今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-F系の消耗の巻

2021年07月14日 22時00分00秒 | ブログ

見にくい画像ですみません。PEN-F の初期型#1374XXです。外観は非常にきれいな個体ですがシャッターが突然作動途中で停止しています。シャッター幕は開いており、ハンマーがスローガバナーを叩いたところで停止しています。とすると原因はスローガバナーにあります。

生前の米谷さんから「ユニットは直せないから交換ユニットを用意しておくように」と言われましたが、このカメラのスローガバナーは非常に過酷な動きをしているのでPEN-FとPEN-FTの前期型に使われているユニット(以後は材質変更)は歯車の損傷摩耗が発生して低速止まりのような症状になります。特にPEN-Fの初期ユニット(2種類あり)で良品を集めることは簡単ではありません。不動だからジャンクなのですし・・みなさん現役で使われるのでどんどん機械の状態は悪くなっています。


しかし、ルーペでの点検では明らかな歯車の損傷などは見当たらないので洗浄注油の上、再組立でも何度かシャッターを切るうち同様な症状に陥りました。これは全体的な摩耗による作動の信頼性不足で交換するしかありません。ストックから同時期のユニットを探して来ましたが、過去に分解を受けていじられているユニットです。点検のところ痛みやすい低速用歯車の損傷は無く、なんとか修復できるかもしれません。ガンギ車とアンクルをいじられていて、画像ではすでに大きく開かれていた調整用ストッパーを適正な位置に戻してあります。しかし、それでもスムーズに動きません。観察すると・・あっこれだ。アンクル復帰用バネの係り位置が違います。ここではアンクルと干渉してしまいます。

分かり難い画像ですが、こちらが正規の係り位置です。その他アンクルの軸の垂直度も狂っていました。これでユニット単体では正常に作動するようになりました。

シャッターユニットに組み込んで本体に取付け、1秒で作動テストをしているところ。ハンマーが正常に回転(反時計方向)して作動を完了しています。

 

前板関係を取付けて作動をチェックします。

 

今回は無事修復することが出来ました。しかし、メーカーのライフ予想をはるかに超えて現役で使用され続けている訳ですから、年々機械は消耗し安定性・信頼性は落ちて行きます。昔は良品のユニットに交換で対応していましたが、現在は貴重なユニットですから修理して生かしていく対応となっています。永く使いたい方は米谷さんのおっしゃる通り、予備の部品取り機を用意しておいて頂けると修理する方としては大変助かります。特に今回のような初期型はね。

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蒸し暑い中トリップ35ですの巻

2021年07月12日 21時10分00秒 | ブログ

毎日、梅雨末期の雷雨が続いている関東地方ですが、梅雨開けはもう少し先でしょうね。しかし、気温と湿度が上がって非常に蒸し暑いです。その中でトリップ35のメンテナンスをして行きます。このカメラは完成されたPEN-EEの機構をそのまま使って安く市場に出そうというコンセプトのカメラですから故障は非常に少ないですね。

しかし、外観の程度は良くても、経験的にレンズにカビが生えやすいと感じますね。中玉は曇り、後玉は決まってカビです。

 

後玉のコーティングにはカビが生えやすい、これはPEN-EEと同じですね。これから清掃をしてほぼきれいになりました。

 

絞り羽根ユニットも洗浄脱脂をしておきました。取付けネジには必ず緩み止めを塗布しておかなくてはなりません。前玉は組立最後にヘリコイドグリスを交換して取り付けます。

 

ファインダーもEEと同じですね。その他、シャッター機構のメンテナンスと露出メーターの感度調整をしておきます。

 

フィルムカウンターもEE-2と同様な機構で、裏蓋を開けると巻上げ軸からアイドラーギヤが外れてカウンターが戻る簡便確実な方式。

 

モルトは貼り直されていましたがオリジナル通りにやり直しておきます。

 

将来的にはセレン不良によるEE不良が出て来るとは思いますが、基本的に故障をしない機械です。絞り羽根の固着、レンズのカビぐらいはありますけど・・

私の愛車ホンダ・S800Mイエローのトミカと一緒に撮影して完成。

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ヤシカ・ラピードの続きの巻

2021年07月07日 20時40分00秒 | ブログ

ヤシカ・ラピードの続きです。このカメラの後玉は殆ど曇っていて、残念ながら清掃ではきれいになりません。よって軽く研磨をしたところまででした。

 

同時に殆どの個体で露出計のセレンがダウンしていますが、この個体は感度低下ですが辛うじて動いているのが良い点でした。しかし、過去に分解を受けていてその他の状態は良くありません。

 

観察すると絞り羽根のリベットが外れて正常に作動していません。

 

 

過去に分解歴がありますね。どうして傷だらけにするんだろう?

