
時代劇で絶対に必要なのは刀で闘う見せ場。最近作の時代劇もこのシーンは、うっそうとした木立の中で撮られている作品を見かける。思い切り振られる刀にには野外ロケの良さを感じる。時には、あれほど切りあったのかと不思議に思うこともあるが、助っ人が入り善が刀を鞘に納めたところで終わるのは日本的で安心する。
そんな適地が散歩のコースに何カ所かある。その一つが、二抱えいや三抱えもありそうな杉の木が何本もあり、そばには神社を囲む長い白壁もある。付近では小鳥の群れている様子も見かける。静かで物音はあまりしない。馬が駆け抜けるのは困難だが侍集が徒党を組んで走るには差し支えない。逃げ道、城に通じる急で細い山道が続いている。
細い木切れであったり直径が2センチくらいの女竹だったり、それがチャンバラごっこに使っていた刀の代用品。竹刀や木刀などは握ったこともない。チャンバラ、男の子の遊びのなかのひとつ。「チャンチャンバラバラ チャアーラチャラ 切ったら血が出るターラタラ」こんな口調で拍子をとりながら切り込む。「切られたー」と倒れ下級生を喜ばせた。
武家の出身はいなくても、時代劇映画を見ていなくても、チャンバラごっこは出来た。放課後学級も塾も知らない時代の受け継がれた子どもの遊び、そこには身を守る闘いという本能的なものを教えていたのかもしれない。そこから力にしろ口にしろ喧嘩の手心というものも学んだ。