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てらまち・ねっと



 今、政治の世界で最も注目されている自治体のひとつが名古屋市。
 トヨタ自動車のおひざもとの愛知県、そして名古屋市は潤っていた。
 可もなく不可もなく・・そんな風だった。

 しかし、昨年、市長が河村たかし氏に替わってから激変。

 全国でも今までなかったほどの「意図的な議会との対立関係の構築もしくは演出」。
 「首長」側からの議会改革は珍しい。

 もちろん、目的はその先にあるはずだけれど。
 
 ともかく、市民には分かりやすいし、興味がわく。

 そんなところをリポートした記事を知人のジャーナリストが教えてくれた。
 丸ごと紹介しよう。

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 ●【第416回】 国、自治体は後に続けるか?  名古屋市が市民税10%減税
          「週刊ダイヤモンド」2010年01月14日

「人件費を減らしながら減税し、市民に返していきたい」
 名古屋市の河村たかし市長は4日の年頭会見でそう語り、「職員にひと肌脱いでいただきたい」と訴えた。名古屋市は4月から、市民税の10%減税を実行する。

 市民税減税は、河村市長が昨年4月の市長選で掲げた目玉公約の1つ。行財政改革を徹底し、削減分を重税感に苦しむ市民に還元しようというものだ。減税を先行し、あらかじめ歳入を縮小させて歳出をカットする手法である。退路を断ったうえで、行政のムダを排除する、いわば崖っ縁戦略だ。零細企業の経営者として長年、実経済の現場で苦労を重ねてきた庶民派ならではの発想だ。

 自治体に課税自主権が認められるようになったとはいえ、減税する自治体はこれまで皆無に近い。しかも、恒久的な減税となると名古屋市が全国初。中身はこうだ。

 市民税には収入に関係なく支払う「均等割」(一律3000円)と、収入に応じて支払う「所得割」がある。前者は行政サービスを受けるための“応益負担”、後者は富の再配分の性格を持つ“応能負担”で、所得に対し6%と一律に定められている。

 これらについて名古屋市は4月から、均等割と所得割共に10%軽減する。つまり、均等割は2700円で、所得割は税率5.4%となる。個人市民税のみならず、法人市民税も同様に減税される。

 名古屋市の試算では、来年度の減税額は約161億円に上る。問題はその財源だが、名古屋市はもともと富裕な自治体で、財政力指数は1を超える。そして職員数は2万6000人(教員を除く)に上り、人件費は2000億円に達する。1割カットしたとしても200億円になる。名古屋市に倣えば他の自治体も、そして国も、増税ではなくて減税を実現できるのではないか。

 さらに河村市長は、減税をアピールして個人や企業に名古屋への移転を呼びかける。キャッチフレーズは「住んでちょーよナゴヤ 市民税10%減税」だ。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)



●【第91回】名古屋市議会の抵抗勢力といよいよ決戦!
河村市長「どえりゃー庶民革命」の天王山

       週刊ダイヤモンド編集部  2010年02月18日
 投票行動による政権交代の実現に多くの国民が胸躍らせ、「無血革命」という言葉さえ飛び交った。あの時の熱気がわずか半年足らずで、大きな落胆に変わりつつある──。鳩山政権への国民の評価である。

 税金の無駄遣いをやめ、「コンクリートから人へ」使い道を転換させるはずだった。また、行政の透明性や公平性を高めるとも言っていた。

 しかし、現状は言葉だけに留まっていると言わざるを得ない。行財政改革は不徹底で、そのうえ、政治とカネの問題がまたぞろ噴出する始末である。選挙に勝利さえすれば、掲げていた公約を現実化できるというものではない。政治家や政党の力量に大きく左右されるのである。

 鳴り物入りでスタートした鳩山政権が混迷を深めるなか、予想以上の手腕を発揮して公約を着々と実現させている政治家がいる。かつて「総理を狙う男」と自称していた河村たかし氏だ。

 民主党の代表選に名乗りを上げるものの、20人の推薦人すら集まらず、断念を繰り返してきた著名な政治家だ。河村氏は昨年4月に「庶民革命」を標榜して名古屋市長選に出馬。自民・公明の推薦候補などを大差で破り、衆議院議員から名古屋市長への転身を果たした。

 零細企業の経営者を経験した河村氏は異色の政治家といえる。世襲や官僚OB、松下政経塾出身者といった今の政界の主流派ではなく、いわゆる叩き上げの庶民政治家である。しかも、選挙で2度落選するなど、順風満帆とは言い難い人生を送ってきた、苦労人なのである。

