今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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とくにタイトルが思いつかないPEN-FT

2015年03月06日 20時40分52秒 | ブログ

また、PEN-FTに戻ります。#3581XXと後期型の良い頃の個体ですね。1970-7月製になります。70年代って聞くと、僕らの年代では、つい昨日のことに感じますけどね。バイクのマッハⅢに乗り始めた頃です。あの三気筒の変則的な排気音が好きでした。すっ飛んで行った後には、煙がたなびいているだけってやつ。お話が逸れちゃいました。F系が続くなぁ。この個体は、シャッタースピードが遅れるとのお訴えでしたが、テスターで継続して測定しても、安定していて症状がありません。巻上げは30万台としては重い感じでファインダーも暗い。では、オーバーホールということにします。底蓋に打痕がありますので、軽く修正してから作業に掛かります。

そもそも、過去に分解歴あり機で、セルフボタンの分解キズ、マウントネジのスリ割も笑っています。

 

ターミナルの半田付けがやり直してあって、遮光用のテープが取り去られたままになっていますね。とくには問題は無い個体だと思います。

 

 では、すべて洗浄をしてから組み立てていきます。この時は何も書くことのない平和な個体と思ったのでした。スプロケット上ギヤを取り付けます。ネジのスリ割りが大きいですから、適合したドライバーを使ってスリ割りを痛めないようにします。

シャッターユニットは35万台ですから最終の仕様です。ギヤと軸の摩耗は少ない方です。チャージギヤは薄ナットで組み立てるタイプ(最終)です。特に問題は無し・・と。

 

と思ったらありました。テンションシャフトギヤがおかしいのでルーペで拡大をしてみます。あら~、ギヤの歯数枚が潰れていますね。

 

裏側から。12時から2時あたり。このようなケースは経験がありません。使用過程での摩耗変形ではありませんね。観察すると、軸にギヤをカシメる工程でミスをして歯の部分を潰してしまったようです。部品の受入検査では抜取検査のため、試料中で見つからないと良品として採用されてしまいます。普通は組立工程で除外されるのですが、今回はそのまま組まれてしまったというケースでしょう。幸いシャッタースピードは正常ですので完成検査でも発見されなかったようです。

35万台と比較的新しい個体ですが、シャッターダイヤルのホールド部のみが不釣り合いに腐食しています。マウント裏も腐食の粉が吹いていますので、水の侵入が多かったのでしょう。

 

出来るだけ研磨をして取付け。(交換した方が良かったな?)ハーフミラーも湿気が多く劣化が進んでいましたので交換しています。気になったリード線の半田付けをやり直して今日はここまでです。

その個体が置かれていた環境を推測するのに、私は表面処理のない真鍮の部品の劣化具合を見ることにしています。この個体は、シャッターダイヤル、セルフタイマー(ユニットも)などに酸化が進んでおり、画像の駒数板留めネジも真黒に酸化しています。(ネジ部と比較)また、湿気の多い環境に置かれた露出計(Cds)は劣化が進んでいると感じます。35万台でしたら8割の個体で露出計は正常に動いているはずですが、この個体の露出計は約3段ほどマイナス傾向です。

ということで、何も問題のない平和な個体と思いましたが、いろいろあるものですね。

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