今日、明日と定期の検診に出掛けていまして、作業が進んでいません。帰宅してからの作業です。まとまった時間が取れないときには時計をやりますね。この時計は、シチズンのセブンスターV2と言うモデル。なにかタバコの名前みたいですが、シチズンは、スターとかセブンなどが付くモデルが多いです。この時代は、数字、特にセブンがナウい言葉で、テレビのヤング720とか、東芝のトランジスタラジオがヤングセブンだったですよ。ジェリー藤尾がテーマ曲を歌って、海にヨットが浮かぶ、そんなシーンのコマーシャルがあったっけ。♪ヤンヤンヤンヤングセブンは七色の・・というやつだ。お話しが逸れました。で、いつもセイコーの時計を分解している目には、非常に難しい構造ですが、自動巻き機構などはがっちりとした作りで、これはセイコーよりも高級なメカに見えますね。セイコーが、極力、部品点数を減らして、ダレでも組めるように設計されているとすると、シチズンは、技術者がやりたいように設計したような機械かな。とにかく、メーカーによって、これだけ設計思想が違うのは興味が湧きますね。この個体は、どういうわけか、過去にカレンダーのメカが取り外されて欠品しているため、カレンダーが動かないというものです。困ったことに、カレンダーの位置が、文字盤の12時に出る特殊なタイプですので、部品の調達も簡単ではありません。ピンセット先の回転錘のベアリングがかなり磨耗をしてガタが大きいです。
ピンセット先の日送り車と伝え車も欠品していますので、調達した部品で組んで行きます。
日車を載せています。こちらの部品とバネも全て失われていました。どこかの部品に不具合が生じたために、関連部品を全て取り去ったということでしょうか? 日車押えのビスも欠品しているところがあります。日車は、12時位置で数字が正立して見えるスペシャルですね。
裏返し。セイコーとは全く異なったレイアウトです。香箱車の下にも歯車が入ります。
これで組立は完成です。受けが1枚ものなので、ホゾを入れるのには少々手こずりました。右下部分が自動巻き機構。剛性が高そうで、セイコーの56系とは段違いです。慣れていないこともありますが、シチズンの機械は、非常に高級な作りで、組立の難易度も高いと思います。でも、セイコーを抜けないのですよね。ケーシングは、明日やりますね。
カレンダーのテストをしてみます。この機械は、日車と曜車共、瞬時に切り替わります。なかなか高級な性能ですが、メカは複雑になります。で、問題が発生。日車の早送りが空回りをする時があります。分解ししてみると、カムの位置が低くて日車の歯と噛み合いません。原因は、カムの下にある歯車と地板が回転摩擦で磨り減って低くなっているためのようです。仕方がありませんので、スペシャルワッシャーを製作してゲタを履かせて対応しています。画像の日車に載っているカムは、この個体のカムより厚みが厚く作られています。たぶん、ここがウィークポイントで改良されているのではないかと思います。そもそも、この個体がカレンダー機構を取り去られた原因は、日車の早送りが出来ないために、用を成さないために撤去されたのではないかと推測します。
曜車をセットしたところ。SUNDAYの赤が随分と退色していますね。顔料が悪いのか、セイコーでは珍しい劣化具合です。傷も多く、中央のCリングも変形が激しいですから、あまり丁寧な分解は受けていない個体です。
文字盤を取り付けて針を入れますよ。こちらも、変形をしており、針同士のクリアランスを確保するのが難しいです。
ケースに収めて、回転錘を取り付けています。ベアリングのガタが大きいので、粘度の高いオイルを塗布してあります。
で、こんなお顔をしている時計です。12時の位置にカレンダー窓がある、珍しいデザインですね。セイコーの場合は、3時位置にコンビで配されているのが基本ですが(その他もあります)シチズンは、いろいろな位置にデザインをするのがお得意のようですね。手巻き付きで、カレンダーは瞬時の切り替え。ケースの風防もガラスですから、セイコー5よりは高級なメカですね。
最初にお書きしました「東芝ヤング7」の唄をYouTubeで見つけました。50年ぶりぐらいに聞いて感動しましたね。また、作詞は前田武彦氏だったとは知りませんでした。永六輔の土曜ワイドにゲスト出演をするようになってすぐにお亡くなりになったのは残念でした。歌手のジェリー藤尾氏は、いろいろ問題を起こしたのか、最近は見かけませんね。「遠くへ行きたい」は彼でなければピンときません。ソノシート音源の4分ぐらいから聞いてみてください。いまだに記憶に残る良い曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=Os1bb1P4OYc
シチズン・セブンスターは、大阪のご常連さんのお友達の時計だそうで、時計屋さんに修理依頼をしても断られた時計ということです。純正部品が入手出来ない現状では仕方がないのでしょうね。で、ご常連さんからも、いつものセイコー、スポーツマチックのご依頼を頂いていましたので、手持ちの中から文字盤が変わっている珍しい個体を選んで仕上げています。機械の組立は、いつもと同じなので省略。この個体は、機械は、一度のO/Hも受けていないきれいな機械でした。文字盤にインデックスの無い、変わったデザインです。針を取り付けますが、インデックスが無いので、位置が合わせにくいですね。
ケースは小傷があるのは仕方ありませんので、リューターで研磨してあります。日送りボタンの穴には大量の汚れが詰まっていましたので、超音波洗浄をしてあります。グリスを塗布してボタンを取り付けます。風防ガラスは細かなクラックと黄変がありますので、交換したいところですが、すでに純正部品と社外部品共、入手は不可能でしたので、他の機種の流用品を手配してあります。風防が到着後にケーシングをします。