 そんな河村氏の長年の持論が「政治のボランティア化」。政治家の世襲や固定化、特権化、さらには職業化(稼業化)が進む現状に異議を唱え、政治は本来、普通の生活者がボランティア精神で行うべきものだと、頑固なまでに主張し続ける。

 議員の高額報酬や多選、様々な特権にも真っ向から反対し、他の政治家から何かと煙たがられている。実際に国会議員時代、豪華な議員宿舎の使用を拒み、アパートで東京暮らしを送っていたため、半ば変人扱いされていた。

 河村氏が名古屋市長選で掲げた公約は3つ。
 ひとつは、行財政改革を断行し、市民税を10%減税するというものだ。
 2つ目は、地域委員会を創設し、住民分権をすすめるという公約。小学校区ごとに地域委員会を設置し、ここに権限と財源を移譲する。地域の課題を解決するための自治組織で、選挙で選ばれる委員は皆、無報酬だ。
 そして、3つ目が議会改革である。

●【第91回】稼業と化した議員の職
        週刊ダイヤモンド編集部 2010年02月18日
 本来の機能を果たしていないという点では、地方議会は国会の比ではない。議場で活発な論議が繰り広げられることもなく、台本通りに淡々とことが運ぶのが、地方議会の通例だ。議員の多くは、特定の支持者への利益誘導を自らの役割と考えている。

 民意と議会の間にズレが生まれ、それが次第に拡大し、大きな断絶となっている。地方議会の不要論さえ、叫ばれている。こうした現象を生み出す要因は、住民のしがらみによる投票行動や議会そのものへの無関心があげられる。

 投票場に足を運ぶのはいつも特定の人たちとなり、組織票や固定票で当落が決まってしまう。民意が議会に反映しにくくなり、さらに無関心を呼ぶという、負のスパイラルに陥っているのである。

 その一方で、住民の無関心をうまく利用し、お手盛りの特権に浸っているのが、議員たちだ。

 名古屋市議会はその典型である。議員定数は75で、選挙区は16の行政区ごとに分かれる。定数2から7までの中選挙区制で、投票率はいつも低く4割にも満たない。
 このため、「地盤、看板、鞄」が幅を利かせるムラの選挙となっている。こうして、議場は政治家の二世、三世や労働組合出身者、国会議員秘書といった特定の人たちによって占拠されている。
 その数、合計で43人。議員の固定化、専業化、そして、稼業化である。

 報酬は年間約2350万円にものぼる。議会の開会日数は80日程度なので、法外というしかない。名古屋市議会には独特の慣習がある。例えば、議長・副議長の1年交代ルールだ。報酬が付き23万円もアップし、公用車もつく。おいしいポストは仲間うちで回し合うのである。また、4年の任期中に一度は海外視察できるという慣習もある。費用は1人当たり120万円だ。

 名古屋市議会ならではの特徴といえば、会派拘束の厳しさも挙げられる。各会派の議員は、所属する会派のボス議員の指示通りに行動しなければならない。逆らえば、除名などの処分が待ち構えている。除名されたら、選挙で対立候補をぶつけられることもありうる。議員であり続けたい人は保身のため、黙ってボスの指示に従うのである。議場で活発な議論が展開される訳がない。

 こんな議会の姿を、「政治のボランティア化」が持論の河村市長が黙っているはずもない。議員定数や報酬の半減、多選禁止や会派拘束の見直しなど盛り込んだ議会改革案を提案したのである。

●【第91回】河村サポーターズの結成
       週刊ダイヤモンド編集部 2010年02月18日
 河村市長の三大公約はいずれも、議会で可決されなければ実現できない。しかし、市長に賛同する議員はわずかに1人。残りの74人がノーだった。二元代表制をとる地方の議会に本来、与党も野党もないのだが、実態的にはオール野党体制となっている。誰が考えても河村市長の公約の実現は不可能とみられていた。

 ところが、市民税減税と地域委員会創設の二大公約が昨年11月定例議会で、議員との議論を重ねた末に可決され、前者は4月から、後者は3月から実施されることになった。圧倒的に不利な情勢にもかかわらず、なぜ、河村市長は議会側の譲歩を引き出せたのか?不思議に思う人も多いはずだ。

 河村市長は昨年4月の選挙で、名古屋市長選の史上最高得票数で当選を果たした。約51万票である。その選挙で河村マニフェストとして掲げたのが、三大公約だ。市民の圧倒的な支持を受けて市長となった河村氏は、公約を実現させる責務を負ったのである。

