tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

改めて「日本的経営」を問う:長期視点の経営

2012年09月02日 22時57分28秒 | 経営
改めて「日本的経営」を問う:長期視点の経営
 前回、日本的経営の二本柱として「人間中心の経営」と「長期的経営」と書きました。これは、かつて日経連(現日本経団連)が指摘してきたもので、広く受け入れられています。
 そして解説によれば、この2つは、基本的な関係を持っており、企業は人を使い捨てにするのではなく、育てることを期待されており、これには時間がかかる、それを可能にするためには企業は長期に存続発展していかなければならない。したがって当然経営は長期的視点に立たざるを得ないとされています。

 また、顧客や社会全体から見ても、社会に役立つ企業は長期に存続することが期待されており、それに応えるためには短期的な利益の極大化ではなく、長期的な発展を重視する、という事になるようです。英語のGoing Concernも同様な意味でしょう。

 確かに日本の企業の寿命は、世界でも飛びぬけて高い(帝国データバンク)ようで、この面でも日本的経営の特徴は実証されています。

 そうした意味では、「最近の日本的経営に変化が」といった論調は、多分にマスコミが作っている面があるようで、前回引いたシャープの人員削減の記事などにしても、企業自体は、多様な雇用安定策を講じているのが現実で、投機筋とその分野担当のマスコミ人の短絡的な表面上の理解と表現によるところが大きいと言えるのかも知れません。

 問題は、就職氷河期に直面する学生や、その周囲の人々、さらにはマスコミの報道を鵜呑みにする多数の人々を中心に、日本的経営の崩壊、企業不信の増幅といった雰囲気が、知らず知らずに作られて独り歩きを始めるといった現象でしょう。

 確かに、異常な円高に苦しめられる企業が、非正規従業員を増やしたり、教育訓練費を削ったり、雇用削減のケースが増えたり、といったことも、避けられない経済環境です。
 しかし企業は、これはあくまで、異常なデフレ不況への対応策であることを明確にし、労組も企業に最大限の努力を要請し、日本的経営維持の努力を常に明確にすべきでしょう。

 あまり長期に不況が続くために、日本的経営についても「一犬(マスコミ)虚に吠えて、万犬実を伝う」ような事態になることを最も恐れるものです。
 それにつけても、政府日銀が、これ以上、円高という失敗を無思慮のうちに繰り返さないことを願うところです。