最近PENが少ないよね。でも同じオーナーさんのPEN-Wが2台来ました。どちらも普通のコンディションですが、定番のシャッター不調やレンズの汚れなどがあります。また、過去に分解歴があります。
まず1台目は製造が古い#1026XX(1964年9月製)の方からやろうかな。過去の分解時にシボ革を再接着されていますが、接着剤が強力で接着層が厚くなるものを使われています。すでにシボ革が厚くガビガビになっていますので、これを再び接着するのはイヤですね。ということで溶剤で溶かしておいて楊枝で絡めとります。尚、剥離が乱暴でシボ革が切れているところがあります。
裏蓋底部はオリジナル塗装の上から塗装されています。アルコールで拭き上げると落ちてしまいました。すべて洗浄します。
シャッターも再組立されていますが治板が汚れ放題で組まれています。なにやら鉛筆で文字が書かれているような・・これも完全に洗浄をしてから組み立てます。
本体も洗浄しました。初期の頃の個体はスプロケットはアルミ製が使われています。
特に問題は無いのでここまで組みました。シャッターは快調です。
使用されている接着剤から、このカメラは過去にプロによってオーバーホールされていると思われますが、それにしては分解時に何故ここまで傷だらけにするのか? と思うのです。
初期生産の個体にしてはレンズの状態は悪くはありません。もちろんすでに清掃をされていますのでコーティングは無くなっている可能性はあります。
定番の後玉のバルサム黄変が殆んどない。部分的に白濁していますがこれは清掃出来ません。
次の個体#1162XXですけど1台目より生産があとの1965年3月製です。(シャッターは2月製)作業は同じなので元のコンディションを載せておきます。駒数窓はかなり曇って汚れています。
ファインダーの状態も同じです。この個体は過去に分解歴がありません。
シャッターも当然未整備ですので、このように作動がゆっくりで正しいスピードが出ていません。
では、洗浄した本体を組んで行きます。スプロケットは樹脂製に変わっています。⇧の方のアルミ製と比べてください。なんかチープですね。コストダウン。
シャッターは問題ありませんでしたが、本体に取付けるネジの1本がネジ山不良でスムーズにねじ込めません。分解する時も少し重い感じがした? 忘れました。←の部分のネジ山が潰れ気味です。未分解のはずですから元々のネジ不良でしょうかね。良品と交換して組みます。
ファインダーレンズの接着と古い接着剤の除去。また、駒数ガラスを研磨してあります。クラックは入っていますけどね。これは持病なので気にしなくて良いです。
え~と、問題はレンズなんです。かなり曇って汚れも多いようです。
後玉のバルサム黄変もありますが、中玉に水滴状の付着物があります。経験的に拭いてみると本当に液体で清掃が可能の場合もありますが、放置が長い場合は清掃出来ません。レンズ(ガラス)の組成は本当に不思議で分かりません。
あぁ、シャッターは未分解でしたがレンズは過去に清掃されていますね。コーティングが剥離しています。
問題は前玉のバルサム劣化です。曇りや黄変はバルサムの劣化なので一度剥離をして貼り直さない限りきれいになりません。形だけ荒業で貼り直すことは出来ますが、光軸の問題などもありますからレンズ屋さんの領域です。
水滴状の汚れはコーティングに付着した水分で、清掃で薄くはなりましたが手遅れのため完全には清掃出来ません。こちらの個体の方が製造は5か月ほど新しいのですが、レンズの状態は使用過程での保管の状況によるところが大きいです。
私の作業は機能の改善だけではなく、操作の滑らかさなど官能性能も重視をしています。美観も重要で各部品は汚れを磨き上げて組み込んでいきます。
2台目は右側ですが、レンズが白内障状態なので撮影には影響があるのが残念ですね。