶりに東京に出張した。取引先のアパレルと2015年の企画デザインなどで打ち合わせのためだ。アベノミクスで景況感は良くなっているように見えるが、マーケットの動きは今イチと多くのアパレルが思っている。
ただ、当方はじめ服作りに携わる人間は、徐々に制作意欲がかき立てられ、国産の生地や縫製によるクリエーションが勢いを盛り返している。
まだまだマスマーケットは、グローバルSPAやファストファッションが幅を利かすが、それに嫌気がさし始めた人々がクリエーションへ向わせる日が必ず来ると信じたい。
では、アパレル側が本腰を入れて作った商品を、一体どんな「小売り」が仕入れてくれるのか。その話をすると、取引先アパレルの社長がこう言い放った。「東京にセレクトショップはないからね…」。なるほどである。
真意を説明するとこうだ。東京に本拠を構え、ネームバリュウをもち、規模の拡大を追求し、ネット販売の環境も整備している「編集型の品揃え専門店」は、専門店系アパレルの商品なんかに、それほど期待していないということである。
ウエアから小物まで商社やOEMやODM業者、またいわゆる“ふり屋”の手を借りれば、いとも簡単にオリジナルで生産できる。売場の編集は容易で、商品の色、素材感、テイストが相似になれば、VMDも自社のオペレーションで完結する。
店づくりは統一感を増し、ショップブランドは確立する。大手として経営の目的である「利益の最大化」を図るには、これが一番ベストな手法となる。ちまちまとアパレルから仕入れていたのでは、それは実現できないからだろう。
かといって、「セレクトイメージ」は残したい。その結果、メーカー別注方式や仕様書発注方式をと取り入れながら、時にバイヤー?(商品企画担当者)が工場まで出向いて、スペックを詰めたり、デザイナーのアイデアを引き出したり。
一応、専門店アパレルのような商品レベルをキープして、セレクトの体裁は整えるのである。でも、それをセレクトショップと呼べるのか。アパレルの社長は「否」だったのである。筆者も同感だ。
まがりなりにもセレクトショップと呼ぶなら、バイヤーがアパレルや小物の展示会で商品1点1点が自店のコンセプトに合うか、また、シーズンMDの方向性に合うか、「吟味しながら仕入れるか否かを決める」のが常道だ。
また、見せる商品、着れる商品、売れる商品をしっかり見極め、時に「攻める商品」も扱って編集し、顧客に一歩先を提案しなければならない。売れ筋ばかり集めたんでは、売り上げ効率を追求で面白くないからである。
一方、店としてもアパレルやクリエーターを発掘し、孵化器としてブランドやクリエーションを育てていくことも重要だ。彼らがメジャーなる前にがっちり組むという選択肢もありうる。 それがセレクトショップなのである。
大手だって、勃興期、成長期はそうして来たはずだ。ところが、セレクトショップが爛熟期を迎え、さらにショップ本体が大企業になると、MDもバイヤーもサラリーマン化して、リスクを避け冒険もしなくなる。
あれほど、インポートにこだわりをもっていた店が、今ではオリジナル企画用のモデルサンプルとしか見なくなっている。
血気盛んな若手スタッフが国内外の展示会で、「これを売りたい」と見つけてきても、社内品評会では上司からけちょんけちょんに言われてしまう。これではやる気が起こるはずがない。
しかも、東京は店舗コストが尋常ではない。ショップのロイヤルティを上げようとすれば、そこそこの立地に出店する。となると、莫大な経費がかかる。
家賃や敷金、内装費といった初期投資はもちろん、人件費、光熱費などのランニングコスト。そして、ビルインになると高額な最低部率家賃がのしかかる。どれも金額はハンパではない。
もはや東京都内の一等地や周辺の好立地に、個店レベルで出店は不可能だろう。だから、大手ほど売り上げ効率や収益性のいいSPA化に向くのである。いや向かざるを得ないのだ。これが東京で個店のセレクトショップが育たない理由でもある。
表参道に有名な商業施設がある。建設したときはずいぶん話題になった。 メジャーなブランドが多数、出店している。一方で退店が後を絶たない。売上げに対し、歩率家賃が高過ぎるから、ペイしないのだ。
最近では地方のショップにも出店の依頼があるようだ。しかし、あまりに高コストでほとんどが二の足を踏む。展開を続けられるところは、採算があっているか、広告宣伝と見ているか。どちらにしても、よほど潤沢な資金力を背景にしているのは言うまでもない。
話を戻そう。アパレルの社長が言った「東京にセレクトショップはない」。言い換えれば、ドメスティックやインポートのブランドをリスクを踏んで、一生懸命売ってくれるのは、もう地方のショップでないと難しいのではないかという暗示でもある。
地方なら、コストがかからない分、オーナーの考え次第で、いろんなセレクトショップが展開できる。ショップとして専門店系アパレルが作るエッジの利いた商品で、味の濃い品揃えが可能になるのだ。
しかも、店として時間をかけてじっくり売れるから、1年、2年でじんわり顧客化される。でき上がった顧客をまたマスにならない商品で引っ張っていくことができる。
アパレルの社長に助言した。「どんな地方都市でも必ず大手のセレクトでは、満足しきれていないオーナーやお客さんはいるはずです。そうした人々をじっくり開拓しましょう」と。
キープコンセプトで軸がブレないセレクトショップ。国産のファブリックで、国内縫製で作るドメスティックブランド。そこにクリエイティビティのエッセンスを加えたもの。
インポートは円安で価格が上がっていることもあり、原価率を下げるような商品も増えている。むこうも商売だから当然だ。ならば、国内回帰という選択肢もあるだろう。
