空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「マイノリティーを勝手に代弁するんじゃなく」

2018-10-23 22:14:08 | ノート
BBC 俳優ケイト・ブランシェットさん、「異性愛者にも同性愛者演じる権利ある」 2018年10月22日

俳優のエリーズ・バウマンさんは7月にツイッターで、「親愛なるスカーレット・ジョハンソンへ、あなたが白人シスジェンダー女性という自分の特権を使うなら、マイノリティー・コミュニティーの声を大きくするために使って。マイノリティーを勝手に代弁するんじゃなく」と書いた

 ああそうか。
 トランスの役柄をシスの人がその役者としての資質によって獲得したことに(なぜなら、その役柄をシス女性役者に与えることが最初から決まっている不適切な運用があるのだとしても、多数いるシス女性役者のなかで、彼女こそがその役を得たのだから、その限りの卓越性は確実にあるわけなのだ)、「シスであることの特権を使うなら~」というのはトランス側の当然の、反差別発言であるのなら、

 例えばトランス女性(身体は男性)がシス女性と同じ枠で女性競技に参加して優勝したなら、彼女に対して「肉体的には男性であるという特権を使うなら~」とその特権使用の是非について声を挙げることも正当性を得るのではないか。いや、どうも地方大会レベルでは既に起こっていて、まあ地方の学校の担当者としては既に懸念するところなのだが。

 あるいは、特権使用の方向性を指示することも正しいことになるのではないか。「あなたが白人シスジェンダー女性という自分の特権を使うなら、マイノリティー・コミュニティーの声を大きくするために使って。マイノリティーを勝手に代弁するんじゃなく」というように、「あなたがトランスジェンダー女性(身体能力は男性)という自分の特権を(シス女性が主たる参加者として想定されている大会で)使うなら」と。

 ところが
 ところでエリーズ・バウマン、ないしイリース・バウマンについて、ああなるほど、本来は彼女こそがトランスなのであって、彼女こそが話題となった役を担うに相応しい人なのか、それなら不当な扱いに怒るもの尤もだと思ったら―かるく検索をかけたら、彼女は身体が女性のバイセクシャルだそうで、じゃあ自分だってトランスを「勝手に代弁する」悪事を働いているわけじゃないか、その点にかけてはシス女性・ヘテロらしいスカーレット・ジョハンソンが依頼されてトランスを”代弁”するのと同様、或いは”勝手さ”にかけては上になりはしないか。

 いや、「マイノリティー」であることで発言権と当該の領域への連帯と代弁の権利を得るのだというなら、そんなのなら、”自分はいまだ認知されざる●●のマイノリティーである、それを認知しないのは差別だし、無知無理解だ”と言い募れば間に合うことになりかねない。

 ちと筋が悪いよ。そしてその筋の悪さを、”今の(高級知識人の)倫理観”で補強している根拠の弱さは、今後の運動のためには非常に懸念すべきだと思う。

 …二つくらい前の記事で言及したように、「ゆりもどし」が―それなりに多数を占める層の憤懣等によって―引き起こされかねない。そのとき実際に犠牲になるのは、カムアウトもしかねるような弱者たちであって、おまえらカムアウトしたうえ社会的におのれの権利の防護を大規模に宣伝できるような強者様はどっかに逃げ切るだろうよ、本来は連帯すべき者たちであった弱者たちを見殺しにしてな!とか、まあ下々としては思うところがある。

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