みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

ブラフマンの埋葬

2007年11月09日 | 
忘れられない一冊になるなぁ。
愛らしい小動物の「ブラフマン」君、愛すべき彼との出会いから別れまでのお話。彼の正体が、ワンちゃんなのか何なのか謎ですが・・・

多分、どこか異国の国なのだろう、芸術家たちの集う「創作者の家」を舞台にして、ブラフマンとの出会い、交流、そして、唐突に訪れる終わり。かつて、この上なく自分になついてくれた愛犬のことが、偲ばれて、目頭が熱くなるなぁ。この頃、どうも涙もろくて困る・・・。

静かさを湛えた詩的な表現、瑞々しい自然描写が美しい。愛らしい「ブラフマン」を見守る主人公の温かい眼差しも、とてもいい。我が身にもかつて訪れたことのあるような微笑ましいエピソード、けっこう頷ける。好きになるということは、よく見ることであり、よく見てしまうこと、よく見ざるを得ないことなんだなぁ。

本作品、一人称「僕」で書かれていることもあると思うのだけど、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の「世界の終わり」と、雰囲気が恐ろしく似ているのだ。なんだか「世界の終わり」を舞台にした話のようにも思えてくる。「世界の終わり~」がとても気に入っている & かつて愛犬を持った経験あり の方には、強くお勧めできます。(確かに、著者の小川洋子さん、村上春樹氏から、大きく影響受けてるという記事、ありました。)

それにしても、「ブラフマン」とは恐れ多い名前を冠したものだと思う。「ブラフマン」はサンスクリット語で「謎」? インド哲学では「宇宙の根本原理」なのである。
ちっぽけで愛らしい「ブラフマン」のもたらす、喜びも悲しみも、結局は、表裏一体のもので、温かく(=太陽)、静か(=宇宙)な空間に溶け込んで、一つになってゆくもの。そんなメッセージが込められているのかな?

少し前に出会った「ボロン」の印象が強くて、図書館でついつい手にとった「ブラフマン」であるのだけど、ん~、インドは深いと思う。

あふれる涙を拭って、さぁ旅を続けよう。(ボロン「鎮守の森」より」)


ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2)
小川 洋子
講談社

このアイテムの詳細を見る
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする