今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ここは弱いよPEN-Fの巻

2023年07月03日 09時00分00秒 | ブログ

中古店様から設計変更後のPEN-F #2648XXです。外観は比較的きれいで使い込まれてはいません。しかし、長期放置でレンズを装着するとリターンミラーが止まってしまいます。

 

では、分解のためにトップカバーを外してみると・・あらら、スプロケット軸上の「バネ抑え」が斜めになっていますね。

 

ここは設計変更をされているところですが、変更前でも同じで弱いところです。そもそも細いM1.7のネジの頭が巨大でしょ。しかも、緩みやすいので工場で組立時に緩み止めを塗布してねじ込ませているので緩めようとすると巨大な頭ですから大きなトルクが掛かって簡単に折れてしまいます。私もそれを充分に分かっているのに折る時があります。この個体の場合は分解歴は無いと思いますので、ネジに過大な力が掛かって折れたのでしょう。米谷さんの設計は無茶なところがあります。

普通にねじ込まれただけでしたら、軸内に残ったネジは取り除けますが、緩み止めを塗布されているので全く動きません。仕方が無いのでドリルで削ってタップでさらいました。思わぬ工数を無駄にしました。

 

では、ダイカスト本体の洗浄から組み立てて行きます。

 

 

交換用のバネ抑えにも限りがありますのでネジを植え込んで修理をして使用します。

 

 

シャッターなどの通常作業はUP省略します。Fのプリズムは黒点の腐食が出ている個体が多いですが、軽微な黒点は確認できますが良い方です。劣悪な保管状態ではなかったと思われます。ユニットの状態も腐食も無く良好です。

接眼プリズムのコーティングに劣化のうす曇りがあります。アルコール系のクリーナーで拭くとコーティングが剥がれるので慎重に清掃します。

 

全反射ミラーも外周に劣化はありますが視野外なので問題なく再使用します。

 

 

これでメカの組立は終了。良いカメラです。付属のレンズのメンテナンスがあります。

 

 

F用の38mmですが、かなり曇りがあります。絞り羽根の作動も重いので各部を洗浄クリーニングしておきます。

 

ここも弱いです。PEN用のズイコーレンズはどうしてもこうなりますね。後玉が曇っています。幸い清掃でコーティングの剥離は免れました。

 

裏蓋ロックのカギ板も非常に弱い。巻上げダイヤルの上下作動が渋くなるとカギ板を裏蓋の爪が飛び越してしまう症状。洗浄注油と爪の当たりを調整してあります。その他は疲労も少ない良い個体となりました。

 

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AUTO TERA ⅡBってなに? の巻

2023年07月02日 11時11分00秒 | ブログ

中古店様から見慣れないカメラが来また。AUTO TERA ⅡBと彫刻されています。1950年代のカメラと思いますがTERAOKA SEIKOSHOと刻印されています。寺岡精工所はハカリで有名なテラオカが製作したカメラのようです。「修理カルテ」に「ゼンマイ巻上げ」と記載されていました。この時代のヘリコイドグリスは品質が良くなかったようでヘリコイドが張り付いているカメラを見ますが、この個体もビクとも動ぎません。多少荒治療ですが何とか固着を取ります。

調べてみると、巻上げはゼンマイによるスプリングモーターですが、連写が出来るという訳ではなく、画像の鏡胴を回転させることでフィルムの巻上げとチャージを完了させるということのようです。とすると指かけのようなレバーがないと・・内部にネジとピンが落ちていました。このことから指かけが脱落していると気が付きました。

ネットで画像を検索してみると、PEN-F系のレリーズボタンのような形の立派なレバーが付いていたと分かりましたが、今回は仮にPEN-Dの距離レバーをタップ加工をして取付けておくことにします。本体に傷をつけず、オリジナルの指かけが見つかれば交換出来るようにしてあります。

 

リターンスプリングは弱いので特に問題なく操作が出来ます。しかし、この操作をするのであれば、ゼンマイ巻上げではなく、このレバーでチャージすれば良いんじゃないの? どうしても、得意なゼンマイを使いたかったのかな?

 

大きく見やすいファインダーを清掃します。プリズムの2面にハーフミラーとフレーム板を接着しています。二重像が大きくズレていますので調整をしますが、テコのようにと支点、作用点が一直線のため調整は非常にシビアで中央ネジにより僅かに動かすと大きくズレてしまいます。

接眼部を分離して清掃のうえ再接着をしておきます。

 

 

黒い円盤の下にゼンマイが入った香箱があります。かなり強いバネです。

 

 

このレバーでゼンマイを巻き上げます。ゼンマイ一杯で7~8枚程度撮影が出来るようです。

 

作業用のダミーフィルムは通常のフィルムより強健に出来ているのですが、それでもゼンマイの強さにパーフォレーションが痛みます。

 

トップカバーに小さな打痕がありましたので修正をしてあります。

 

 

シャッターは国産高級の精工舎 MX ですので信頼性は高いですし、写りも良いようですね。生産台数は少ない(シリアルが4桁)ですからほとんど見る機会もないカメラですが、ファンの方はいらっしゃるのでしょう。

 

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壊れたローライキンの修理の巻

2023年07月01日 11時00分00秒 | ブログ

日本列島は蒸し暑い梅雨の季節で作業をしていても気が滅入ってしまいます。まして難儀な修理が続いているので余計です。最近ブログの進捗が進まないのはそのためで、このローライキンはノブの位置を規制する位置決めピンが無くなっていました。恐らくノブを無理に回転(本来回らない)させたのではないかと思われます。脱落したピンはノブ側にカシメられていたと思われますが、現品が無いので今回はネジを使って修理しました。

内部は対角に爪が付いたリングが円周方向に動くことでギヤを進める構造ですが、正確に作動させるためには潤滑が非常に難しい。オイルやグリスを大量につければ動くというものではなく非常に神経質。

 

最後に中央のリングナットをリングレンチで絞め込んで組立完成。

 

 

表面の状態。カメラ本体に3本のネジで取り付けます。

 

 

の部品は裏蓋を閉め込むとノブが引けないようにするための部品。非常に簡単な構造で機能を実現している。

 

本体に取付けました。カウンターも正常に作動し、裏蓋を閉めているのでノブは引けない状態。ブログに書くと簡単に見えますが、改造修理をすると、いろいろな部分に影響が出て、すべての作動を満たすように調整することは非常に難しい。今後の研究が必要。

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