笹原PENさんから突っ込みで時計が来ましたので続けてやります。笹原PENさんから送られてくる個体はお世辞にも程度が良いものはないのでGSで一難去ってまた一難というところです。セイコー・ゴールドフェザーという1961年4月製造の第二精工舎製の高級薄型時計です。25石でケースは14K GOLD FILLEDなので、EGPよりはメッキの剥げは少ない? のですが、艶は全く無し。おまけに金属ベルトが装着されていたのでラグが削られていて、強度の弱いラグも大きく変形をしている状態です。この頃の非防水ケースは革ベルトが基本です。秒針も落ちているし・・針は細く、当時の紳士向け時計ですね。
中身の機械は水の侵入はないのですが、ゼンマイの先端の二枚部分が切れているので、車のタイヤのスローパンクチャーのように、ゼンマイが一気に解放はされないが、ヨロヨロと動いてトルクが掛からないという状態。手持ちのゼンマイを探さなくては・・
確かに薄いですね。それは良いとして、ラグが曲がっているのです。金属ベルトでねじられて変形をしたものです。発売当時は非防水の時代でしたから革ベルトが普通でしたが、たぶん70年代近くの防水時計の時代に途中から金属ベルトに替えられたのでしょう。勿体ないことをしてくれました・・
金属ベルトにねじられたのでラグの片側が大きく変形しています。しかも両側ともです。普通に戻すために曲げると、まず間違いなく折れてしまいます。
普通じゃなく戻しました。じゃあ、機械も治そうかな。まず、ケースの緑青取りと研磨です。14Kですが、慎重にカドを磨かないようにして研磨をします。
研磨終了。裏蓋も14Kですね。本当は風防と竜頭は交換した方がベストですが、笹原PENさんの場合は、なるべくオリジナルのままという主義なので磨いて再使用とします。
すべて分解洗浄を終えてゼンマイも交換してあります。
このモデル用に開発されたcal.60Aは厚さ2.95mmと非常に薄いですが、一般的な機械とは輪列配置が全く異なります。コハゼがこんなところに付いています。
いつもの景色とは違いますね。
外観よりは機械の状態は摩耗や腐食も少なく、悪くはないと思いますね。しかし、ゼンマイのトルクの関係か、ガンギとアンクルのつめに注油の有り無しで全く作動が変化しますね。
クロノス系のダブルブリッジのテンプ受け。組立は面倒ですが、精度は良いのでしょう。
日の裏側は何もないのでシンプルです。地板に少し腐食があります。
文字盤は高級なSD文字盤も存在するようですが、この個体は普通のものです。問題は針でした。短針と秒針は孔の拡大で全く固定出来ない状態でした。少し締めて何とか留まりました。
「世界一薄い中三針腕時計」がキャッチフレーズだそうです。しかし、それほど軽い機械と言うわけではなく、ゴールドフェザーの「羽根」は軽いということではなく、薄いという意味でしょうか? この個体の風防は交換されてそれほど古くはありませんでしたが、厚みが少し厚いタイプですので、折角の薄型がスポイル気味です。薄い風防に交換すれば、もっと薄さが際立つでしょう。
左からマーベル、クラウン、ゴールドフェザーです。ゴールドフェザーの金の色が薄いイエローゴールドになっていることが分かります。品が良いですね。J14060は当時の大学初任給と同じぐらい高価な高級時計だったようです。時計の世界ではジャンクのことを「ガラ」というそうですが、ガラから復活することが出来ましたね。