今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

かなり厳しいPEN-FTの巻

2017年11月11日 19時16分35秒 | ブログ

これもカメラ店様経由のご依頼です。PEN-FT #2058XXと初期ではないけど、10万台と同様な仕様の個体です。平成3年と6年に修理を受けたようですが、最後は「修理不能」の判定となったようです。ここまで使ってもらえばメーカーさん冥利に尽きると思いますが、他の個体を使った方が簡単なのに何で直す決断をされたのでしょう? まぁ、直せないと言われたら意地でも直しますけどね。

何度も修理を受けているのでシボ革の接着でドロドロの状態です。巻上げが固着で作動せずという状態ですが、まず、原因の特定をするために分解します。

 

オレンジ色の太いリード線に替えてありますね。露出計はCdsからのリード線が欠落していて作動しなかったはずです。今回は露出計は無視で・・まず、巻上げユニットのリンクバネが外れていることによる巻上げ固着がありましたが、原因はそれだけではありませんね。シャッターに根本的な問題があります。

メインバネが折れていますね。材質はスェーデン鋼なので、しなやかで強いトルクを発生するバネですが、無理なテンションを掛けたりすると折れます。まぁ、20万台ですと自然に折れる場合もありますね。

 

こういう状態です。

 

 

ハーフミラーも、これでは見えなかったでしょうね。

 

 

内部の汚れも激しい状態です。すべて分解をして洗浄をします。

 

 

シャッターユニットを超音波洗浄をして点検していきます。使い込まれた個体としてはスローガバナーの摩耗も少なく、意外に大丈夫なようです。ピンセット先のレバーはシャッタースピード「B」で回転するハンマーを止める役目をしますが、片方に熱処理が入っていますね。この頃だけの処理です。

シャッターバネ交換に伴うテンション調整をしてあります。変更前のバネは条数(巻数)が少ないため巻き上げによるストレスを受けやすく、よって折れやすいのです。変更後のバネは真鍮のスプリングホルダーを廃して、その分条数を増やして耐久性を上げています。結果的にシャッターのテンションも上がってバネが折れることも少なくなりました。

まぁ、使い込まれた20万台のジャンク機ですから覚悟はしていましたが、やはり不安定なところがあります。前板と組み合わせて、またリターンミラーユニットに悩まされることになります。ヤレヤレ・・

 

ご依頼にはありませんが、接眼枠が全然ない状態ですので、補修痕のある接眼枠を見つけて来ました。

 

画像ではそれほど汚れているように見えませんが、かなり使い込まれたことが分かるダイヤルです。洗浄をしてから取り付けます。

 

何とかここまで来ましたよ。変更前の消耗したユニットの組合せは作動の安定性が悪くて折り合いを付けることが難しいです。電源用のリード線は新製で配線していません。

 

レリーズボタンのメッキの剥離具合で、どのくらいシャッターを切られたか推測できます。

 

最近、ここまで塗装が剥離した裏蓋は見ませんね。

 

 

三脚を多用した撮影が多かったのでしょう。真鍮地が出るほど使い込まれたボトムプレートは初めて見ました。

 

ということで、棺箱に両足を突っ込んでいたような個体を引き戻しました。オーナーさんは何故この個体を直そうと思ったのでしょう? 現在ならもっと程度の良い中古は安価に手に入るのにね・・この後、文字の塗装剥がれを修正して終了です。

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きれいなPEN-EESなんだがの巻

2017年11月09日 19時51分49秒 | ブログ

中古カメラ店様からのPEN-EES #1593XXですけどね。外観はあまり使われずにきれいなんですけど、初期の個体はセレンがダウンしているものが多いです。この個体もセレンの他にメーターの針の先端部が無くなっています。これはEEのギロチンに挟まれるので半田が剥離してしまうのです。残念ながら針はカメラ内に残っていませんでした。その他、シャッターの固着があります。

では、セレンとメーターはセットですので、一緒に交換することにします。

 

 

レンズのカビを清掃します。

 

 

シャッター羽根に僅かな腐食がありますが、その他は良好です。

 

 

本体に組み込んでプレートをセットします。

 

 

EE精度の調整をしてトップカバーを取付て完成です。

 

 

ついでにOM-1Nのメンテナンスをしておきます。あちゃ~、シューを取り付けたままにするとトップカバーを痛めてしまいますね。

 

M-1とはプリズムの押えが異なりますね。モルトの劣化でプリズムの蒸着面を痛めてしまっています。

 

プリズム押えではなく、シンクロターミナル部のモルトが悪さをしているのですね。

 

すべて清掃をして組み立てました。

 

 

 OM-1の時代はシボ革はゴム糊接着ではなく両面テープになっていますが、古くなると接着力が落ちてシボ革の縮みを止められないのですね。上下で1mm以上隙間が空いています。

 

セルフタイマー側も同じ状態ですので、剥離をしてシボ革をドライヤーで温めながら元の寸法に戻して接着をします。樹脂のカバーが欠損していますね。

 

ははぁ、高さが合わずにテープを貼って合わせているのはFTと一緒ですね。

 

 

