tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

輸入物価下落、企業物価上げ止まるか

2022年12月13日 10時30分52秒 | 経済
昨日から高齢者の就業問題を取り上げ、今日は第2回の予定でしたが、日銀の企業物価統計が発表され、国際的な物価上昇の動きにも変化が見えてきそうな状況が感じられますので、今日は物価問題を優先することにしました。

このところずっとトレースしている主要3物価では、輸入物価が上がり、輸入原材料等の値上がりから企業物価が上がり、それを加工した消費物資が販売網を通じて消費者の手に渡る消費者物価も上昇という経緯で、輸入物価が上がれば消費者が上がるというプロセスに、色々な条件が影響しつつ我々の日々の生活にインフレという影響が出ています。

その影響が、それぞれの段階で、どんな程度に影響して来るのかという事を「見える化」してみようという事でグラフにしていますが、輸入物価の動きが変わってきました。

輸入物価指数、企業物価指数、消費者物価指数の推移

            資料:日銀、総務省(消費者物価指数は東京都区部速報)

上図を見てみますと8月に原油などを中心に一時的に輸入物価が下げましたが、その後また上昇かと思っていましたら、10月は微かな下落、11月ははっきりと下落の様相です。

後から見れば原油をはじめとしたエネルギー価格の世界的上昇もこの夏がピークだったといった事になりそうな気配です。
ロシアも、LNGを売らなければ戦争をする資金も出てこないというのが経済の現実ですから、産油国はいくらでも価格引き上げが出来るというものでもありません。

気候変動による主要穀物などの農作物への影響は心配されるところですが、急激な値上がりはこの所で一服ということになるのではないでしょうか。

日本の場合、日本の特殊事情もあります。それは急速に進んだ円安の揺り戻しです。
日銀の輸入物価指数は勿論円建てですが、日銀は同時に「契約通貨ベース」の輸入物価の指数も発表していて、それが7月以降、前年比の伸び率は鈍化、10月、11月は前月比で下げています、円建ての指数の場合はそれに円安の揺り戻しが加わって、円建ての輸入物価は下げているのです。

円レートの方は多分これからは多少の上下はしながらだんだん120円辺りに向かって円高になっていくのでしょう。
国際情勢に大きな変化がない限り、輸入物価の上昇もなさそうですから、これからは輸入物価は下落傾向でしょう。

企業物価はそのあたりを反映して上げ止まりから多少の下げの状態になりそうです。
それでも消費者物価は上昇を続けるかもしれませんが、年率4%近くまで上げてきたことで、上げは一巡でしょうか、輸入物価が上がらなくなれば、後の上昇要因は来春闘の賃上げによる賃金インフレです。

春闘の賃上げ率が5%を超えれば、賃金インフレ分が2%ぐらいになりそうで、それが政府・日銀の長年の懸案「インフレ・ターゲット」ですから、良いか悪いかは別として、来春闘次第で物価が上がらない経済から物価が上がる経済に変わる可能性も出て来るわけす。

アベノミクスが輸入インフレでなし崩しに消滅して、日本経済が新しい民間主導の時代に入る可能性が出て来る可能性もありますが、来春闘が当面の試金石のようです。

高齢者の就業をどう考えるか:1

2022年12月12日 18時13分39秒 | 労働問題
日本経済社会の今後の発展を考えていくうえで高齢化との関係は最も重要な問題にひとつでしょう。

先々月「 人生には3つの時期:転換点は2度あります」というという事で3回ほど書きましたが、その3つの時期の最後の高齢者の就業問題について考えて行ってみたいと思います。

そのためにはまず実態を見ておかなければなりませんが、それには手っ取り早く適切なのは総務省の「労働力調査」でしょう。
昔から「労調」という略称で、厚労省の「毎勤」(毎月勤労統計)とともに労働経済関係では最もよう使われる統計です。

ここではその高齢者の部分にスポットを当ててみたいと思います。
現役サラリーマンとしてこの統計の線上を歩いてきた人間の一人から見てみますと、この統計数字には実感があります。

以前は定年年齢は55歳が一般的で、それは日本人の平均寿命が前提という事は先月も書きましたが、平均寿命の延伸とともにそれは伸びて、60歳に、さらに65歳になって70歳までの雇用が努力義務になろうという急速な進捗状態です。

急速なと書きましたが、客観的に見ますと、平均寿命の実態に遅れてしまって、あわてて後から追いつこうと努力しているというのが実態でしょう
現実の動きを見てみますと下の図のようになっています。

年齢別高齢就業者の推移 (単位万人)

                資料:総務省「労働力調査」

この図は就業者の実数を示したものです。就業者は雇用者と自営業主家族従業者の合計で、働いている人の数です。失業者は入っていません。

見て頂きますと55-59歳の青い線の大きな山が2000年台前半に見られます、団塊の世代が日本の労動力の中核の時代です。
団塊の世代が55歳の旧定年年齢を過ぎ、山は右に移動しますが5年後の山(赤い線)はずっと低く(170万人以上)なっています、

こうして歳とともに若い人が減り、定年とともに就業人口が減ってくるという傾向が2012—2013年あたりまで顕著ですが、その後各年代とも徐々にではありますが就業人口が上昇して来る傾向が見られます。

このグラフからは、人口として巨大な団塊の世代の高齢化を中心に就業者(雇用者+自営業者+失業者)が減ってくる動きの一方、それに対して、生産年齢人口(労働力人口+無業者)の中の無業者が(再び)仕事に就き始めるという動きのある事が見えて来るのではないでしょうか。

つまり高齢者の就業率が上がって来ている。年をとっても、元気だからもう少し働こうという動きが一般的になっているように見受けられるところです。

友人などのなかにも、定年で少しのんびりしてみたのですが、何にもやる事がないというのも詰まらないので、何かいい仕事を探しています、などという人は結構います。

マスコミでも、 高齢者は「生活のために働くのか」「仕事をしたいから働くのか」などといった議論はあるようですが、この際、高齢者の再就職といった問題を含めた動きを統計上で追ってみたいと思います。

人権団体の国際協調の動きは貴重

2022年12月10日 13時42分04秒 | 国際関係
人権団体の国際協調の動きは貴重
今年のノーベル平和賞にベラルーシの人権活動家アレン・ビャリャツキさんとロシア人権活動団体「メモリアル」とウクライナの人権団体「市民自由センター」が選ばれました。

世界中が心配しつつ見守っているロシアのウクライナ侵攻問題のさなか、この二国の人権団体とロシアと深い関係を持つベラルーシの人権活動家をノーベル賞受賞者として選んだノーベル賞選考委員会の知恵に絶大な賛意を示す人は多いでしょう。

ベラルーシのビャリャツキさんは、は反政府運動で現在収監中という事で、授賞式には夫人が出席されるとのことですが、ロシアの「メモリアル」の幹部の方達は世界のマスコミからの取材に対して積極的に発言をされているようです。

「メモリアル」の存在は今回初めて知った人が多いでしょう。ロシア国内でも厳しい言論統制の中でこの組織の存在は余り知られていなかったようです。

今回の受賞で初めて知り、驚き、喜び、何らかに希望を見異だしているロシアの人々多いと思わせる報道が多くみられます。

「メモリアル」自体、解散を命じられ、異議申し立ては、ウクライナ侵攻と同時に棄却され、解散命令の中にあるとのことですが、「メモリアル」幹部のヤン・ラチンスキーさんは、受章は大きな力になる、ロシアはこれから変わる、と積極的な発言をしているとのことです。

ウクライナの「市民自由センター」は、ロシアの侵攻以来、戦争犯罪に記録に取り組んでいて、受章は喜びと力になる、自由と平和、民主主義のために、この活動をさらに積極的に続けていくことを表明しているようです。

こうした報道から多くの人が現場における現実、権力によって隠された真実を知ることが出来ます。独裁者の専横と抑圧の中で、報道の自由の制限から隠されていた真実を部分的にでも実感として受け取ることが出来ることは貴重です。

独裁者への反抗は至難でしょう、それを国際連帯の力で、少しでも進捗させる力につなげることが、「国際連帯」という行動の、更なる可能性の拡大を齎していくのではないでしょうか。

