出雲市大社町北荒木に残る「旧・大社駅舎」。出雲大社を模した黒い屋根瓦に漆喰の白壁という純和風の優美な駅舎は、2代目の駅舎として大正13年(1924)2月28日に竣工。2004年に国重要文化財に、2009年には「近代化産業遺産」に指定されています。
明治45年6月に開業して以来、1990年の廃駅まで出雲大社の表玄関口として親しまれてきた駅舎。 大正13年の改築に際しては、出雲大社の玄関口らしく全国でも珍しい神社様式が取り入れられました。
駅舎内に入って正面が三等待合室。右手奥には一・二等車の乗客の待合室と小荷物扱室があります。
駅舎内の天井は高く、鏝絵が施された中心飾りと灯篭型の和風シャンデリアに、まず目を奪われます。 当時としては非常に高価であったと思われるシャンデリア、玄関を含めて30個ほどが設置されていました。
柱のない広々とした空間のホーム側中央に据えられた木製の出札室は観光案内書を兼ねており、駅舎のシンボル的存在。シャンデリアに照らされた出札窓口には大社を模した屋根がデザインされており、それだけでも一見の価値あり。
出札室の横を通りホームへ
ホーム側には精算用の窓口があり、ここで乗り越しの手続きなどをします。
今は私たちしかいないプラットホームも、かっては電車を待つ人であふれ返っていた事でしょう。 そうして東京・名古屋・大阪と・・・・切符の文字を見ながら、参拝の思い出に浸るのです。
使われなくなった事を教える夏草の緑に彩られた線路を横切り、向かい側のホームに立ちました。島式2・3番線から見る景色が発なのか着なのか、着であれば降り立つ人の顔はきっと上気して・・
発であれば、やがて乗り込む電車が来るまで、何度も何度も1番線のホームに名残を惜しむのです。
二面三線の長いホームを持つ大社駅。その三本目の線路に「D51774号」が静態保存されています。
線路をふさぐ夏草が無ければ、今にも黒い煙を吐いて動き出しそうな・・そんな錯覚を覚えさせる光景。
車両は大社線廃止時にJR西日本から無償貸与され、出雲大社神苑内に展示されていましたが、2001年に行われた旧JR大社駅整備事業の一環として、出雲大社神苑内から構内に移設。
「D51」に乗って旅をする・・・実はとっても憧れています。実際にそれが可能な土地にも行きましたが、結局、無理な理由があれこれ出てきて叶わず仕舞い。まぁ・・こんな記念写真で満足できるのですから、きっとその程度の憧れと言う事かもしれません。
大社駅のホーム間の移動は線路を横切るのですが、ホームから通路に下りる階段を塞ぐ鉄板にウサギを発見! もちろん本物ではなく、鉄板に刻まれた蒲の穂と兎の絵なのですが、いかにも出雲らしいステキな遊び心。・・でも踏めない・・(^^;)
ウサギと言うとなぜか条件反射のように浮かぶ「亀」、さすがに亀の絵の鉄板はありません(笑) でも特製の瓦を使用した駅舎の屋根。下り棟の先端に、実は6匹の亀が乗っかっているのです。亀は水の中の生き物、火災除けのまじないとして使われるもので、ここではイソップ寓話は無関係(^^;)
振り返り・・・振り返り、名残を惜しみながら私たちはこの美しい「大社駅」を後にします。 後で知ったのですが、重文指定の駅舎は全国に3駅しかなく、後の2駅は東京駅と門司港駅。2017年、門司港駅を見たくて北九州市に行ったのですが、無情にも改装中の最中でした(-_-;)
訪問日:2011年5月17日