TVでエンゼルス戦を見ていて、古い記憶が蘇ってきた。
あれはいつだったか、たぶんロス暴動の翌年か、翌々年ではなかったか。仲良くしていた編集者に誘われて急に旅行雑誌の取材で、ロスに行くことが決まった。
当時はバブル末期で、私にとって最悪の時期だった。それより4年前に成り行きで仲間と始めた会社が崩壊寸前で、実は海外取材どころではなかった。当然、断ろうと思っていた矢先に、ロス行のチケットが送られ来て、同時に解約不可の格安チケットだからと念押しのFAXがロスから届いた。結局、あわてて、パスポートを取得した。しかも、その翌日が出発日というとんでもないスケジュールだった。
夜、成田から飛び立つと、不思議と「これでよかったのだ」という開放感に包まれた。当時は、海外でもつながる携帯事情も無く、海外に出ることは日常からの解放そのものだったのだ。
そんなわけで、あれほど躊躇した西海岸の取材は現実逃避には絶好の休息となった。西海岸特有の抜けるような青空の下、先乗りしていた件の女性編集者とバカンス気分であちこち車で駆け回った。その時、滞在した場所がアナハイムの日本人ガイドの家で、アナハイムスタジアムの脇を何度も車で通りすぎた。
スタジアムの中に入ることも試合を観戦する機会もなかったが、一度だけ取材で訪れたドジャーススタジアムよりも、愛着を感じていた。当時はカリフォルニアエンゼルスという球団名で、野茂がドジャースにはいったのはそれから1、2年後だったと思う。つまり、その頃、メジャーリーグは日本ではまだまだ遠い国の出来事だったのだ。
その何度も前を通り過ぎたスタジアムで、今、大谷が躍動している。感慨深いものがある。
せめて、中に入っておけば良かったと今にして思うが、あの頃はまさか日本人のスターがここでプレイするなどとみじんも考えていなかった。何しろ30年も前のことである。
たぶん、最近の円安傾向が、1ドル150円だった当時を思い出させたのだろう。
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