何処の国にも自由と平和、そして民主主義を望む人はいるのです。そうした人たちを繋ぎ、縦の抑圧を時間をかけても切り崩す横の連帯・協調は、これからも地球社会の平和と安定のなめに必要であり続けるのではないでしょうか。

独裁者を「引き下ろす」事の出来るのは、その国の国民だけではないでしょうか。国連にその権力がない現在、外国が関与しようとすれば、それは戦争を伴う可能性が大きなものになります。

平和のために戦争をするという事は、必然的に一方的な理屈となり、多くの人の平和な生活を破壊します。

残念ながら、今もそうした困難に世界は直面しているのです。
しかし国民の多くは平和と安定を希求しているとすれば、そうした意識の国際連帯・協調を進めることが唯一の平和的な問題解決の方途という事になるのでしょう。
ロシアにおける、今後の動きを注目するところです。

初の官民連携フォーラム開催

2022年12月09日 14時57分01秒 | 経済
12月8日、太平洋戦争の開戦の日に合わせたのではないでしょうが、岸田総理は官邸で、初の「官民連携フォーラム」という会合を開きました。
正式には「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」ということのようです。

アベノミクスは尻すぼみで、その後はコロナ対策に追われ、日本経済の没落には歯止めもかからず、世界経済の中での順位も下げるばかり。
その上に急激な円安に襲われ、長年のつけが回ってインフレは進行を早めています。

政府としては、ここで何とかて手を打たなければ、政権の支持率低下に歯止めがかからないと危惧しても当然です。

という事かどうかは解りませんが、経済を背負うのは経済界ですから、官邸に経済人の代表に集まってもらい、何とかして経済を立て直す相談をすることになったのでしょう。
政府は関係閣僚総出、経済界は経済3団体に新経連、各地域の経済界と総出です。

これは岸田政権のいいところで、こうした会合を開くという事は、経済界をあてにしているという姿勢の表れですから、経済界も、これは何か役割を果たさなければならないと感じることになるでしょう。

いずれにしてもこうした形で、政府と経済界が総出で話し合うことが、定期的にでも出来れば、日本経済も少しは良くなるでしょう。

中身についての報道はまだほとんどありませんが、経産省のニュースで、主要な省庁と民間団体の提出資料はネットで見られますので、早速開いてみました。

ところが、どの資料も、どちらかというと総花方式で、国内投資拡大のためにこんな点が官民連携の核心といったポイントが解りにくく、こんな議論がされそうだという点までは到達できませんでした。

マスコミは要点だけ纏めるのが得意ですが、報道は会議の趣旨だけで、「国内投資の支援」と「賃上げ要請」が見出に出ていたりです。恐らく岸田総理の冒頭の開会お趣旨からでしょう。

民放がニュースで取り上げた中で、岸田総理の冒頭のスピーチの一部がありましたが、これを見てちょっとがっかりしました。
総理はA4の紙を両手で持って、それを確り読んでいたのです。やっぱりLEADERでなくREADERをやるのですかと呟くことになりました。

総理が官邸に全国から主要な経済人を呼んで官民の連携を提唱するのであれば、集まった人たちに直接話しかけなければ熱意は通じないのではないでしょうか。

経済界からは経団連の十倉会長が「それなりの支援のお願いします」という趣旨の発言をしたというのがマスコミ報道です。

矢張り最初の会合ですからぎこちないのは仕方ないかもしれませんが、残念ながら、相手の目を見ながら話せるような間柄にならなければ、本当の連携には至らないのではないかといった印象止まりでした。

それでも国民は一歩でも半歩でも前進する事を望んでいますから、こうした会合も継続して頂き、徐々にでも確実に前進してほしいと思うところです。

12月8日、太平洋戦争の開戦記念日でした

2022年12月08日 14時29分58秒 | 政治
昨日は、防衛予算の増額と増税論議の問題を書きましたが、今そうした問題に関わっている人たちは、今日が「12月8日」だという意識があるのでしょうか。

