え~と、なんて言うか調子の悪いPEN-Fが2台来ましてね。片方は中古カメラ店で購入されて、もう片方は元某カメラメーカーのリペアマンさんから購入されたとのことですが・・ぱっと見、何もしていないように見えますけど・・
まず初期のユニットが使用されている#1164XXから見ます。これは・・少し前にもお書きしましたが、中古店様には一通り整備をしてから販売するお店と、不具合のところだけ直して(不具合が無ければそのまま)販売されるお店がありますが、この個体は販売時には不具合が無かったということでしょうね。
しかし、このホコリは・・使われているテープがオリジナルではないですし、配線の通し方も違いますから手を入れてはいるのでしょうね。それにしても・・
シボ革は乱暴に剝がされていますね。こんなに傷を付けなくても剥がせるのに・・
まず、シャッターユニットを見ます。ブレーキは固着しています。これは作動に影響がありますので分解でOリングを交換します。
古いオリジナルのモルトを剥がさずに、その上から新しいモルトを貼ってあるので剥がすのが大変です。
で、やっとボディの洗浄を終えてモルト貼りから組み立てて行きます。
シャッターユニットにもう一つの問題。事前の点検でシャッターダイヤルの回転が重くなる部分がある。点検すると、調速カムが完全に奥まで入っていないため、その奥のクリック板が遊んでいてクリックバネがカム山から外れるためでした。
奥まで入らない原因は、画像のようにカムはシャッタースピードの調整のために工具で潰されていて、それによって内径が変形↖↗して真円でないため、段付きシャフトに入らなかったものです。ヤスリで内径を修正します。
これは工場での組み立て不良です。1964年5月製の個体ですから約60年ぶりに作業ミスが暴かれたということですね(笑)元のネジロック位置から半回転ねじ込まれたことが分かります。この分では2台続けてのUPはきついので2回に分けますね。
ブレーキはリングナットに緩み止めのポンチが打たれていますので簡単には分解できませんが何とか分解が出来ました。Oリングホルダーの内側はOリングのゴムにより激しく腐食しています。錆によって内径が太りOリングが持ち上げられて固着します。
内径を研磨して錆を除去しました。Oリングを嵌めてブレーキの利きの調整をします。
前板のリターンミラー関係をメンテナスします。過去にシャッターフリーズで修理をされたとのことですが、恐らくリターンミラーユニットのテンションを上げられていますね。角度にして90°(時計で15分)程度強く張られています。やむ負えずテンションを上げる場合もありますが、その前にフリクションを低減させる処置が先と思います。
PEN-Fはプリズムのマット面がピント面になります。シミのような汚れがあって、普通のクリーナーでは取り除けません。
点検していくと、リターンミラーの上側のピポットネジが緩んでいます。通常はネジロックされていますので緩みませんが、何らかの都合で緩めた後にネジロックをしておきませんと必ず緩みます。
そもそも、初期型ですからリターンミラーの2片にミラー抑えのネジがあるはずですが、テープが貼られていて、それを剥がすとネジがありません。観察するとミラーは純正ではありません。PEN-F系は厚みが特殊で0.9mmですが、普通の1mmで貼られているようです。これですとファインダー像の無限調整が出来ないはずです。(調整の形跡はありません) リターンミラーを張り替えるためにピポットネジを緩めたものと思われます。リターンミラーは新品と張り替える必要があります。まぁ、問題の多い個体ですね。
リターンミラーの接着剤の硬化時間がありますので付属のレンズをメンテナンスしておきます。F用の40mmとしては程度は良好ですが、ヘリコイドグリスの流化により絞り羽根に油が回って正常に作動しません。過去に分解歴がありますが、オーナーさんが「使用中にネジが落ちて来た」とのことですが、あ~これね。
絞りユニットの脱脂洗浄とヘリコイドグリスの交換をしました。レンズを清掃して組み立てて行きます。紛失したネジ1本は添付されていないので当方で追加して組みます。
全反射ミラーは「新品交換指示」でしたが、予定外にリターンミラーの交換をしましたので、費用がかさむので私の判断で再使用としました。
他の方の手が入った個体は思わぬところでトラップがあったりして工数も通常よりかかりますから実は苦手です。では、2台目にかかります。
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