そんなアパレルやクリエーターとがっちり組むセレクトショップをクローズアップすることこそ、地方ファッションを活性化するカギではないかと思う。
ただ、当方はじめ服作りに携わる人間は、徐々に制作意欲がかき立てられ、国産の生地や縫製によるクリエーションが勢いを盛り返している。
まだまだマスマーケットは、グローバルSPAやファストファッションが幅を利かすが、それに嫌気がさし始めた人々がクリエーションへ向わせる日が必ず来ると信じたい。
では、アパレル側が本腰を入れて作った商品を、一体どんな「小売り」が仕入れてくれるのか。その話をすると、取引先アパレルの社長がこう言い放った。「東京にセレクトショップはないからね…」。なるほどである。
真意を説明するとこうだ。東京に本拠を構え、ネームバリュウをもち、規模の拡大を追求し、ネット販売の環境も整備している「編集型の品揃え専門店」は、専門店系アパレルの商品なんかに、それほど期待していないということである。
ウエアから小物まで商社やOEMやODM業者、またいわゆる“ふり屋”の手を借りれば、いとも簡単にオリジナルで生産できる。売場の編集は容易で、商品の色、素材感、テイストが相似になれば、VMDも自社のオペレーションで完結する。
店づくりは統一感を増し、ショップブランドは確立する。大手として経営の目的である「利益の最大化」を図るには、これが一番ベストな手法となる。ちまちまとアパレルから仕入れていたのでは、それは実現できないからだろう。
かといって、「セレクトイメージ」は残したい。その結果、メーカー別注方式や仕様書発注方式をと取り入れながら、時にバイヤー?(商品企画担当者)が工場まで出向いて、スペックを詰めたり、デザイナーのアイデアを引き出したり。
一応、専門店アパレルのような商品レベルをキープして、セレクトの体裁は整えるのである。でも、それをセレクトショップと呼べるのか。アパレルの社長は「否」だったのである。筆者も同感だ。
まがりなりにもセレクトショップと呼ぶなら、バイヤーがアパレルや小物の展示会で商品1点1点が自店のコンセプトに合うか、また、シーズンMDの方向性に合うか、「吟味しながら仕入れるか否かを決める」のが常道だ。
また、見せる商品、着れる商品、売れる商品をしっかり見極め、時に「攻める商品」も扱って編集し、顧客に一歩先を提案しなければならない。売れ筋ばかり集めたんでは、売り上げ効率を追求で面白くないからである。
一方、店としてもアパレルやクリエーターを発掘し、孵化器としてブランドやクリエーションを育てていくことも重要だ。彼らがメジャーなる前にがっちり組むという選択肢もありうる。 それがセレクトショップなのである。
大手だって、勃興期、成長期はそうして来たはずだ。ところが、セレクトショップが爛熟期を迎え、さらにショップ本体が大企業になると、MDもバイヤーもサラリーマン化して、リスクを避け冒険もしなくなる。
あれほど、インポートにこだわりをもっていた店が、今ではオリジナル企画用のモデルサンプルとしか見なくなっている。
血気盛んな若手スタッフが国内外の展示会で、「これを売りたい」と見つけてきても、社内品評会では上司からけちょんけちょんに言われてしまう。これではやる気が起こるはずがない。
しかも、東京は店舗コストが尋常ではない。ショップのロイヤルティを上げようとすれば、そこそこの立地に出店する。となると、莫大な経費がかかる。
家賃や敷金、内装費といった初期投資はもちろん、人件費、光熱費などのランニングコスト。そして、ビルインになると高額な最低部率家賃がのしかかる。どれも金額はハンパではない。
もはや東京都内の一等地や周辺の好立地に、個店レベルで出店は不可能だろう。だから、大手ほど売り上げ効率や収益性のいいSPA化に向くのである。いや向かざるを得ないのだ。これが東京で個店のセレクトショップが育たない理由でもある。
表参道に有名な商業施設がある。建設したときはずいぶん話題になった。 メジャーなブランドが多数、出店している。一方で退店が後を絶たない。売上げに対し、歩率家賃が高過ぎるから、ペイしないのだ。
最近では地方のショップにも出店の依頼があるようだ。しかし、あまりに高コストでほとんどが二の足を踏む。展開を続けられるところは、採算があっているか、広告宣伝と見ているか。どちらにしても、よほど潤沢な資金力を背景にしているのは言うまでもない。
話を戻そう。アパレルの社長が言った「東京にセレクトショップはない」。言い換えれば、ドメスティックやインポートのブランドをリスクを踏んで、一生懸命売ってくれるのは、もう地方のショップでないと難しいのではないかという暗示でもある。
地方なら、コストがかからない分、オーナーの考え次第で、いろんなセレクトショップが展開できる。ショップとして専門店系アパレルが作るエッジの利いた商品で、味の濃い品揃えが可能になるのだ。
しかも、店として時間をかけてじっくり売れるから、1年、2年でじんわり顧客化される。でき上がった顧客をまたマスにならない商品で引っ張っていくことができる。
アパレルの社長に助言した。「どんな地方都市でも必ず大手のセレクトでは、満足しきれていないオーナーやお客さんはいるはずです。そうした人々をじっくり開拓しましょう」と。
キープコンセプトで軸がブレないセレクトショップ。国産のファブリックで、国内縫製で作るドメスティックブランド。そこにクリエイティビティのエッセンスを加えたもの。
インポートは円安で価格が上がっていることもあり、原価率を下げるような商品も増えている。むこうも商売だから当然だ。ならば、国内回帰という選択肢もあるだろう。
そんなアパレルやクリエーターとがっちり組むセレクトショップをクローズアップすることこそ、地方ファッションを活性化するカギではないかと思う。