太平洋戦争(当時は大東亜戦争)の「開戦の詔勅」の冒頭には「天佑ヲ保有シ」と書いてあります。今考えてみれば、あの戦争は初めから天の助けを当てにしていたのかという事になりますが、今の日本はどうでしょうか。

核の傘を差し掛けてくれているのはアメリカです。アメリカが助けてくれるからと戦争の準備をしている、などと我々日本人は考えていませんが、外国から見れば、防衛費増強、敵基地攻撃能力を持つといった言葉が流れれば、日本に対するイメージは変わると考えた方が自然でしょう。

かつて、このブログで、バングラデシュにおけるISによるレストラン襲撃事件件をとりあげたことがありました。
この事件ではJICA関係の日本人7名が犠牲になりましたが、中の一人が、ISの戦闘員に対して「我々は日本人だ」と言ったそうです。しかしISの戦闘員は「日本も有志連合のメンバーだ」と言って撃ったという事です。

「有志連合」に名を連ねることが日本政府にとっては重要だったのでしょう。しかしそのために国際協力に従事する日本人7人の犠牲者を出すことになったのです。

日中間で極めてセンシティブな問題になっているが、尖閣列島の問題です。
これが日中間に刺さった棘のようになっているのは、当時の石原都知事が尖閣諸島を東京都が買い上げると言った時からです。

個人的にそうした考えを持っていてもいいでしょうが、権力を握った人間の発言は、その権力に従って大きなものになります。
結局それが尖閣国有化の議論になり、今の日中関係の最も面倒な問題になっているのです。

石原氏は都知事として、今の日本は平和憲法を持ち国民は平穏な生活を望んでいることを知りながら、結果は、都民、国民とっての多大な迷惑や心配を創りだしているのです。

政治家がトラブルメーカーになると国民は大変な迷惑をし、場合によっては大きな犠牲を強いられることになるのです。

岸田政権は、発足以来どちらかと言えば、トラブルシューターを心がけて来ているように感じられという見方が多いのではないでしょうか。

そうした感覚でいえば、この際、国防費を大幅に増やし、反撃能力とか敵基地攻撃能力の議論を積極化しているという事は、中国や北朝鮮にあるいはロシアにいかなる対日感情を持たせることになるかを十二分に考慮し、平和と平穏を希求する日本人の元首として外交力を駆使し、あらぬ誤解を招かないよう細心の注意を払うべきでしょう。

上にあげた2つの例のように、毛を吹いて傷を求める、あるいは藪をつついて蛇を出すような予期せぬ結果を招くことがないよう、冷静な判断を願うところです。

政府・自民党はいよいよ増税論議ですね

2022年12月07日 15時54分30秒 | 経済
ロシアのウクライナ侵攻は、何とか平穏を保ってきた世界に衝撃を与え、これからの世界は安心して平穏を期待できないのではないかという危機意識を齎しました。

日本もその影響を受けて防衛予算倍増、GDOの1%から2%へなどという雰囲気が政府・自民党中心に生まれています。
ウクライナ問題が終息すれば、また意識が変わるのでしょうが、今はあらゆる無理をしても防衛予算拡大が至上命題のような雰囲気です。

財源の検討もなく防衛予算拡大に走り、振り向けば、ついてくるのは「増税」です。

政府・自民党は、先ず富裕層への増税の検討に入ったようです。

富裕層という表現を使えば、今、急速に増えている低所得に悩む層の共感を得られるというのが狙いかも知れませんが、年間所得が5億円とか10億円とかいう人たちを狙ってみても税収は知れています。

解説によれば、5億以上の人は1600人、10億以上の人は600人という事だそうで、その人たちだけに負担してもらえれば、済むというものではないでしょう。

これ以上の層は富裕層と決めれば、それを超えてえいる人はそのすぐ下まで所得を下げるでしょう。富裕層課税ではなくて、きめの細かい累進構造がまともな考え方でしょう
はっきりと所得税の累進度の見直し(強化)と最初からいうべきでしょう。

