今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

リコーオートハーフEなんぞを・・の巻

2015年11月13日 18時34分08秒 | ブログ

私のところにはあまり来ないリコー・オートハーフですね。E型はS型からセルフタイマーを省いたタイプ。中学生の時の修学旅行でクラスのお金持ち風の女子が持って来て撮影していたのを記憶しています。正直な印象は「変な形のカメラだなぁ」でしたね。鉄道模型を趣味にしていたので、車両の貫通ホロに見えたっけ。作動には特に問題は無いそうですので、軽くメンテナンスということで・・

キヤノンデミと同じもなか構造の前面カバーを外します。上部に露出計AE機構と下部にはゼンマイの巻上げ機構が入っています。小さく決められた空間に良く収まっているものです。PENとは違った意味で感心しきりです。

 

そのPENと同様なファインダーを分離して清掃します。本体は樹脂製ですが対物レンズはガラス製。

 

設計者は理研光学の技術者、安宅久憲氏で、このE型は1966年の発売。レンズの製造は富岡光学で焦点距離2.5mにピント固定されています。シャッターユニットと本体とのモルトが劣化しています。

 

最初の点検で、露出計の針の振れが小さいように感じましたが、どうもセレンは純正以外のものに交換されたようです。カバーの熱カシメがやり直されています。

 

シャッターに2枚重ねになっているレンズと絞り機構を取り出して清掃します。

 

精工舎製のシャッターユニットを外します。劣化したモルトの清掃。

 

 

劣化したモルトを取り除きました。

 

 

洗浄注油をして、新しいモルトを貼ります。

 

 

しかし、ミルフィーユのような隙間にスローガバナーの歯車が見えます。

 

 

チャージの必要が無いシャッターをロックレバーを解除して作動を見ます。

 

ゼンマイ機構に注油をして前カバーを付けます。ダミーフィルムを装填して作動を確認します。なかなか調子が良いです。

 

ね、電車や気動車の妻板に見えるでしょ。前面のアルマイト板は両面テープで貼られているだけで、特注などもあって、いろいろなバージョンがありますね。厚みがもう少し薄ければと思いますが、まぁ、からくりカメラとしては最高傑作ではないでしょうかね。

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異様?にきれいなPEN-Fの巻

2015年11月09日 19時42分20秒 | ブログ

#2401XXと1964年2月製と思われる個体ですね。ご常連のオーナーさんは、「年代を考えると異様にきれいな個体」と心配をされています。そうですね。巻き上げが重くガチャガチャ感がありますけど素性は悪くはないのではないでしょうかね。「開けてびっくり玉手箱状態でないことを」とのことですが、それは無いと思いますよ。長年見て来た勘ですけど・・

あまり使われていないきれいな外観ですが、駒数窓レンズが故意に傷をつけられて脱落しています。何でこんなことするの?

 

シャッター羽根にクラック? と心配しましたが、キズですね。幸い貫通の光線漏れはないです。

 

ボトムプレートを外してと。。うん、きれいじゃん。分解の形跡はありませんね。

 

 

では、開けてびっくりトップカバーを開けて・・駒数レンズの脱落は良いとして、他は問題ないかと。

 

PEN-Fのシンクロターミナル線は接眼プリズム部で透明テープで留められているのですが、それは外れていますね。駒数レンズが内部で脱落したので、トップカバーを開けて見たものの、そのままにしてカバーを戻した? みたいなところですね。

 

脱落したからと言って、腹を立てて鋭利なもので傷をつけなくたって良さそうなものですが。これ力が入っていますのでキズが深いです。

 

表面を削って研磨。こんなところですね。キズは残ります。これから接着をします。夜目遠目ということで。

 

おめでとうございます。すべて分解しましたが、特に問題の部分はありませんでした。ほぼ未分解の素晴らしい個体になる予定の素材。

 

本体もすべて洗浄して組立を始めます。Fの場合、駒数カウンターの復帰不良が起きやすい構造でして、このギヤの回転がスムーズでないのと後ろのスプールギヤの小ギヤの回転不良が原因。

 

