空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

朝日新聞は米国がエチオピアからドローンを攻撃に出していると主張

2011-10-28 23:13:32 | ソマリア関連
 しかし,たぶん,ソースは脳内。現実的には合っている可能性はあるが,ワシントンポストを読んで脳内で情報を補っただけの記事に見えます。

朝日新聞 米軍、エチオピアに無人機基地 ソマリアの武装勢力攻撃 2011年10月28日17時4分

米軍が、アフリカ東部ソマリアのアルカイダ系組織の攻撃を目的に、隣国エチオピア南部に軍事拠点を極秘に開いたことが分かった。米紙ワシントン・ポストが27日、米空軍の話として報じた。エチオピア政府はこの拠点の存在を否定しているという」(朝日)

 とりあえず,つ 米国はエチオピアから偵察ドローンをソマリアに送る 他

 軍事拠点であるのは,まあ国語的にその通りだが,それは即座に攻撃を意味するものではない。

同紙によると、軍事拠点は首都アディスアベバから南に約500キロの町にある民間空港の一部を転用。米空軍の要員が駐留して無人機リーパーを運用している。米空軍は「エチオピア政府が受け入れる限り(無人機攻撃を)続ける」と同紙にコメントしている。攻撃対象はソマリア中南部を支配するイスラム武装勢力シャバブ。米軍はこのほかに、東アフリカのジブチや島国セーシェルにも、無人機の運用拠点を設けているという」(朝日)

 というのだが,BBCの報道によれば,米国はエチオピアからは攻撃そのものをしないよう注意しているという。敢えて非武装で展開するのである。

オバマ政権はアフガン、イラク、イエメンなど世界の6カ国で無人機による攻撃をしている。テロ容疑者を裁判を経ずに殺害するうえ、民間人の巻き添えも出ていることから、批判が高まっている」(朝日)

 で,そのワシントンポスト紙だが:

Washington Post U.S. drone base in Ethi­o­pia is operational By Craig Whitlock, Friday, October 28, 5:49 AM

The Air Force has invested millions of dollars to upgrade an airfield in Arba Minch, Ethi­o­pia, where it has built a small annex to house a fleet of drones that can be equipped with Hellfire missiles and satellite-guided bombs」,取りあえず問題の「リーパー」機が武装可能であることを第二段落目に伝える。

 で,その任務ですが「The Air Force confirmed Thursday that drone operations are underway at the Arba Minch airport. Master Sgt. James Fisher, a spokesman for the 17th Air Force ... said that an unspecified number of Air Force personnel ­are working at the Ethio­pian airfield “to provide operation and technical support for our security assistance programs”」であって,明示的に兵器による攻撃を意図しているかどうかは,いささか。

 さらに朝日が”「エチオピア政府が受け入れる限り(無人機攻撃を)続ける」”と訳したところは:

The Arba Minch airport expansion is still in progress but the Air Force deployed the Reapers there earlier this year, Fisher said. He said the drone flights “will continue as long as the government of Ethiopia welcomes our cooperation on these varied security programs.”

 であって,(無人機攻撃を)は朝日記者の補い。原文通りには”エチオピア政府が,我々の,こうした様々な治安上のプログラムに関する協同を受け入れる限り”程度であるわけで,無人機攻撃は仮に意図されていても計画の一部に過ぎない。
 もちろん,最近起きたという,Kismayoでの空爆の仕掛け手である可能性が大いにあったりするわけですが―

 つうか,あのさあ,わざわざエチオピア発でソマリアに攻撃する策はあるにせよ(以前,AC-130でねりねりやってた),セイシェルからも「リーパー」飛ばせるそうで(上掲記事2頁目を見よ),外交上微妙なところからやるこたないと思うが。

 それにいま必要なのは,直接的な攻撃ではなく,ケニア軍への情報提供だぞ(上掲記事2頁目を見よ)? アメリカ軍の仕事は,ケニア軍の手柄を横取りすることではなく,彼らに華を持たせて,一方『それ僕らの支援があって効率的に進んだわけだよね?』とやって,ケニア軍の独走を抑えるネタを確保することとかじゃないか?

 そんなわけで,朝日新聞さん(の当該記事執筆者)は勇み足だと思います。つーか後方支援の重要さを認識してないだろう,君ら(だからインド洋給油活動への評価もさほど高くできなかったものかと思う)。

 仕事してればわかるはずだと思うんだがなあ。私は華々しい役割(単行本筆頭著者とか)も超下積み仕事(某プロジェクトの一切名前の出ないデータ構築者,なお一時全体の40-50%を私の仕事が占めた模様)もやったから,人生経験・社会経験の少なさの割に多少見えるが。

イランラジオ ソマリアで、米軍無人機の攻撃により民間人25名死亡 2011年 10月 27日(木曜日) 15:10

 上掲朝日の一日前の記事だが:

ソマリアで、アメリカ軍の無人機の攻撃により、民間人25名が死亡、50名が負傷しました。プレスTVが報じたところによりますと、この攻撃は27日木曜未明に行われ、民兵組織の拠点も標的としたものであると主張されているが、この攻撃で民間人が犠牲となっているということです。ここ数週間、ソマリアでの米軍無人機の攻撃は拡大しており、これにより、多くの住民が命を落としています

 愉快同人誌状態のPress TVをソースにする辺りはまあプロパガンダだよなと。

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2 コメント

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Unknown (teiresias)
2011-10-28 23:23:16
だから君ら,僕より英語もドイツ語もフランス語もよくできるんだから,正確に英語をドイツ語をフランス語を翻訳しろよと。君らの脳内のファンタジーは要らないんだ。いや有ってもいいが,外部ソースと脳内ソースとは分離しろよと。
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Unknown (teiresias)
2011-10-28 23:52:59
>わざわざエチオピア発でソマリアに攻撃する策はあるにせよ(以前,AC-130でねりねりやってた)

思い出した,それはジブチからだ:
ttp://blog.goo.ne.jp/teiresias/e/e03572cab3fa7f6b0c5b0650f496a72f
ttp://blog.goo.ne.jp/teiresias/e/1c8a8ac3c97ceb8dd5feeb71f3cc5cb2
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