そしてその際の基本理念は、政府の望む中流層の所得水準であり、その拡大を創出する支えになる所得税制という視点を見誤らない事です。

政府・自民党は、高所得の人は資産も多いから、これも一緒に考えるという方向だそうですが、資産課税はいろいろ問題がります。

所得が多いから資産も多いといっても蓄積した資産は所得税を払った後のものです。無駄遣いしないで蓄積した資産にまた課税では二重課税でしょう。
この辺の制度の立て方はかなり難しい所でしょう。ならば相続税強化で取りますか。

資産の大きい人ほど資産の増え方が早いという事で、これはキャピタルゲインによるところが大きいという見方が強いようで、キャピタルゲイン課税の考え方も出て来る可能性は大きいように思われます。

ならばます、利子配当収入の様な付加価値の配分と、マネーゲームでの単なる貨幣価値の移動だけのキャピタルゲインの峻別が必要でしょう。
今はともに20%の分離課税ですが、税は付加価値の増加にかかるという根本原則を考えれば、当然そうなるはずです。

更にキャピタルゲインにもいろいろあります。デイトレどころか秒トレのデリバティブ取引で何億儲ける場合もあれば、好きな会社に5年10年投資して、株価上がり何100万円のキャピタルゲインを得たといった場合もあります。キャピタルゲインだから同じ税率という事でいいのでしょうか。

最後に、日本がいくら防衛費を増やしても中国は日本の3倍の防衛予算です、中国を仮想敵国などと考える愚かさに気づき、中国と真剣に友好関係を築くことを考えるべきでしょう。
腹を割って話し合える相手に、突然戦争を仕掛けるなどはあり得ません。

そうすれば、増税分はそのまま格差社会解消のための予算になり、中流層の拡大を目指して日本経済社会は大きく変わるでしょう。
政権が何を選択するかで、日本の将来はいくらでも変わるのです。

平均消費性向上昇続く(2022年10月度)

2022年12月06日 12時57分35秒 | 経済
今朝、総務省から2022年10月分の家計調査が発表になりました。
マスコミでは、消費支出は前年同月実質1.2%の伸びで5カ月連続の増加と報じています。

1.2%は、6月以降の伸び率では最も低くなってしまいましたが、これは消費者物価が上がったせいで、名目では5.7%(2人以上世帯)で物価上昇に負けずに消費を伸ばしているという事でしょうか。

同じく今朝発表の毎月勤労統計では、就業形態計、全産業の現金給与総額は対前年同期比1.8%の伸びですから、賃金の伸びに比べて消費支出の伸びが高い状況が(統計の範囲が違いますから)垣間見えます。

このブログで間月追っている2人以上勤労者世帯の収支(10月度)で見ますと、可処分所得(手取り収入)が名目値で2.4%の上昇、実質値で1.9%のマイナスにも拘らず、消費支出は、名目5.1%、実質0.7%の伸びです。

矢張り収入に比して消費支出の伸びが大きいという状態が見えるわけで、その結果、2022年10月度の平均消費性向は70.0%と前年同月の62.8%に比べて1.8ポイントの上昇となっています。

平均消費性向の対前年比較

                       総務省:「家計調査}
図で見て頂けますように、これで今年に入って平均消費性向は1月と3月を除いて、すべての月で前年同月を上回っています。昨年までは、長期の低下傾向にコロナが追い打ちをかけたという感じでしたが、漸く何か風向きが変わってきた感じがするところです。

10月の平均消費性向の上昇は必ずしも大幅ではありませんが、コロナの第8波への警鐘が、多くの専門家から出ている中です。

政府の規制がほぼ無くなったという政策変更の影響もあるのかもしれませんが、多くの家庭(家計)で、少し現在の生活を楽しむことも考えようという気持ちが見えてきたとすれば、これは総体的にみれば、日本経済にとって大変良い変化ではないかと思うところです。

こうした意識変化をさらに進めるためには、それに整合した政府の雰囲気づくりも必要でしょうが、現状は国民の心配を募らせる様な「財源は後からきめる防衛費の増額」といったマイナスの政策が目立ちます。

政府の政策は、必ず国民負担を伴うものですから、ここは、政府に頼らず、民間労使が、消費を支える賃金の上昇、消費増による経済成長の加速、経済成長の成果の適切な配分といった岸田総理の言う「成長と分配の好循環」を民間の手で成し遂げて行くより方法はないような気がしています。

