みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

ゴルトベルクの旅

2013年10月11日 | ライブ&コンサート
夜、イリーナ・メジューエワのピアノリサイタルへ。
素晴らしいを通り越して、深く感動。
今まで、いろんな演奏会を聴いてきたけれども、ちょっと過去に例がないくらい、心に深く刻まれる演奏会でした。

途中、ピアノの一音一音は、銀河の星々の煌きのようにも思え、宇宙を旅してるような錯覚を覚える。

バッハの音楽は、人間の感情や心の世界を通り越して、ほとんど、宇宙や神の領域に達してる。
純粋世界の美。
改めて、数学と音楽が表裏一体であることを感じさせられるのでした。

そして、変幻自在、縦横無尽に繰り広げられる、変奏、変奏、また変奏・・・。
30も!
時に壮大なフォルテシモに圧倒され、時にモーツァルトの先取りのような暗く妖艶な旋律に引きこまれ、音の洪水に溺れる。
音列の美しい連なり、自由自在なリ音符のダンス・・・。
セバスチャン・バッハよ、ここまでやるか!

ほとんど原型を留めていないような変奏の中に、あのアリアのテーマがおぼろげに浮かび上がるのも、なんとも心憎い。

そして、テンポが自然なこと。
少しでも早かったり、遅かったりすると、テンポが意識されて、音楽に浸れなかったりするけれど、
速くもなく、遅くもなく、絶妙なテンポだと、テンポが消えるんですね。
ロマン派の急緩で、聞き手の気を引くやり方が、ちょっと、あざといことのようにも思えてくる・・・。

最後にアリアの戻ってくるところは、感慨深いものがあった。
長い旅路の末、「とうとう帰って来たね。おかえりなさい。」と、胸に迫るものがある。
ゴルトベルクは、バッハ音楽の、そして、変奏曲の、金字塔ですね。

あと、アンコール。
正直、ゴルトベルクが素晴らしすぎて、余韻が損なわれるぐらいなら月並みなアンコールは聞きたくないなあ、と思ったのだけど、この曲しかない!というアンコールでした。
その曲は・・・、
この日の演目のバッハの最初の曲、フランス組曲5番のアルマンド。
ゴルトベルクは、アリアに始まり、アリアに終わる。
バッハは、アルマンドに始まり、アルマンドに終わる。
構成の妙、極まれりだった・・・。
アンコールのアルマンドで、一層深い余韻に包まれたのでした。

実は、その昔、ゴルトベルクを聞いて「なんなんだ!この不可解なモジャモジャした音楽は!」ぐらいにしか思わなかったのだけど、感受性も育ってたんだなあ・・・。

もちろん、最近の個人的な事情、伏線もあるのですが・・・。
ゴルトベルクのアリアに心酔して、をかなり熱心に練習したこと。
ここ数年、バッハのピアノ曲もよく弾いていること(小品ばかりだけど)。
そしてバイオリンで、ドッペルコンチェルト熱烈練習中なこと。
ちょうど、ミヒャエル・エンデの「モモ」を読んでいて、時間の花が印象深かったこと。

そのうち、いいことも巡って来るんだと思う。
楽器の練習を続けるうちに、ある日、ふっと弾けるようになるのと同じように。
音楽との出会いも、人との出会いも。



@宗次ホール@名古屋 栄

J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲 イリーナ・メジューエワ
クリエーター情報なし
若林工房

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