HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

elasthanneってどんな繊維?

2014-09-24 12:03:01 | Weblog
 H&MやZARAなどユーロ系のグルーバルSPAの海外進出によって、PCやスマホ向けのサイトでは本国表記による繊維の名称やブランド名が、そのまま日本語表記されるケースが多々見られる。典型的なのが「elasthanne」だ。

 これはヨーロッパ発のブランドでは最近、素材表記で頻繁に見かけるようになった繊維の名称。日本語読みにすると「エラスタン」。日本人には聞き慣れない繊維名だが、米国では「スパンデックス」と呼ばれている。

 日本では東レが「オペロン」、東洋紡が「エスパ」、旭化成が「ロイカ」、日清紡は「モビロン」と、繊維メーカーによってもいろんなブランド名がある。ただ、繊維名としては、エラスタンもスパンデックスもみな同じ「ポリウレタン」だ。

 繊維は綿や毛、麻などの天然素材、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維の糸を100%または混紡にし、さらにいろんな織り方によって何十万通りもの組織が再現できる。そのため、テキスタイルメーカーでは自社の繊維をより有名にするためにブランド名を付けることが慣例になっている。

 かつてスーツやジャケットの裏地を「ベンベルグ」と呼んでいたことがある。これは旭化成が開発したコットン系の再生セルロース繊維で、同社の登録商標、いわゆるブランド名であった。

 他社でも同じ繊維を開発・販売しているため、最近では商品表示では一般繊維名の「キュプラ」で統一されている。旭化成は表示がベンベルグからキュプラに変わるときは、わざわざテレビCMで自社ブランドをアピールしたくらいだ。

 一方、エラスタン、いわゆるポリウレタンは、ゴムのように500%以上もの伸縮性があり弾性繊維である。でも、ゴムのように老化せず、はるかに細い糸にすることができ、さらに染色も自由になる特長をもつ。

 コットンなどに数%混紡すれば、「ストレッチ性」が出せて「染色可能」なため、ファッション服地に用いられるようになった。伸縮性があるから、最近のトレンドであるスキニーをはじめとした細みのボトムには、もってこいというわけである。

 欧州のブランドでは、ドレスやジャケットにも使われており、ZARAでもサイトの素材表示には昨年まで「2%elasthanne」とかと表記され、日本語版にもカタカナで「2%エラスタン」とそのまま日本語読みに訳されていた。

 ただ、欧州では一般的な繊維名だと言っても日本ではなじみは薄い。だからサイトの表記を見ただけでは、消費者はどんな素材なのかわからなかったはずである。グローバルSPAという立場からすれば、あまりに不親切と言わざるを得ない。



 そう思いながら、この秋のサイトを見ると、 ちゃんと日本表記の「ポリウレタン」に修正されていた。 本国表記をそのまま日本語読みにするのではなく、日本で使用される繊維名に変える。この辺もグローバルSPAにとっては不可欠な対応策だ。

 尤も、ZARAは世界中に出店しているため、品質表示タグは展開国の言語分だけ束のように付けられている。それには欧州向けは「elasthanne」、北米向けは「spandex」、日本向けは「ポリウレタン」と表記。ネット向けの対応が遅れていただけかもしれない。

 まあ、日本語で「綿」といっても、「cotton」(英米)「coton」(仏)「baumwolle」(独)「bomull」(スウェーデン)「algodon」(スペイン語)と繊維の呼び名は異なる。それをZARAはご丁寧にすべて表記している。



 英語に統一すれば良いという考えもあるだろう。ちなみにユニクロはフランスのサイトでも商品説明は英語表記で、 elasthanne ではなくspandex。もちろん、日本ではポリウレタンである。一概にどちらがどうのではなく、これは企業文化の違いだと思う。

 かつてギャップが世界展開をはじめた時、ジーンズの丈は短め、普通、長めと3種類揃えていた。「世界中のスタッフがみなミシンがけを簡単にマスターでき、お直しに対応できるわけがない」「その技術を一様に教育し習得させるとなると、莫大な時間とコストがかかる」

 規模の拡大を重視するなら、3レングス用意した方がローコストで済むという発想だ。ユニクロも一時はギャップに倣い、3サイズを用意していた時期もあるが、今は1レングスだ。

 日本では1レングスで丈上げを行うのが一般的だ。器用な国民性もあるが、3サイズも揃えるとかえって型数が増えて、在庫を抱えるからという理由もあるだろう。こちらは日本的な発想と言える。

 素材の表記は商品タグを増やすか。英語表記に統一するか。世界中のみなが英語を理解できるわけでもない。発展途上国になれば、なおさらだ。つまり、どちらがコストダウンになり、顧客満足につながるかは、簡単に答えは出せないようである。
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