来春闘に向けての労働側の動きも活発化しているようですが、日本の経営者も、この辺りで、守りの経営から、積極性をもって人間という経営の最も重要な資源を支える家計の状況の改善のための分配の重要性に気付く必要があるように感じています。

日本国連安保理で「法の支配」の公開討論会

2022年12月05日 12時15分44秒 | 国際関係
日本は来年と再来年の2年間、国連「安全保障理事会」の非常任理事国を務め、来年1月は議長を務めることになっています。

日本政府は、この機を「世界の安全保障」のために役立てるという事でしょう「法の支配」をテーマにして公開討論会を開催するという方針を決めたとのことです。

このタイミングで、日本がこうした公開討論会を決めたことは、世界から最も歓迎されることではないでしょうか。
林外務大臣が議長を務めるとのことですが、日本としては、このタイミングは、いわば「絶好のタイミング」でしょう。公開討論会が成功を収めることを強く願うところです。

今、世界は、ロシアのウクライナ侵攻問題を抱えて、混乱状態にあります。
一国の中においても、世界全体においても、「法の支配」が貫徹しなければ、安全保障理事会の任務である「平和と安全の保障」は実現しません。

恐らく、国連傘下の世界の国々のほとんどは「法の支配」の確立を希望しているでしょう。しかし現実は小数ですが、「法の支配」を逸脱した行動をとっている国があります。

その中の大国、ロシアと中国は安全保障理事会の常任理事国で、「拒否権」を持っています。
第二次世界大戦を集結させ、その後の世界の安全保障を確実なものにするために、常任理事国5か国を決め、常任理事国には「拒否権」を付与したのでしょう。

それが、現状の国連の機能不全を齎しているという皮肉な結果になっているのです。
今日の現実は、常任理事国のうちロシア、中国という2か国が、共産主義の専制国家となり、国際司法の判断を無視する行動を重ねることになっています。

この状況を正さない事には世界の安全保障はありません。日本が主催する「法の支配」をテーマとする「国連の公開討論会」は、この状態をいかにして正していくかの世界の意見を聞く事の出来る重要な機会でなないでしょうか。

日本は、世界に率先して戦争の放棄を決めた国です。「世界の平和を誠実に希求する」という日本が主催する「公開討論会」です。

戦争をしないと宣言した日本が主催するからこそ、重要な意味を持つという事が、十分に世界に示される、日本が主催したからこその成果が期待されます。

世界の希求にこたえる「公開討論会」になるための舵取りを政府に期待します。

定年再雇用者の処遇は「ジョブ型」で

2022年12月03日 11時33分16秒 | 経済
戦後日本の経営者は従業員の身分制度を廃止、従業員是認を「社員」として雇用する方式を選びました。「社員」は基本的に期間の定めのない(定年まで)雇用です。

戦後の混乱の中で、雇用の安定が社会の安定の基盤という日本の経営者の気概が感じられるところです。

しかし、経済成長とともに次第に人手不足になり、農村からの季節労働者、主婦、学生などのパートタイマーも生まれてきました。

1990年以降の円高長期不況の中で、企業はコストダウンに迫られ、「社員」、今の正規従業員を減らし、非正規を増やすという方法を進めました。

こうして、いま日本の労働市場は大きく二種類に分かれ、新卒一括採用中心の正規雇用と仕事別に必要な時に採用される非正規雇用が6対4の割合で存在しています。

そこに今、政府は日本の雇用を「ジョブ型」にしようという「働き方改革」を進めようとしています。
「働き方改革」とは、端的に言えば、雇用は、総ての雇用を今の「非正規雇用」方式にしようという考え方で、ご承知のように、欧米ではこれが一般的な雇用の在り方です。

ここで問題になるのは、従業員の教育訓練を誰がやるかという問題です。欧米では職業訓練は大学や職業訓練施設で行い、職業能力を身につけて、初めて企業でその職に採用されるというのが「就職」です。

