発表物があってとびとびになりましたが今日の日本における高齢者の就業問題を考える第3回です。
前回は日本の高齢者の就業率がこの20年で大きく上って来ている事を年代別のグラフで見ました。60歳代前半では50%から70%超へ、60歳代後半は34%から50%超へといった大きな変化です。これはまだまだ進むでしょう。
こうした変化に対して、多くの人は「少子高齢化で老後不安の深刻化のせいですね」といった理解ではないでしょうか。
勿論原因は日本人の平均寿命が延び、それに比例して健康寿命も延びている事です。しかしこれは、人間として自然体で見れば、「人生僅か50年」と言っていたのが「人生80年に延びた」という日本社会の健康長寿(昔の言葉では不老長寿)への努力の成果なのです。
このブログの視点は、こうして達成した日本社会、日本人の努力の成果を「老後不安」などという情けない言葉ではなく、誰もがより長く楽しめる、より豊かで快適な社会の実現という形で、達成の成果を謳歌しましょう、という点にあります。
そうすれば当然、これをいかにして実現するかを、国、国民全体で具体的に考えていきましょうという事になるはずです。
そこでヒントになったのが、働くという事についての日本人の伝統的な理解と、この所の日本人の長寿に対応する行動様式、高齢者の就労意欲の高さです。
既に日本人への与件となっている健康長寿の社会を「豊かで快適な長寿社会」にしていくためには、基本的に、「良く考え」、「良く働き」、「良く楽しむ」といった要素が大切です。
そして、「良く考え」、「良く働く」ことが「良く楽しむ」事を可能にするというのが人類社会共通の進歩発展の原動力であり、その中でも「良く働く」事が出来れば具体的に結果を出すことが出来るという事が、経験的に解っているのです。
という事で、日本人の高齢者の就業率が急速に高まっているという事実が、その可能性をすでに示していると考えてよいという結論が出て来るわけです。国や企業のせいどやたいどがかわれば、多分上手く成功できると思っています
という事で、この進歩のための3つの条件について現状を考えてみますと、プレイヤーは3人、政府、企業、国民です。さて、どんな状態でしょうか。
「良く考え」では、政府は年金財政の心配ばかり、アベノミクスでは「一億総活躍」と言ったが中身はないといった状態、企業は定年制や年金制度に縛られて、柔軟な考え方はまだ少数企業の状態、国民はそうした環境の中で老後の心配が大きく、考えるのは老後への貯蓄が中心といった状態です。
「良く働き」では、政府は大忙しですが最大の動機は票の獲得、国会は議員の不祥事で空転、企業は欧米のカネ中心に冒され人間中心は影が薄れ、人材の無駄遣いが多い状態、国民は、良い仕事をしたいが、それが企業の現状から不本意な非正規就労が多い。
「良く楽しむ」では政治家や官僚が楽しく仕事をしているようには思われません。政府の不条理で自死する官僚まで。企業も余り褒められません各種のハラスメント、Karoshi などという英単語が生まれる、国民の当面の敵はコロナ、老後不安、しかし楽しさ追求の潜在欲求は強い。
悪い面ばかり書いてしまいましたが、就業率上昇の数字が示しますように、国民は良い将来を目指して真面目に頑張っていることは明らかです。
この国民の望みを、政府、企業はどのように現実のものにするかが日本の課題でしょう。それを少子高齢化に対する後追いとして「困難を乗り越えて」というのではなく、「より豊かの健康長寿社会を目指して」という前向きな「希望に満ちた」活動にしてくことが問題解決の要諦でしょう。
そのためのエネルギーの源泉は国民の勤労意欲の高さ、「働く」ことは「端を楽にする」と考える伝統文化の中にあるようです。
それをいかにスムーズに国の政策や、企業の制度にして行くかは、話が戻りますが「良く考え」の中から出て来るのでしょう。
これからも折に触れてこの問題を具体的に取り上げていきたいと思っています。