 シャッターユニットは非常に良いと思いますよ。ゴムのOリングによるブレーキも利いています。Fの場合、ブレーキが利いているか否かを確認する方法は、巻上げ2回目の最後のところで、「コクッ」と抵抗感があればブレーキは利いている。スカスカならば利いていないと予想が付きます。現存機では、Oリング自体を取り去られている個体も多いのです。ご自分の愛機を確かめてみて。

 テンション軸には線状痕は多めですね。

 

 

全体的には非常に良いコンディションの個体ですが、古いから仕方がないのかなぁ、リターンミラーの腐食が目立っています。実用上は使える範囲ですが。この個体の頃はまだ初期型からのミラー抑えがるんですね。

 

「交換せよ」とのご指示ですのでミラーを分離しました。

 

 

新しいミラーを取り付けました。

 

 

前板に取付け完了。

 

 

 ファインダー像に黒点がある。Fの場合、プリズムの腐食が原因の事が多いのですが、この個体の場合フレネルレンズの内側に有機物のような付着物が付いています。これ、結構見かけますが、虫の卵じゃないですよね。清掃をしても石化して落としにくい場合もありますが、無理に擦るのは厳禁です。

 PEN-Fとしては良好な接眼プリズムです。2面のコーティングはアイビース側のみ拭き傷(仕方がない)ありですが内側はほぼ完ぺきです。殆どの個体では遮光テープの糊によりコーティングが劣化しているのです。

 

 全反射ミラーは比較的良好ですので再使用とします。当時のメッキより現代(当方)のメッキの方が反射率は高いですけどね。波長の問題もありますが・・

 

駒数計、レンズマウントを付けてメカは完成。リターンミラーを貼り替えていますので、ピントの再調整をします。

 

オーナーさんからは「PEN-FTは何故2回巻き上げを止めたのか?」との疑問を頂いていましたが、基本デザインの寸法が決まったいる中で、露出計の入る場所を確保するためには、どうしても巻上げレバーの位置が必要だったと思いますね。確かに2回巻き上げの小気味良さに慣れていると、FTのサイドに回り込んでいくレバー角度は異常に感じますね。まぁ、メモリー容量の少ないパソコンみたいなものですかね? 技術者ではないので知らないけど。

底部を点検してボトムプレートを閉じます。裏側のメッキが、かなり浮いていますね。

 

残念な光学系のPEN-Fに慣れている方が見たらびっくりするようなクリアーなファインダー像です。シャッターバネのへたりも少なく、大変状態の良い個体に仕上がりました。最終仕様でないユニット搭載の中前期の製造(1964年2月)としてはこのコンディションはすばらしいと思います。

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見つけて来たジョンブリアンPENの巻

2015年11月07日 21時21分28秒 | ブログ

「遅れて来たペンマニア」さんは頑張っています。念願のジョンブリアンを見つけて来ました。選択眼の腕を相当上げられていますね。全体的にコンディションは良くて、このままでもコレクションなら良さそうな感じです。

 

この頃のメッキの質はあまり良くなくて、かなり曇っています。角にアタリがありますので修正をしておきます。

 

過去に分解されていますけど、ファインダーレンズは分離されていません。遮光紙の寸法が合っていないですが、う~ん、オリジナルかなぁ? ファインダーの止めネジが1本欠落しています。

 

ファインダーブロックの樹脂も劣化していますね。上面の白く光ったように見える部分は樹脂が白く変色している部分です。

 

で、こんな風にしておきます。

 

 

残念ながら、メッキも風化があって洗浄してみるとの部分が真鍮が露出していました。惜しいですね。

 

あら、レンズの状態を先に確認するんだった。白内障ですね。

 

 

表から見ても分かりました。てっきり程度が良いと思いこんでいたので・・

 

後玉のコーティングが劣化をして白濁しているのですけど、経験的にコーティングが剥がれるだけではなく、レンズのガラスも浸食して曇っているのです。

 

このままでは撮影は出来ない(ジャンク状態)ですので、取りあえず、このようにしておきましたが、良好なレンズと交換した方が良いですね。しかし、なんでガラスが浸食されるのでしょう? コーティングの劣化はレンズの外周から始まっているのに、浸食の深さは中心が一番深いってどういうこと??

