今日は2月14日とのことでバレンタインデーだそうですね。私にも義理チョコが来ました。これはチョコレート会社の陰謀ですわな。私が高校生の頃から始まったらしくて、それを知らない私としては貰っても、当時はヤマハのAT1に夢中で、何の意味だか分からなかったですね。で、このPEN-FT #3653XX。おぉ、良い頃の個体ですねぇ。しかし、巻上げレバーがこの状態から動きません。露出計も不動です。さて、どんなことになっているのでしょうね。
ご覧のように、吊輪イヤーが緩んでおり、片方のビスが欠落しています。これはオーナーさんも指摘していらっしゃいって、これが悪さをしているのか? とのことでしたが、経験的に状況からその可能は高いですが、目視ではビスは発見できません。
まず、前板を分離しても巻上げレバーは動かないのでリターンミラー関係ではない。次にシャッターユニットを分離してチェックするとこちらも問題なく作動する。残るは巻上げユニットしかありませんね。と言うことで分離して見ると・・あら・・いたいた。矢印の部分に挟まっていました。この場所は分解しないと見えないのです。まぁ、故障の原因が分かって良かった良かった。
では、洗浄したダイカスト本体から組立てて行きますよ。まず、ビスが脱落してぐらついていた吊輪イヤーにエポキシ接着剤を塗布してビス留めします。FTの場合、吊輪イヤーが緩むのは決まって巻上げ側なんですね。これは、ダイカスト本体に取り付けるビスの位置が影響しているようです。
吊輪イヤーの取り付け、蝶番部分のモルトの交換、電池室のやり直し(リード線交換)スプロケット軸の組立が終った状態。
後期のシャッターユニットは磨耗も少なく程度は良いと思いますね。これなら巻上げも軽快となると思います。メインのバネは、しばらく前から従来使われていたバネをホールドするリングが無くなり、その分だけバネの条数が増えています。耐久性の向上ですね。また、この頃になると、チャージギヤは従来のカシメによる組立ではなく、ナットによる組立式となります。
スクリーンを表からルーペで観察すると、画面全体に白い点々が見える。しかし、スクリーンではない。プリズムを分離してみると、ご覧のようにカビ痕が点々とあります。ファインダーを通して見ると、これが黒い点々となって見えます。これは稀に見るカビですが、古いものは清掃が出来ないものもあります。今回は、ぎりぎりセーフかなぁ・・この個体も長期放置組みでしょう。
36万台ですからCdsとメーターは生きていましたが、どうしたことか基板に問題がありました。パターンが腐食して導通抵抗が増大していましたので作り直してあります。ほぼ組み上がってセルフタイマーレバーを作動させたところ、ご覧の位置で停止してしまいます。これは、左の↑のレリーズボタンとの同調を調整する部分が開き過ぎでクラックが入る寸前まで広げられています。設計変更前はネジ式でしたが、変更後は板材を開いて調整をする乱暴な方法になっています。しかし、調整範囲は自ずと金属の曲げられる範囲であって、それ以上に曲げる必要がある場合は、どこかに調整の不具合があるはずです。お話しが逸れましたが、それによって右の↑部分でタイマーからのレバーとの連携が狂い、噛み合ってしまう状態となっています。過去に分解された方は何をしたかったのかなぁ? 全体を把握出来ていないと、トンチンカンな作業をすることになります。
まだ他にあるのですけど、意外に長くなりましたので止めておきます。出来上がってみれば36万台のきれいな個体となりましたが、元はジャンクで部品取りとして入手をされたそうです。元々の不具合もあったのでしょうけど、わかんない人がいじって返ってジャンク度を上げてしまった典型のカメラ。こういうのは自然故障より手間が掛かって工賃は一緒なので疲れます。まぁ、ジャンクから1台復活出来て良かったですけどね。