PEN-Fを新品で購入されて現在でもお持ちの筋金入りのご常連ファンの方ですが、最近はコンパクト系を極められています。2台来ていますが、ご依頼は真ん中の三光商事の頃の特徴を持ったPEN #1448XXですが、ご心配は裏蓋のマーク下にMADE IN JAPANのホットスタンプが無いということ。う~ん、私もPENの研究家ではありませんので実際に自分の目で確認したことしか言えませんね。しかし、試料数が少ないですから断定的な言い方は避けます。で、部屋で目に付いた個体を見ましたが、左の#120648は入っていますね。右の#140783は入っていません。これだけ見ると12万台頃は入っていて、14万台頃には省略された可能性がありますね。普通に考えれば、生産が軌道に乗って輸出を検討し始めた時に製造国名を追加するのが自然とも思いますが、今回は逆の経過になっています。諏訪工場製PENでは底蓋部分にMADE IN JAPANがプレスされていますが、今回の個体はそれがありません。私が思うに、確かにOLYMPUS TOKYOとMADE IN JAPANのダブルネームはくどいようにも感じられます。TOKYOが入っているから良いかと省略したものの、やはりそれはまずいと底蓋にプレスされた? さぁ、当時のご担当にお聞きしなきゃ分かりませんね。あくまでも推測の域を出ません。
三光PENの定義ってどなたが言い始めたのか知りませんが、私も先生から聞きました。しかし、それは主に外観の差異を指摘したものでしょ。この頃の製品は外観だけでなく内部の仕様も試行錯誤でロットごとに変更されているのです。その意味では、この個体はかなりスタンダードなPENに違い仕様です。但し、部品の加工精度が甘い気がします。ピンセットのウェーブワッシャーは初期の個体には入っていません。(下のギヤの形状も違う)ワッシャーが入るように変更された初期でも材質がスチール製です。すでに巻上げダイヤルのカバーは2本のビスによるネジ留め式になっていますが、初期は熱カシメタイプで分解は出来ません。
すべて分解をして洗浄してありますが、その分解が一苦労。初期のナットなどはスリ割りの幅が薄い傾向にあり、PEN-S用に調整した工具では合致しません。また、組立から長期の時間が経過していますので、簡単には緩んでくれないのです。改めて部品を点検すると、この個体はへこみなどもなく、各部のコンディションは良いことが分かりました。
シャッターユニットは、米谷さんは本来使いたくなかったバリオタイプです。この頃は、スローガバナーなどもユニット設計ではなく、地板に一つずつギヤなどを組み込んで行くという旧式な設計思想。構造も簡単ですが、それが幸いしてPEN-Sのシャッターのような気難しさはなく、殆どメンテナンス無しで現在も作動しているものが多いのです。
巻き戻しダイヤル関係の部品は、後にスタンダードと大きく異なる部分ですね。ダイヤル本体も裏面の肉抜きもなく重いのです。頭の中にある形を試作的にそのまま図面に起こしたような設計。当時も、販売価格が安価なカメラのため、コストを意識した設計をされたばすですが、結果的には意外に工数の掛かった設計となっています。ですから、すぐにコストダウンのため変更されます。私個人としては、メカニカルなノブなど気に入っているんですけどね。
ファインダーブロックのビス孔の1ヵ所が折れていました。硬質プラスチックの材料の劣化とトップカバーとの接合面の形状が合っていなかったのでしょう。接着で再使用とします。内部の樹脂製対物レンズなども非常にきれいな状態です。
三光の特徴として良く言われるレンズ外周の「Flash¬」レリーズボタンの横筋、フィルム位置マークの非貫通、片耳ストラップ、巻き戻しダイヤルなどは揃っていますね。その他には、駒数カニ目ネジ孔非貫通、指針金メッキ、裏蓋底部リベットの頭の形状(丸)なども異なっています。初期の特徴は有していませんが、間違いなく三光PENと言って良い個体と思います。
次はPEN0S 2.8 #3688XXですが、すでにオーナーさんご自身でメンテナンスをされています。さすがエンジニアさんですので、作業はまじめで正確ですね。あとは、数をこなす経験があれば良い修理が出来るでしょう。で、レンズ部の絞り機構ですが、イモネジ部にヤスリ掛けの跡があるのでジャンクとのことですが、これで良いのですよ。苦労してナットを分離した形跡がありますが、不都合がなければ、ここは分解しない方が良いと思います。一度分解すると、どうしても締め込みが甘くなって、絞りリングを過度に回したりフィルターを外す時などに緩んで絞り指標と▽が合わなくなってしまいます。
メカとしては特に問題はなく、同機種が続きますので画像は撮りませんでした。しかし、製造番号と中身がちょっと疑問がありますね。シャッターの完成時期からすると40万台以降のような気もします。但し、過去の履歴を見ると、製造番号と内部の製造日は必ずしも正数順に並びません。途中でユニットの入れ替えなどの後天的な原因もありますが、自動車の車台番号のように、仕様変更の時期を正確に特定すること(この号機からというような)は無理なのです。巻き戻し軸のガタを調整するワッシャーも厚み(枚数)が足りませんので、この辺に何に原因が見え隠れしていそうです。この個体はシュー下に記入されているはずの数字(赤字)が消されています。(僅かに残っているが判読不明)シャッターユニットの製造捺印とともに、この個体の履歴を推理する重要な手がかりですから、不用意に消さないように気をつけなければなりません。私は、洗浄時は充分注意をして、判読不明となりそうな捺印は予めルーペで読み取っておいて、洗浄後、新たに捺印をしています。しかし、私の手元に来た時点で、すでに消されていたものは処置なしで、私の過去の資料から推測する以外にありません。カメラ自体は非常に調子良く仕上がっています。