HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

既成服とオーダーの間を狙う。

2015-06-24 12:26:51 | Weblog
 先日、繊研新聞のネット版、繊研plusに「40~50代女性主力の新市場」と題したシリーズ企画が掲載された。

 今年も来ましたか。というか、業界系メディアも、もうこれしか打つ手はないのかって感じがする。

 ヤングマーケットがボリュームからバジェットまで行き着き、売上げ、利益ともに厳しい状況。逆にヤングの頃にトレンド、上質な服を着てきた40~50代のミドルエ-ジでは、ボリューム化した今の商品には飽き足りないとの声は少なくない。

 そのため、メーカーや小売りでもかつてのリモデルやヒットブランドのリプロの話が出ることもあるが、具体的にどんなデザインの商品がいいのか、ここ数年は暗中模索の状態が続いている。

 ナチュラルでリラックス感のあるものは、無印良品やグローバルワーク、ニコアンドなどがSCを中心に出揃っている。が、カジュアル過ぎて、クオリティも今イチ。当然、価格は安いから、シーズン頭に飛びつくというまでにはいかない。

 駅ビル向けのセレクトショップでは、フレームワークやユナイテッドアローズ・GLR、バンヤードストーム、サロンデュラトリニーテ/ディッシーがある。

 フレームワークやバンヤードストームはトレンドを押さえクオリティもそこそこ。ただ、カジュアルの域を脱していないので、街着志向、価格対価値ではどうしても購入に二の足を踏んでしまう。

 GLRは街着にはなるが、SPA路線でマスマーケット狙いが色濃い。この夏のレコメンドアイテムが「ガウチョパンツ」って、ユニクロも作ってんだろうと、突っ込みたくなる。

 サロンデュラトリニーテ/ディッシーは、値段もそこそこにトレンドも追っかけ、リラックス感もある。ただ、40代にとっては上半身、下半身のどちらかにコンプレックスがあると、どちらにボリュームを持たせるか。スタイリングが容易ではなさそうだ。

 番外編として、地場SPAのリンクイットが展開するブージュルードがある。30代狙いだが、旺盛なコンサバ感と値ごろな価格帯で、40代までしっかりつかんでいる。

 セレクトショップやサプライヤーなど業界側の評価は、一様に「おばさんクサい」だ。でも、だからこそおばさんにはウケているわけで、年商100億円規模のマーケットを獲得しているのが何よりの証拠。だが、好きになれない層がいるのも確かだ。

 50代になると、SCや駅ビルではまずお目にかからない。というか、現状ではデベロッパーも百貨店に譲っている状況だ。

 ところが、百貨店ではシャネルやグッチ、プラダといったラグジュアリーブランドを除き、サイズ対応型カジュアルか、あるいは高級プレタの域を脱しきれていない。

 DC系のレキップ、wbを含め、NBはコンサバエレガンス路線を引きずっているので、セレクト系のショップブランドを卒業した層の受け皿にはなり得ていない。

 結局、カジュアル、リラックス感を追求してしまうと、繊研plusの写真にあるような天然色素で染めたような工芸系ブランドに落ち着いてしまう。良いとこ、プランテーションくらいだろうか。45Rはジーニングカジュアルだから、オフィシャルは難しい。

 街着対応では、ブレインピープルのようなセレクティングもあるが、ファッションアイテムはコンサバ寄りで、化粧品や食品など抱き合わせて集客している状況だ。

 マーガレット・ハウエルにしても、インポートブランドというプレステージ性で売れているわけで、服そのものが持つ完成度ということではないだろう。

 店頭で商品を見れば、エージに対するフォーカスは多少ボケていく。また、セレクトショップの販売戦略も別にエージで区切っているわけではなく、来たお客さんなら拒まずに接客するはず。たが、商品がストライクかというと決してそうではない。

 ファッション雑誌と見ると、さらにはっきり線引きされている。 ヴォーグやシュプール、ヌーメロといったモード誌は、取り上げるのはコレクションブランドを主体としたハイファッション。

 エージレスだが、イメージ先行で実需向きではない。先日、NHKの女子アナも言っていたが、誌面を小さくしているものもある。規格を小さくして印刷コストを下げ、何とか生き残ろうということで精一杯なら、ファッション発信どころではないだろう。

 リアルなファッションスタイル誌では、 40代狙いは小学館のドマーニ、光文社のストーリー、鳴りもの入りのドレス、集英社のマリソルと並ぶ。が、これらもインポートを含め、メジャーなブランドのラインアップに終始してしまっている。

 読モスタイルや着こなし提案もあるが、感性が磨かれ成熟した40代、50代にとって、今さらブランドオンリーでは情報量として物足りなさも感じているのではないだろうか。それが雑誌が売れない理由の一つでもあるのだが。

 その点では、アンアンの系譜を継ぐGINZAやクロワッサンも見逃せないところだが、スタイリストのリサーチ不足か、アパレル側のプレス体制が脆弱か、中々目新しいブランドが発掘されていない。というか、不在ということではないか。

 どうしても、ザラやユニクロといった低価格ファッションでは、捕捉できない40~50代のマーケットは一定量あるはず。

 ただ、「ある」と言っても、売れるために必要なデザイン、サイズ感(パターン)、素材や縫製といったクオリティ、プライスライン、販路などを総合的に考えざるを得ないから、熟慮すればすれほどターゲットにフォーカスしづらくなっていく。

 それが繊研plusが書いているように「一筋縄ではいかない客層」ということだ。

 ワンピース1~2万円のゾーンが売れているのは、ブージュ・ルードがまさにそれである。しかし、それではマスマーケット狙いになってしまう。

 それで満足できない層にすれば、高くても良いから気に入ったものがほしいのである。

 素材や縫製のクオリティは下げなくていい。だから、プライスラインは上げ止まる。当然、デザインも秀逸でないと着る気がしない。結果、インポートのコレクションブランドしかないのだが、あまりに高過ぎると手が出ない。

 こうした40代、50代の声なき声を拾い集めて、形にしようというムーブメントが登場している。それは膠着したファッション業界の発想ではできないことから、門外漢であるITのプロジェクトリーダーたちが進出している。

 彼らがそんな大人の女性にアプローチし始めている。ネットのグローバル環境を生かし、九州の熊本で活動を始めている企業もあるようだ。

 全国の縫製工場とアパレルデザイン側とファッションリーダーをネットでつなぎ、市場ニーズを形にしてサンプルを仕上げていく。あとはいかに営業をして量産に結びつけるかなのだが。

 トレンドの移り変わりが激しいヤングなら難しいが、年2回のコレクションブランドになれたアダルトなら時間的な猶予はあるだろう。

 ただ、こうしたシステムが既存アイテムのサイズ調整やデザインの焼き無しであっては、何の意味もない。あるいはメディアコラボーレッションくらいのレベルでは、彼女たちの感性は満足させられないと思う。

 量産、OEMやODM、QRといった既成概念からはずれる。既成服とオーダーメイドの中間的な服づくりで、大人のトレンド切り込むということか。そんな時期に来ているのではないかとも思う。

 ファストファッションやチープなSPAはいい加減に飽き飽きした。年に何着も必要ないから、気に入ったものがあれば、大枚はたいていい。いろんな服を着てきた大人の女性だからこそ、ある程度の理解は得られるのではないかと思う。
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