tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

働き方改革の行方:法案は通ったが:2

2018年07月01日 10時39分08秒 | 労働
働き方改革の行方:法案は通ったが:2
 前回は「働き方改革」で日本経済の生産性が上がるかという点を取り上げましたが、どうもそうはならないようです。

 国民経済生産性が上がるには「経済成長」が必要です。今のアベノミクスでは、順調な経済成長は難しいでしょう。消費が伸びないからです。経済が伸びないで生産性が上がると雇用削減か時短かワークシェアリングで実質所得の低下になります。

本当は、消費拡大策を取り、経済成長を実現する中で、生産性を上げるべきでしょうが、アベノミクスにはそれがありません。

 逆に働き方を改革すれば経済が成長すると考えているのが「働き方改革」ですが、それは政策が逆で無理ですよと言わざるを得ません。

 「働き方改革」の基本理念は、 繰り返していますように企業と従業員の関係を人間中心の日本型ではなく、職務中心の欧米型にしようという事です。
 職務給や成果主義を取り入れ、正社員と非正規社員を同じ待遇にしようという事ですから、これは現実には、非正規を正規並にするのではなく、雇用スタイルを欧米型にして、日本型正規社員をなくすという方向なのです。

 雇用を流動的にし、何時でも誰でも適職を選べるようにしようと言い、兼業や副業も推進すれば、それが「働きやすい環境」だと言っているのです。

 日本人の好む雇用のシステムは、選択の自由ではなく、雇用の安定と企業内の豊かな人間関係です。これは日本的正社員制度でないとうまく行きません。新卒一括採用が、学生側からも、企業側からも、当然のこととされているのを見れば、それは明らかです。

 就職協定などというものが、こんなに問題になることは欧米ではあり得ません。そして若年層失業率は欧米では大抵平均の2倍と高いのです。
 
 これまでも書いてきていますが、いくら法律を作っても、現実の日本の産業社会では、法律の趣旨は換骨奪胎されて、日本型に改変されたものがだけが機能していくのでしょう。
 基本的には、戦後からあった 「職務給」導入の動きが、結局日本型職能資格給になっているというのが好例です。

 労働時間に関しては、最初は長時間労働をなくすという触れ込みでしたが、裁量労働は取り下げましたが、「高プロ」には固執し、さらに上記のように 兼業・副業の奨励など、本音は労働時間短縮ではなくて、もっと働けという事のようです。

 問題の「高度プロフェッショナル」については、恐らく普及はしないでしょう。社員でありながら、特技を生かして自分の裁量で働くという、社内請負型、社内契約社員型を支援しようという活動は、今迄もありましたが、結局は殆ど受け入れられていません。

 「高プロ」は本人の選択でという事ですから、会社が強制すれば別ですが(それではパワハラ、不当労働行為の恐れが出てきます)、現実の企業の場では普及はしないでしょう。
 結局ごく少数の例外的な人のために、膨大な時間とコストをかけ、成果の無い法律を無理して作ったという事になるのではないでしょうか。

 しかし、法律を作ったのですから、行政の方が何もしないわけにはいかないでしょう。日本の雇用システムには馴染まない邪魔な規制や行政指導が行われる可能性はあります。

 その点では誰もが「自分の望む働き方を確り考えなければならなくなる」という副次効果はありうるでしょう。これは良いことだと思います。
 一言添えれば、働き方・雇用問題で、今本当に必要なことは、不本意非正規を早急になくすという事でしょう。これは法律では出来ません。