シボ革を直すだけでカメラがスキッとしますね。みなさんもやってみたらよろしいです。タイマーのカニ目は逆ねじですよ。で、2台完成です。

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M-1かぁの巻

2017年11月08日 16時15分54秒 | ブログ

トランプ大統領が来日中は秋晴れで良かったですね。昨日はまたヘリの音が喧しかったのですが、あの時に横田から韓国に向けて離陸したんですね。で、ご常連さんからM-1が来ていましたね。M-1にしてはプリズムの腐食が無く、スローも止まらないので途中で修理を受けているでしょうね。高速シャッターでケラレがあるとのことです。気になったのはシャッターリングの回転が異常に重い、無理に回すと壊れそう。クリック機構の潤滑が切れるとなりますね。M-1の頃はレンズマウントのネジがスリ割りなので、強い緩み止めが塗布されているので分離が困難です。

バネの掛かりが外れています。

 

 

巻上げレバーのカニ目にキズがありますので分解歴ありです。

 

 

プリズム押えなどはM-1ですけど、露出メーターは以後のものでしょう。部品を組み合わせて組んでいるようです。

 

スローガバナーのカバーは接着が強くて分離が困難です。

 

 

先幕が遅いようですので、軸を点検すると一部に錆が発生しています。清掃と注油をしておきます。一般的にはリボンのところが紐ですね。これによって上下幅を詰めているわけですね。

 

ミラーボックスの作動部分にも注油をしておきます。

 

 

ははぁ、過去にも先幕のテンションを調整されていますね。あまり張りたくありませが最小範囲で張っておきます。

 

モルトは完全に劣化をして粉々・・

 

 

取り除いて新しいモルトを貼ってあります。

 

 

完全オリジナルでないのは残念ですが、外観はきれいなM-1ですね。

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またまた精工舎の二重ケースなんだがの巻

2017年11月04日 21時02分56秒 | ブログ

世の中、三連休だそうですので、私も一日作業はお休みを頂いて私物の時計をやっています。またまた戦中(日華事変もあるので)の精工舎の二重ケースを入手してしまいました。不動のジャンクですが、文字盤が24時間表示でしたので・・しかし、残念ながらこの個体も軍用として採用された個体ではありません。⚓や🌸のマークが入っただけで高価になって、私の稼ぐ手間賃では買えません。前回のものよりケースの状態は悪く、かなり使い込まれていますね。

1324の赤字が薄くなっています。赤は退色し易いですからね。24時間表示は軍用というわけではなく、同じデザインの置時計などもありますね。当時の流行り? 月月火水木金金の世相ですからね。若い方は知らないでしょうね。

 

機械は前回と同じモリス型になります。

 

 

外側ケースの風防が痛んでいて樹脂のひび割れもあります。

 

 

オリジナルの風防はドームが強く厚みも薄いタイプです。探せば近い風防もあるのかも知れませんが、手持ちの風防は角が角ばっているものですので、角の角張をR状に成型してみました。すると、厚みがあるので、レンズ効果が出てしまうのです。

左もオリジナルではないようですが、牛乳瓶の底みたいなメガネに見えます。まぁ、しばらくはこれで我慢します。

 

ゼンマイ切れとのことでしたが、ゼンマイは切れておらず、角穴車真の引っかけがゼンマイから外れています。なんでこうなるかな?

 

テンプの振り石が自由位置でドテピンの中心に来ているか? を見ます。この頃のヒゲゼンマイはくちゃくちゃに変形しているものが多いので、それによって中心に来ていない場合が多いですね。

 

外れている場合はひげ玉を回して修正しますが、この個体の場合、ほぼ良好でしたので、そのままとします。古いひげ玉のスリットを無理に開くとクラックが入って割れてしまうことがあるので・・ヒゲゼンマイの形状を修正していきます。観察するとチラネジの対角2か所が半田付けされていますね。昔の時計師さんの裏技でしょうかね? フライホイール効果を狙った? バランスも何もあったものじゃないですね。これはまじめに調整してもダメだわ・・

すべて洗浄をしてから組み立てて行きます。

 

 

意外に天真の摩耗は大きくなく、ヒゲゼンマイの形状を修正した効果か、元気よく動きだしました。

 

前回の個体と並べて。竜頭は今回の方が雰囲気が良いです。

 

 

しばらく様子を見ますが、前回の予備機のテンプと交換するかもしれません。あぁ、まだ本物の軍用は遠いです。

 

 

今朝の10時半過ぎぐらいだったかな、近くの米軍横田基地にトランプ大統領が到着されました。事前に到着時間は公表されていませんが、昼食を食べて午後から埼玉のゴルフ場でゴルフとなると、このぐらいの到着だろうと思っていました。たぶん、着陸コース際には報道陣や航空マニアで一杯だろうと見に行きませんでした。NHKの画像を見ながら耳を澄ませていましたが、残念ながらエアフォースワンのエンジン音は報道各社のヘリコプターの騒音が大きく聞こえませんでした。旅客機だしね。いつも航空祭ではロックバンドの演奏をしている格納庫で演説をしていましたが、意外に横田基地は旧陸軍(飛行審査部)の施設が残っていて、格納庫も改修されなが使われていると思います。しかし、あの巨大な星条旗はお決まりでカッコいいですね。で、組みっぱなしで一晩置いたら、あらら10分も進んでいました。修正はしても小さくて渦巻きの間隔が狭いヒゲゼンマイですから、動的な動きで干渉している可能性があります。そこで、再調整をしてセットしました。+30秒 振り角230° 片振り0.1 このテンプではこれ以上は無理ですね。テンプ受の状態が悪いものが殆どですので、良好な部品を揃えて組み直したいと思います。しかし、摩耗でガタガタの機械を手掛けることは勉強になりますね。

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