tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差社会化、階層社会、階級社会

2019年07月17日 21時37分56秒 | 文化社会
格差社会化、階層社会、階級社会
 かつて1億総中流といわれた日本社会が、平成時代を覆った30年不況の中で、次第に格差社会化してきたことは、諸種の統計が示す通りでしょう。
 そして、格差社会化は、社会の不安定さを増すと同時に、健全な社会環境や経済成長の阻害要因になることも次第に明らかになってきました。

 アメリカでは、「サブプライム」という言葉が一般的に使われていたようですが、日本では、低所得層とか貧困層という言葉が、統計上などでは使われても、具体的な階層を指す言葉として一般的に使われるという感じでは未だないようです。
 
 戦前は別として、戦後の日本では、階層とか、もちろん、階級といった言葉は意識されてこなかったように思います。
 しかし、最近に至って、格差社会化という言葉を超えて、階層社会とか、階級社会とかいう言葉が使われ始めてているようです。

 格差社会化という言葉では、「偶々」所得や資産の格差が広がった、という受け止めで、これからの政府の政策や、社会のシステムを改善よろしきを得れば、次第に格差は縮小し、よりよい社会になるというという考え方が強いと感じられます。

 しかし、階層社会とか、さらに階級社会という表現になると、一般的には、ある程度固定した階層・階級のイメージがある状態と感じるのが普通でしょう。

 格差社会化論議の中で、広く登場するのは非正規労働者の増加でしょう。長期不況の中で、求人と求職が極端にアンバランスになり、その結果として、「所得水準より、仕事に就けることを優先する」といったある意味ではデスパレートな経営・雇用情勢となり、その結果が非正規労働の著増だったようです。

 そしてリーマン・ショックの前1~2年の時期、さらに日銀の異次元金融緩和でデフレが解消してからといった景気回復期に正社員は定期昇給の回復、ボーナスの回復、などで収入が増えても、非正規は最低賃金上昇程度といった状況の中で、所得格差拡大が起こることになりました。

 また累積所得額が反映する貯蓄で見ますと、学卒就職期に、いわゆる就職氷河期に直面した世代の人々の所帯の貯蓄は極端に少ない(あるいは実質マイナス)といった状況が見られます。

 こうして、偶々生まれた年の違いが所得や資産形成に影響するという状態は、政府としても放置するべきではないと思いますが、日本人は世の常として、運が悪かった、あるいは自己責任として自分自身に納得させる傾向があるようです。

 プラザ合意以来の超円高による不況については、政権担当者には大きな責任があるという見方もないわけではありませんが、政府はポピュリズムに流れ、目につく問題に対処するだけのパッチワークに終始しているようです。

 消費税増税の延期、待機児童問題、官製春闘、近くは軽減税率導入、(税と社会保障の一体化企画は没却)、年金安全宣言、等々といった個別問題以前に、格差社会化防止の総合的基本的な政策が国民に具体的に諮られるべきではないでしょうか。

 このままでは、格差社会化が、階層社会、ひいては階級社会に進化(退化?)しかねないと危惧する人も少なくないのではないでしょうか。
 政府が、「格差社会化は悪」という透徹した理念を持って、政策を打ってほしいと願う所です。