 市長就任直後に河村氏が実施したのが、自らの給与の削減だ。年額2720万円を800万円に引き下げた。名古屋の60歳サラリーマンの平均年収に合わせたのである。また、1期4年勤めると支給される4420万円の退職金もなしにした。いずれも議会の議決を得て、断行した。まさに有言実行であった。

 休みなく働き続ける市長の姿が連日、報道されることにより、住民たちも市政を身近なものに感じるようになった。そして、自分たちが河村氏を市長に担ぎあげたことを自覚し、市と議会の動きに注視するように。こうしてこれまで知らなかったこと、知らされていなかったことが次第に見えてくるようになったのである。

 多くの住民が傍観者ではいられなくなり、「河村サポーターズ」(以下サポーターズ)という住民団体が結成された。代表は、柳川喜郎・元御嵩町長(現在、名古屋市民)。市長の単なる後援会ではなく、マニフェストの実現に向けて、市長と共に行動する住民団体である。

 昨年の11月定例議会の直前のことだ。サポーターズは公約実現のため、ある実力行使に打って出ることを模索した。議会が減税と地域委員会の二大公約を否決した場合、即座に、議会解散の直接請求の署名集めに出る方針を表明した。議会リコールである。成立には約35万人分の署名が必要となるが、1000人を超える賛同者があっという間に集まった。

 この動きに驚いたのが、「地盤、看板、鞄」の力で当選してきた議員たちだ。声をあげる市民に恐れをなしたのか、2大公約を可決し、自らの最大関心事である議会改革案については、否決も可決もできず、継続審議に。議会側として改革案を検討することを約束した。正面衝突を避け、結論を先送りしたのである。

●【第91回】 決戦の2月議会
      週刊ダイヤモンド編集部  2010年02月18日
 そして、決戦の時がやってきた。名古屋市議会の2月定例議会が19日から始まる。議会改革案をめぐる、まさに「関ヶ原の戦い」である。攻勢をかけるサポーターズは今回、2つの策を同時進行させる構えだ。ひとつは、市長提案の議会改革案と議会側が検討中の改革案のどちらが良いかを市民に問うために、住民投票条例制定の署名活動に出るというものだ。

成立に必要な署名数は約3万5000人分。
署名は16の行政区ごとに集めることになる。

 もうひとつは、市議選の立候補者の公募である。
河村マニフェストに賛同する一般市民を議会に送り込もうという大胆な計画だ。書類審査と面接審査を行い、政治を稼業とせず、ボランティア精神にあふれた清新な候補を擁立しようというのである。

どんなに遅くとも来年春には議員の任期が満了し、市議選挙となる。その準備を今から進める考えで、応募者は57人にのぼる。このうち、3分の1が女性。若い人が多く、全員が政治経験なしという。

サポーターズの藤岡喜美子事務局長は「最低でも過半数の38人は立てたい」と語る。

 河村市長はサポーターズ推薦候補を応援すると明言している。既得権益のうえに胡坐をかいてきた現職市議らにとって、大変な脅威となることは間違いない。

 政治家の固定化と貴族化が、今の日本社会の混迷・低迷を呼び込み、民主主義を形骸化させたといえる。名古屋で順調にすすむ「庶民革命」が、日本の民主主義を立て直す大きな一歩となりそうだ。2月19日から始まる名古屋市議会の攻防には要注目だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部委嘱記者 相川俊英)


●【第450回】 楽しみにしてちょうよ!
河村“どえりゃー”庶民革命の申し子  無報酬議員が職業議員の特権を奪う日

      週刊ダイヤモンド編集部  2010年02月26日
 「市がやっている仕事や予算をこれから地域にどんどん切り分けていきます。楽しみにしてちょうよ」

 河村たかし名古屋市長がマイクを握ると、会場内の雰囲気は一変した。緊張ぶりを隠せずにいた各候補の表情も緩み、明るい笑顔が広がっていった。

 2月21日の午後、中川区豊治コミュ二ティセンターで開かれた地域委員会の立候補者による公開討論会でのことだ。一般席で各候補のアピールに耳を傾けていた河村市長は、会場に詰めかけた住民全員に向かってこう言葉を続けた。

「皆さんが決めることに一番、価値があります。減税分が地域の公益活動に(寄付金として)集まるように仕組みを整備していきます」
 市民税10%減税で懐に戻ってくるカネを公共のために寄付してほしいと訴えたのだ。

名古屋全域が今、自治の熱気に包まれつつある。河村市長による「庶民革命」が着々と進行し、りょう原の炎となって広がっている。何やらとてつもない変化が生まれそうだ。地域委員会の発足と4月からの市民税10%減税の実現。そして、議会改革に向けた大胆な動きである。河村市長の三大公約で、ワンセットとなったものだ。

