山すそをぬって流れる小川。紅葉を終えた木の葉が無数に遊んでいる。流れに乗り忙しそうに下っていく葉、石や草の上で冬の陽を浴びている葉、石にしがみついている濡れ落ち葉、落ちどころによってその先の定めが変わる。人の世と同じだ。
緩やかな流れをさえぎるように山すそから続く岩が川に横たわる。その岩が高さ1メートルほどの小さな滝になっている。流れは3条に分かれ小さな滝つぼへ落ち、その先で再び合流する。そこからは流れが少し速くなる。滝つぼの水音は小さいながらも自然の力強さをしめしている。雨は遠のいているが水量は豊富だ。
この豊かな水を利用してこのあたりは水田だった。いつからか1枚2枚と休耕田が増えた。道の拡幅が進むと世の成り行きか宅地へと変りカエルの声は聞かれなくなった。稲のはぜが幾十も並んでいたころの活気が懐かしい。
風景を変える人の営みをあの小さな滝はどんな気持ちで見続けているのだろうか。水田用水の役がなくなった水は木の葉と戯れながら流れるだけの水になり少し寂しそう。両岸はコンクリーだが川底は自然のまま残されていたのが救いだった。
(写真:小川を横切る小さな滝)