HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ファッション事業に冠スポンサーはつくか。

2014-02-17 16:14:33 | Weblog
 「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京」2014-15 A/Wが、3月17日から開催される。懇意にするアパレルメーカーから誘われたので、数年ぶりに見にいくことにする。そこで、今回はファッション事業と冠スポンサーについて考えてみたい。

 2005年にスタートした日本ファッションウィーク(JFW )は、国からの予算措置の関係で5年で終了した。所管の経産省が手を引いたことで、東コレを主催する日本ファッション・ウィーク推進機構は、新たなメーンスポンサーを探さなくてはならなくなった。そこで、NYコレクションで実績のあった「メルセデス・ベンツ」社に白羽の矢が立ったのである。

 自動車メーカーとアパレル。一見、相反するようにも見えるが、ベンツともなれば車づくり対する思想や技術、随所に見られるデザイン感性は、デザイナーズアパレルと共通する部分は多い。卓越したブランド力では最近の東コレの方がはるかに格下だが、そこは代理店の説得力とメルセデス側の懐の広さと見れば、理解できなくもない。

 まあ、 メルセデス・ベンツほどの企業が東コレにスポンサードしたからといって、ディーラーで車がバンバン売れるなんて思っていないだろう。端から目に見えたスポンサーメリットなんて期待はしていないと思われる。慈善事業とまではいかないにしても、三文ローカルメディアが好きな情報発信やブランディングのためと言えば、説明もつく。

 そもそも、冠スポンサーがつき始めたは、80年代からだ。主にスポーツ大会が始まりだったと、ジャック坂崎著の「ワールドカップを売った男」に書いてあったのを憶えている。「デサント陸上」「セイコースーパーテニス」「サンヨーオールスターゲーム」「Jリーグナビスコカップ」などがそうだ。

 スポーツ団体は多くが社団法人であり、潤沢な資金もないことから、大会の運営には苦慮してきた。また、放送局側もテレビやラジオの中継を行う上では、スポンサーが付かないと資金が手当てできず番組を制作できない。こうした事情で代理店やテレビ局がスポーツ大会に触手を伸ばし、企業を冠スポンサーにしていったのである。

 まあ、始まった当初は「スポーツマーケティング」という概念も、それほど浸透してはいなかっただろうから、単なる協賛や知名度のアップ、すこし進んでプロモーションといった感じではなかったと思う。

 しかし、近年は景気低迷やマーケティングが曖昧になったことから、企業側もスポンサーから撤退したり、大会そのものが規模縮小や中止に追い込まれるなどしている。一方、「サッポロビール箱根駅伝」のような人気が上昇しているスポーツコンテンツもあり、スポンサー側も大会そのものを見きわめている状況のようだ。

 地元福岡に目を転じると、「KBCオーガスタゴルフトーナメント」が有名だ。男子のゴルフトーナメントとして1973年に始まったもので、これまで冠スポンサーには「ダイワ」「久光製薬」「アンダーアーマー」「VanaH」が名を連ねてきた。
 
 ただ、こちらも冠料は3億円と言われており、数年前からスポンサー確保には苦労しているようで、今年の大会は未だに決まってないと聞く。主催のKBC九州朝日放送や代理店のDが誰彼構わず地元企業にまで営業しているというのは、あまりに有名な話だ。

 地元企業にとっては冠スポンサーになったとしても、知名度やブランド力が多少あがる程度に過ぎない。莫大な販促効果も、顧客満足も、マーケティングも一介のゴルフトーナメントくらいではほとんど期待できないだろう。メルセデス・ベンツのように端から目に見えた期待はしていないと言えるほど、太っ腹な企業なんて地元にあるはずがない。

 仮に地元企業がスポンサードするとすれば、何らかの「メリット」を要求するはずだ。冠料が2億円、1億円に下がったとしても同じだろう。端的に言えば、ゴルフトーナメントそのものより、KBC九州朝日放送や代理店のDが自社にとって役に立つかどうか。言い換えれば、そのメリットを感じられる企業でないと、スポンサーに付く意味はないということである。

 そう考えると、ファッション・ウィーク東京のような事業は、ますます冠スポンサーの確保は難しいと思う。ファッション業界は中小零細企業や個人起業家に毛の生えたような人間の集合体だ。まあ、何人かベンツに乗っている経営者はいたとしても、スポンサーにとって大きなメリットがあるとは思えない。

 むしろ、クリエーターは個性派揃いだから、車ならベンツよりも「フィアット」や「ミ二クーパー」を好むだろう。現に筆者が乗っていた車もシトロエンだった。メルセデス・ベンツ社がメーンターゲットとする富裕層や高額所得者は、ファッション業界の現状を考えると、これ以上増えないと思われる。

 なおさら、福岡レベルのファッションウィークやイベントで、冠スポンサーなんてまずあり得ない。逆に三文ファッションイベントについているスポンサーは、主催者側がイベント経費を賄うために過ぎない。事業そのものもファッション・ウィーク東京のような明確な目的をもって実施されているわけではないから、スポンサーメリットも感じにくいはずである。

 まあ、ファッション業界としては、三文ローカルメディアに期待することなど何もない。むしろ、うちの商品はあの女子アナだけには着てほしくないというバイヤーがいるくらいだから、かえって迷惑なのかもしれないが。
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