 地域委員会とは、地域の課題を解決するために投票で選ばれた委員を中心に市の予算の一部の使い道を決める、住民自治の新しい仕組みである。昨年末の市議会で8つのモデル地域での先行実施が認められた。地域委員は公募と推薦の2種類からなり、いずれも投票で選ばれる(公募は選挙、推薦は信任投票)。

 任期は2年で2期まで。報酬はなく、交通費などの実費弁償として月額2000円程度が支給されるだけ。地域のボランティア議員である。8つのモデル地域の委員定数(7人から11人)は人口比によって決められ、公募委員の総数は40人。推薦委員の総数は32人となっている。今回、公募委員に64人が立候補し、倍率は1・6倍。

 公募・推薦委員の立候補者による選挙活動が2月22日まで行われ、8地域で公開討論会が開催された。選挙は、事前登録した18歳以上の地域住民による郵便投票方式で、締め切りは26日。翌27日に開票され、3月中に地域委員会は正式スタートする。昨年4月の市長選の公約がモデル地域限定とはいえ、早くも実現する運びとなっているのである。

      週刊ダイヤモンド編集部【第450回】 2010年02月26日
 もっとも、8地域の事前登録率は平均で10.6%。全く新しい取り組みながら議会の反対で正式決定が遅れ、周知の期間が明らかに不足したからだ。

 名古屋市はもともと、都市部の中では住民活動の盛んな地域といえる。全国の自治体に存在する町内会や自治会に加え、昭和40年代以降、小学校区(236)ごとに区政協力委員や民生委員、消防団などの各種地域団体からなる「学区連絡協議会」(学区連)が組織され、住民自治が進められていた。

 しかし、時代の変化とともに住民自治を取り巻く環境も大きく変わった。町内会への未加入世帯の増加や住民二―ズの多様化、その一方で、NPOの活動など新たな動きも高まっている。地域委員会は、地域のこうした多様な力を結集し、地域課題の解決に取り組もうというものだ。

 市のまちづくり予算(初年度の今回は人口規模により500万円、1000万円、1500万円の三種)を地域に移譲する「地域内分権」の実行である。これまで行政にお願いする立場にすぎなかった住民が、決定権を持つことになる。つまり、住民への分権だ。

 議会の強い抵抗にあいながらも地域委員会創設を譲らなかった河村市長が特に強く主張したのが、公選による委員の選出だ。理由は二点あった。

 ひとつは、委員選出の公平・公正性を担保するためだ。血税の使い道を決める役割を担うので、公明正大な公選にこだわったのだ。もうひとつは、委員を広く公募することで住民の参加意欲を盛り上げ、地域活動に参加する人の幅を広げるためだ。新しい担い手の登場を期待してのことだ。2期までとしたのも、委員の固定化を避けるためと推測される。その一方で推薦委員は学区連からの推薦とした。

 実際、公募委員選挙に学生やNPOメンバーや会社員など、学区連役員以外の新しい人たちが名乗りを上げた。

 初年度は8つのモデル地域での限定実施となったが、河村市長は「民主主義をつくる巨大な一歩」と、胸を張る。そして、試行錯誤を重ねて地域委員会を各地域に広げていく方針を明らかにしている。

 無報酬の地域議員が多数誕生し、地域のために奮闘する姿が定着すればするほど、問われるのは75人いる市議会議員の存在だ。報酬が年間1633万円、さらに年間600万円の政務調査費付き。そのうえ費用弁償という名の日当が、1万円。議会の在り方がこれまで通りでよいと思う市民はいなくなるのではないか。

 河村市長は定数や報酬の半減(817万円)、会派拘束の見直し、政務調査費の見直しといった議会改革案を2月議会に追加提案するはずだ。

 これに戦々恐々なのが、議員の面々だ。特権に浸っていた彼らも大慌てで改革案を模索しているが、議員の固定化や貴族化に強く異議を申し立てている河村市長やその支持者たちとの隔たりは大きく、全面対決の局面が刻々と迫っている。

 河村市長を支援する「河村サポーターズ」(代表は柳川喜郎・元御嵩町長)はすでに市議候補を公募し、論文などの書類を提出した58人への面接を予定している。いずれも政治経験のない普通の市民たちで、そのうち3分の1が20~30才代の若い人たちだ。

 また、「河村サポーターズ」は議会改革の実行を迫るため、3月上旬にも住民投票条例制定の直接請求の署名活動をスタートさせる構えを見せている。議会改革の攻防は今後、議場内に留まらず、市全域へと広がっていくことは必至である。名古屋の「庶民革命」の行方にますます目が離せない。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)


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