日本では職業教育は企業で行われます。採用は人間本位で、「良い」人を採用して企業が仕事をさせながら、人間教育から職業訓練まで全てをやるのです。

という事ですから、日本では、はじめから職業能力を身に着けているのは「高専」の卒業生か、学校(一条校)を卒業してから各種学校に通った人ぐらいです。

そんなわけで、「ジョブ型」採用などと言ってもそんな人はごく少ないので、企業は新卒一括採用を続けています。

それでは、いくら政府が旗を振っても「ジョブ型採用」はせいぜい転職者ぐらいしかいないので、なかなか進みません。

しかし、今現在、「ジョブ型採用」を本気で考えなければならない最適の分野が拡大しつつあります。それは、旧定年年齢まで勤め上げた定年再雇用の社員達です。

この人たちの処遇は、はたして適切に行われているのでしょうか。
従来は、定年時の仕事から離れ、賃金は定年時の何%といったことで済ませる事も多かったかと思います。

しかし、この人たちはそれぞれの職務(ジョブ)において、高い専門性を持つ「即戦力」です。企業としても、随分教育訓練コストをかけてきたのです。

その人達の持てる能力を適切に評価し、最大限に活用するべき「ジョブ型再雇用」の対象以外の何物でもありません。

この定年再雇用グループを最大限に活用することは、日本企業にとって、中途採用や外国人労働力の採用に当たっての「ジョブ型採用、職務配置、賃金決定などの雇用条件の決め方に熟達するための、最も適切な経験の場ともなりうるのではないでしょうか。

定年再雇用者の処遇決定を、今後の「ジョブ型雇用」方式に熟達するためのji実験場として活用するというのは如何でしょうか。

<蛇足> 以前にも書きましたように、中国や韓国企業にスカウトされるのは、時に種々問題を生じることもあるようですから。

装備はするが戦争はしない国へ

2022年12月02日 16時12分57秒 | 国際関係
防衛費大幅な増額、防衛能力の大幅アップが進むことになりそうです。
今年までの5か年の年29.5兆円から23-27年度の5か年間で、40~43兆円にふやしていくという方向が与党内で了承というのがマスコミ報道です。

これも、プーチンのウクライナ侵攻、習近平の台湾併合宣言、更には北朝鮮の大陸間弾道弾開発の進展などの影響もあってのことでしょう。

この三国のいずれも、独裁者の君臨する典型的な専制国家という事で、プーチンの例に見ますように、「独裁者は往々交渉には応じないという現実」に対応する行動という事になるのでしょうか。

日本は、戦争はしない、すべては外交交渉で解決するというのが本来の方針だったのでしょう。しかし、それでも一方的に戦争を仕掛けられた時には、国際法でも認められる正当防衛には全力を尽くす、という考え方の結果が、自衛力の保有になったのでしょう。

ところで、今回のプーチンのウクライナ侵攻は、従来の常識を崩壊させたのでした。
話し合いもなく突如として戦争を仕掛けたのです。

出来るだけ交渉で解決と考えるソフトパワー重視の民主主義国は、自らの都合だけで、戦争も辞さずというハードパワー信奉の独裁国家には交渉では対抗できないという現実が発生したのです。

正気の人間としてはあり得ないプーチンの行為は、最終的には、世界から徹底的に断罪されるべきでしょうが、現実い起きた事には人類社会は対応しなければなりません。

戦後の日本は、人間が努力すれば戦争などなくなるもののはずだから、日本はそのために戦争をしない国として世界に貢献していくべきというのが憲法の精神でもあるのでしょう。

多くの日本人は、それを善しとして、如何なる場合でも日本は再び戦争をすべきでないと考えてきました。

しかし同時に、日本人のなかにも、人類に争いはつきもので戦争がなくなることはない、日本も確り軍備をして場合によっては戦争もできる国であるべきだ、という、考えを持つ人もいないわけではないでしょう。
今回のプーチンのやったことは、戦争は止めよう、平和な世界を作ろうという考え方に、大きな不安感を与えたようです。

今のウクライナの状況を見れば、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」を持たなければ大変なことになるという意識も強くなっているように思われます。

