tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用の本質への理解不足

2011年12月14日 22時54分52秒 | 労働
雇用の本質への理解不足
 今、多くの国で経済政策が問われています。アメリカでも、ヨーロッパでも政権担当者が一番心を痛めているのは何でしょうか。
 経済が思うように成長しない、貧富の差が拡大している、国民の将来不安が高まっている、などなどいろいろありますが、最も深刻な問題は雇用問題でしょう。
<最近の各国の失業率>(内閣府海外統計データ:%)
 日本         4.1(9月)
 ドイツ        5.8(9月)
 アメリカ       9.0(10月)
 フランス       9.9(8月)
 イギリス       8.3(8月)
 ユーロ圏      10.2(9月)
 EU         9.7(9月)

 途上国との競争があるのでインフレ率こそ今は上がりませんが、日本とドイツを除く失業率10パーセントといいうのは、昔から政権交代が言われる水準です。失業率に敏感な日本では、5パーセントでも政権が代わったではないかという見方もあります。

 どこの国も、財政支出、金融緩和で雇用対策をやっていますが、もともと政府は金がない、金融はゼロ金利といった状態ですから、ほとんど効果はありません。
 これは当然の話で、国民所得が増えない中で、人件費に割ける金額には限度があります。それなのに1人当たりの人件費は、毎年、何がしか増えているのです。雇用が増える余地はありません。デフレで傾向的に平均賃金が下がっているのは日本ぐらいです。

 ポピュリストに成り下がっている多くの政権担当者は、それでも雇用を増やすと約束しては失敗を繰り返しています。
 本当は、経済成長が期待できないときに雇用を増やすためには、一人当たり賃金を下げる以外にはないのです。しかしそれではデモが起きるということになります。

 日本は非正規労働を増やして平均賃金を下げ、雇用の悪化を食い止めました。しかしこれは格差社会を生みました。
 ところで今、日本の厚生労働省は、年金支給開始年齢の延伸を理由に、高齢者雇用促進、希望者の65歳までの雇用義務化を言い出しています。
 法律を変えて雇用が増えるのであれば、どこの政府も苦労はしません。もともと雇用は経済成長の従属変数です。日本の経済成長をどうする、そのためには留めどない円高をどうする、といった問題は、経済官庁にまかせて「うちは雇用が担当だから」と言って無理すれば、日本経済にとっては、何らかの形で、平均賃金を下げて対応することしか方法はないでしょう。