 

 

親の仇のように強く締まっていて専用のリングレンチでなければ緩めることが出来ません。

 

シャッター不調、セルフタイマー不動ですので分解してメンテナンスをします。

 

シンクロターミナルのリード線の継ぎ目の絆創膏が気になりますね。途中で切れたというよりは整備性のためオリジナルに追加したものかも知れません。

 

厄介な形状をしているモルトをやり直しておきます。

 

 

リード線はやり直しました。シャッターユニットを本体に戻します。

 

 

絞り羽根のリベットを再カシメ(接着)をして組み込みました。果たして正常に開閉してくれるか強度は出ているか・・

 

正常に作動しています。

 

 

前玉にヘリコイドグリスを塗布して組み込みます。無限位置のストッパーを調整しておきます。

 

ファインダーのコーティングと光枠は劣化してしいので清掃は(剥離するので)最小限にしておきます。この個体の前面ガラスは樹脂製ですが、過去に扱った個体はガラス製だったような・・

 

ローライ35と同じように距離リングはmとftが対角に彫刻されているので、どちらにも組むことは出来ますが、レリーズボタンが付いている方が上でしょうからm を上で組みます。また、「P」位置でクリックが利くようになっているはずですが、過去の分解でスチールボールとバネを無くしています。特に問題は無いかと・・

当時としては頑張ったデザインコンセプトだと思いますね。但しこれがハーフカメラであるということを忘れていたような重量級のカメラになってしまいました。未来に残して行きたいカメラではあります。

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ローライ35が残ってたの巻

2021年07月06日 12時00分00秒 | ブログ

ローライ35のジャーマニーが1台残っていましたのでやっておきます。やはり初期のドイツ製が人気のようでカメラ店様からのご依頼台数も多いです。全体的には悪くはない個体ですがトップカバー右端に気になるへこみがあります。

 

これは完成後の画像ですが、修正はこの程度ですね。

 

 

初期型は殆どヘリコイドグリスが抜け気味です。

 

 

この個体は過去に(海外で)分解歴がありますが、巻上げレバーのバネが強すぎると感じます。このような場合は大概・・

 

過去の分解でファインダーの接眼部品の先端が折れています。これは接着剤で着けておくしかありません。ファインダーがプリズムの初期型にしかない部品。

 

製造が古いので、巻上げ関係の軸受けはすべて分解潜像をします。また、シャッターは低速不調ですのでガバナーのメンテナンスも行っておきます。

 

巻上げが極端に重かったのは、このコイルバネのテンションが標準より多く巻かれていたためです。バネの個体差により自由長時の終端位置が微妙に違うので、折り合いをつけるのが難しい個体もありますけどね。その場合はバネを交換します。

 

初期型とは言え、巻上げ関係のギヤは樹脂と歯数が少なくなったタイプになっている仕様です。メーターもカバーがオレンジ色でCdsも初期のものとは異なります。

 

初期型のレンズはチリの混入が多いです。

 

 

分解して清掃をして行きます。

 

 

前玉の清掃とヘリコイドグリスを交換しておきます。馬蹄型のリングがレンズの繰り出し範囲を規制しますので無限調整をしておきます。

 

おっと見逃していました。シャッターダイヤルのフィルムインジケーターにキズがありますね。研磨では取り切れない深さですので交換します。

 

ローライ35系の弱点は本体と裏蓋が分離する構造のためフィルムカウンターの作動不良になりやすいということ。また、原因は1つではなく複数の要因が重なっている場合もあります。特に初期型の開閉レバーは強度不足により使用過程でガタが大きくなって、しっかりと裏蓋を押さえられなくなってフィルムカウンターが作動しないか途中までしか作動しないなどの症状が出て来ます。最後に36枚まで巻上げて確認しておきます。

W30947XXと初期には違いないですが、すでに変更部分も多い個体ですね。巻上げも軽く調子も良好となりました。

 

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