日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

自転車廃車

2017年12月15日 | エッセイサロン
2017年12月15日 中国新聞セレクト「ひといき」掲載


 似合いのヘルメットをかぶった子どもたちが家の前を自転車で行き来する。その姿を見ながら、自転車がわが家から消えてまもなく1年たつことに気付く。
 結婚後に購入した婦人用に、妻は二十数年乗った。2台目も婦人用、やはり20年くらい使った。どちらも定期的に油拭きをし、回転部に注油して大切にした。パンクは一度もなかった。
 それが訳あって数年使わなくなり、掃除もほこり拭き程度になった。もう乗ることはないと、妻と相談して廃車を決めた。大型ごみとして市に回収を依頼。手続きは電話、最後に「利用可能な部品は使わせてもらえますか」という問いに「喜んで」と返事した。
 回収の前日、最後の油拭きをし、タイヤに空気を満たす。チェーンや回転部に注油する。スタンドを立ててペダルを回す。久しぶりに回る後輪は静かな回転音を発しながら軽快である。ペダルを反対方向に回すと「シャー」というチェーンと歯車の協和音もいい。ひょっとして「再登場か」と自転車を喜ばせたかも、と思いながら回収票を貼る。
 朝、再びどこかで自転車の役目を授かってほしいと願いながら、玄関前に持ち出した。
 見届けようと注意していたが、玄関から離れたほんの5分ほどの間に消えていた。「回収票があればお留守でも持ち帰ります」という電話の声を思い出す。見送れば未練が残ったかも。
 今、どこかで走っているだろうか。子どもたちを見ながら想像した。
コメント (2)
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