今、地球人類が直面している問題の直接の原因は、プーチンのような人間を、今後も国際社会は作りだすだろうかという事のような気がします。

これは形式的民主主義が、独裁者を作りだしてしまったという民主主義の失敗の結果だったのでしょう。

プーチンのウクライナ侵攻問題は、民主主義と専制独裁国家の戦いだと言われていますが、問題の根源はグローバルな民主主義の徹底をいかにして実現するかというところに帰着するように思われます。

現状では国会の防衛力論争も必要でしょうが、日本としては、ロシア、中国、北朝鮮などの近隣独裁国家との関係正常化に「日本の独自性」を前面に取り組むことを、もっと積極的に進める必要があるのではないでしょうか。

そこから学ぶ事は多いでしょうし、防衛力の議論も、より実態的なものになるような気もします。

平均消費性向の長期推移をみる

2022年12月01日 20時17分35秒 | 経済
このブログの1つの大きなテーマとして、総務省が毎月発表する「家計調査」の平均消費性向(2人以上勤労者世帯)を追いかけるという作業があります。

理由は、アベノミクス以来、政府は「消費不振」による経済成長の制約を大変気にして、消費を増やして経済の活況を取り戻すことを目指して、いわゆる官製春闘を主導し、コロナの中では、これまたいわゆるGoTo○○などの諸政策、更にはインバウンド誘致まで一生懸命です。しかし、なかなか消費は伸びません。

そしてその背後には「平均消費性向の低迷」があるという事は明らかでが、状況はかなり深刻です。長期の推移を追ってみたのが下の図です。

      平均消費性向の長期推移(2人以上勤労者者世帯:%)

                  総務省「家計調査」

収入が少なく生活がぎりぎりなら貯金などできないから消費性向100%、収入が多くて使い切れなければその分は貯蓄となるので消費性向は下がります。
その中で、将来収入が減ったり無くなったりするときに備えて貯蓄するという場合も消費性向が低くなります。

今の日本の場合はそれに該当するようで、なかなか収入が増えず、減る危険も感じるので、各家庭は財布の紐を締めて出来るだけ貯蓄に回すようです。

図で消費性向が上がっている所に「%」の数字が入っていますが、高度成長期は先行きが明るいので消費性向は高く9割近くありました。1973年に石油危機が来て国民は心配になって消費を削って貯蓄したようです。

石油危機克服に成功した日本は「ジャパンアズナンバーワン」に向かって進み国民は安心して消費景気を謳歌しました。

しかし1985年、「プラザ合意」で急に円高になり、生活防衛が始まりました。その後バブル景気もありましたが、地価も上がり住宅ローン返済(これは貯蓄になります)負担もあって消費性向はあまり上がらず、その後はバブルの破裂(1990‐91年)と少子高齢化の心配で皆貯蓄に励むようになって消費性向は2000年まで下がりました。

その後リーマンショックまでは、日本経済も何とか一息ついて消費性向も持ち直したようですが(2002‐5年は手元に資料がなく空白で済みません)、リーマンショック(2008年)で日本経済は極端な円高で瀕死になりました。ここで消費性向が上がっているのは家計に貯蓄する余裕がなくなったこともあるようです。

そしてアベノミクスに入るのですが、円安になって企業業績は上がり賃金も少し上がりました。そこで各家庭は一斉に「将来のために、今のうちに貯蓄をしておこう」という事でしょうか消費性向は急激に下がったという事のようです。

「コロナのせいでお金の使い道がない」という面もありましたが、実は今年に入って消費性向は上がって来ています
余り節約をしてきたので、節約疲れなのかもしれません。

それならそれでもいいようです。企業の利益は順調ですから、来年の春闘では賃上げしてもいいと経団連がいい、連合も高めの賃上げ要求を出すようです。

ここで上手く家庭(家計)のムードが変われば、日本経済は順調な経済活動に入れる可能性が出て来ます。
消費が増えて、景気が良くなれば、みんなの心も明るくなるでしょう。その促進のためにも、コロナが早く収まって欲しいものです。

因みに、平均消費性向が2%上がれば。経済成長率が1%上がるぐらいの勘定ですから昔の平均消費性向に戻れば5%成長ぐらい楽に出来そうですね。