まっ。気を取り直して組み立てをします。いえ、この個体としては殆ど使用されなかった良い個体なのですけど、レンズのコンディションはそれとは関係ないのです。というか、使われなかった個体の方がダメージを大きいでしょうね。

片耳ですが、すでに駒数計下にはウェーブワッシャーが入る形式になっています。

 

シャッター自体はスムーズに完成しました。シャッターダイヤルなどを取り付けます。

 

ファインダーブロックの欠落ネジを追加して遮光紙を貼ります。

 

 

最後に彫刻文字の黒色が抜け掛かっていましたので、入れ直して完成です。メカは最高に良い状態ですからレンズですねぇ・・。

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20万台に40mmかぁ・・PEN-FTの巻

2015年11月03日 16時56分00秒 | ブログ

40mm f1.2を装着するとフリーズするというお訴え。40mmを装着する前提であればこの個体(20万台)はあまり良いマッチングではないと思いますよ。20万台はまだシャッターバネが強化されていない頃で、レンズの40mmは大口径のため作動トルクが大きく、フリーズするかシャッタースピードが遅くなる危険性が高くなります。点検すると、FT側のフリクションが大きく、40mmの絞りもかなり重いです。両方のフリクション低減処置が必要です。

当方のFT本体に装着テストをしてもやはりフリーズしました。どちらかと言うとレンズの方が重症ですね。レンズを取り除いて絞りのリンケージ作動をチェックします。絞り羽根が大きいので、作動負荷はどうしても大きくなるのです。

対策を取って行くと・・やっと絞りましたね。羽根の後ろ側にカメラ機構が見えます。しかし、まだシャッタースピードが遅いです。

 

途中省略しますが、過去に分解を受けた個体で、前期型特有の問題もあって、いろいろ問題のあるシャッターユニットでした。半日掛かってやっと前期型のヌメ~っとした巻上げフィーリングになりました。

 

巻上げレバーが収まると引っ掛かりがある。観察するとレバーの先端が下降気味に曲がっていてダイカスト本体に接触をしています。

 

過去にシャッターの分解を受けていますが、基本的には悪くはない個体なのですが、最大の問題はFTの中でも製造が古いということです。FTは皆同じではありません。メカも設計変更を繰り返し、光学系も耐久性の向上を目指して改良されて行きます。この個体の場合は光学系のコンディションに問題があります。プリズムのコーティングが劣化しています。この後、拭き上げですべて剥離しました。

ハーフミラーも年代相当の劣化があります。これは新品と交換します。

 

 

接眼プリズムのコーティングも手遅れ状態でした。リターンミラーは清掃してありますが、腐食痕が見えますね。反射率は低下しています。本来は新品と交換した方がよろしいですが、今回は再使用とします。

 

セルフタイマーユニットの個体方法はメーカーでも色々試行錯誤で苦労をしたとみえて、何種類も形式があります。この頃は、ユニットの固定と水平維持のために、地板にタップを切ってネジでダイカスト巻き戻し軸部に当てて固定調整をするようにしています。以後はまた別の方式になります。

残念ながら、プリズムのコーティングが無いため、コントラストが弱いファインダー像となっているのが残念なところ。40mmの装着作動は問題ありません。

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ウルトロン1.8/50というレンズが来たよの巻

2015年11月03日 11時57分53秒 | ブログ

簡単にUPしておきます。長くPENのご常連さんからCarlZeiss Ultron 1.8/50というレンズが来ました。模写力や-ボケ味が優秀なオールドレンズということのようですけど、がたぱしゃさんにアドバイスを頂いて清掃をしました。

 

特長的なのは凹の前玉ですね。レンジファインダーレンズを一眼レフで使えるように再設計をされたとか。レンズは古いための焼けなのか黄ばんで見えますね。

 

レンズ群は6時の突起でねじ込みになっていました。過去に分解清掃を受けており、細かなすり傷があります。しかし、美品の範囲ではないかと思います。

 

清掃したレンズを組み立てました。フィルターは専用のバヨネット式ですね。脱着は速いですが汎用品が使えない。

 

M42マウントですからTAKUMARのキャップが流用されています。

 

 

 ボディーも清掃して終了。コンディションは良好ですね。現在は、デジカメに装着して楽しまれる方も多いのかな?

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