#2401XXと1964年2月製と思われる個体ですね。ご常連のオーナーさんは、「年代を考えると異様にきれいな個体」と心配をされています。そうですね。巻き上げが重くガチャガチャ感がありますけど素性は悪くはないのではないでしょうかね。「開けてびっくり玉手箱状態でないことを」とのことですが、それは無いと思いますよ。長年見て来た勘ですけど・・
あまり使われていないきれいな外観ですが、駒数窓レンズが故意に傷をつけられて脱落しています。何でこんなことするの?
シャッター羽根にクラック? と心配しましたが、キズですね。幸い貫通の光線漏れはないです。
ボトムプレートを外してと。。うん、きれいじゃん。分解の形跡はありませんね。
では、開けてびっくりトップカバーを開けて・・駒数レンズの脱落は良いとして、他は問題ないかと。
PEN-Fのシンクロターミナル線は接眼プリズム部で透明テープで留められているのですが、それは外れていますね。駒数レンズが内部で脱落したので、トップカバーを開けて見たものの、そのままにしてカバーを戻した? みたいなところですね。
脱落したからと言って、腹を立てて鋭利なもので傷をつけなくたって良さそうなものですが。これ力が入っていますのでキズが深いです。
表面を削って研磨。こんなところですね。キズは残ります。これから接着をします。夜目遠目ということで。
おめでとうございます。すべて分解しましたが、特に問題の部分はありませんでした。ほぼ未分解の素晴らしい個体になる予定の素材。
本体もすべて洗浄して組立を始めます。Fの場合、駒数カウンターの復帰不良が起きやすい構造でして、このギヤの回転がスムーズでないのと後ろのスプールギヤの小ギヤの回転不良が原因。
シャッターユニットは非常に良いと思いますよ。ゴムのOリングによるブレーキも利いています。Fの場合、ブレーキが利いているか否かを確認する方法は、巻上げ2回目の最後のところで、「コクッ」と抵抗感があればブレーキは利いている。スカスカならば利いていないと予想が付きます。現存機では、Oリング自体を取り去られている個体も多いのです。ご自分の愛機を確かめてみて。
テンション軸には線状痕は多めですね。
全体的には非常に良いコンディションの個体ですが、古いから仕方がないのかなぁ、リターンミラーの腐食が目立っています。実用上は使える範囲ですが。この個体の頃はまだ初期型からのミラー抑えがるんですね。
「交換せよ」とのご指示ですのでミラーを分離しました。
新しいミラーを取り付けました。
前板に取付け完了。
ファインダー像に黒点がある。Fの場合、プリズムの腐食が原因の事が多いのですが、この個体の場合フレネルレンズの内側に有機物のような付着物が付いています。これ、結構見かけますが、虫の卵じゃないですよね。清掃をしても石化して落としにくい場合もありますが、無理に擦るのは厳禁です。
PEN-Fとしては良好な接眼プリズムです。2面のコーティングはアイビース側のみ拭き傷(仕方がない)ありですが内側はほぼ完ぺきです。殆どの個体では遮光テープの糊によりコーティングが劣化しているのです。
全反射ミラーは比較的良好ですので再使用とします。当時のメッキより現代(当方)のメッキの方が反射率は高いですけどね。波長の問題もありますが・・
駒数計、レンズマウントを付けてメカは完成。リターンミラーを貼り替えていますので、ピントの再調整をします。
オーナーさんからは「PEN-FTは何故2回巻き上げを止めたのか?」との疑問を頂いていましたが、基本デザインの寸法が決まったいる中で、露出計の入る場所を確保するためには、どうしても巻上げレバーの位置が必要だったと思いますね。確かに2回巻き上げの小気味良さに慣れていると、FTのサイドに回り込んでいくレバー角度は異常に感じますね。まぁ、メモリー容量の少ないパソコンみたいなものですかね? 技術者ではないので知らないけど。
底部を点検してボトムプレートを閉じます。裏側のメッキが、かなり浮いていますね。
残念な光学系のPEN-Fに慣れている方が見たらびっくりするようなクリアーなファインダー像です。シャッターバネのへたりも少なく、大変状態の良い個体に仕上がりました。最終仕様でないユニット搭載の中前期の製造(1964年2月)としてはこのコンディションはすばらしいと思います。
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