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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

萩原麻未のシューマン「ピアノ協奏曲」を聴く~文化庁「明日を担う音楽家たち」

2013年02月09日 07時00分08秒 | 日記

9日(土)。昨夕、初台の東京オペラシティコンサートホールで「明日を担う音楽家たち」コンサートを聴きました これは文化庁委託事業として、文化庁と日本オーケストラ連盟の主催により開かれたもので、”海外留学”の成果を披露する公演です 出演は平成20年度フランス留学生・大矢素子(オンド・マルトノ)、21年度フランス・萩原麻未(ピアノ)、同ベルギー・坂口昌優(ヴァイオリン)、22年度ドイツ・伴野涼介(ホルン)の4人です

会場はほぼ満席。自席は1階9列11番で、センターブロック通路側、演奏者の顔の表情がよく分かる位置です 東京フィルのメンバーがスタンバイし、ワインレッドのドレスに身を包まれた坂口昌優(まゆ)が指揮の藤岡幸男とともに登場します 彼女は2006年に第14回イタリア・アルベルト・クルチ国際ヴァイオリン・コンクールで第2位に入賞しています

1曲目のプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調」が坂口のソロで始まります。緊張感に満ちた集中力のある演奏です 第1楽章は何となくコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を思い出しました 第2楽章は弦のピチカートに乗せてヴァイオリン・ソロが美しく奏でられます。そして第3楽章は技巧を要するパッセージが続きフィナーレを迎えます。なかなか聴かせるな、と思いました

2曲目のヒダシュ「ホルン協奏曲第1番」は弦楽器と打楽器のバックでホルンがソロを奏でる音楽です打楽器と言ってもビブラフォン、チェレスタなどで、ティンパ二や大太鼓は使われていません。ソリストの伴野涼介は現在、読売日響のホルン奏者です

ヒダシュ(1928-2007年)はハンガリーの作曲家ですが、ホルン協奏曲第1番の第1楽章を聴くと、ジャズが取り入れられたノリ易い音楽です 伴野は右手をホルンの中に入れ強弱や音色を変えていきますが、時に舞台裏で吹いているのではないかと思うほどのテクニックで弱音を吹きます 第2楽章は一転ノクターンのようなロマンチックな音楽です。第3楽章はラテン音楽が素材として使われた賑やかで華やかな音楽です

休憩時間を利用して指揮台の左サイドにオンドマルトノがセッティングされます オンドマルトノは一言でいえばチェレスタに似た電子鍵盤楽器です。真ん中に鍵盤を前にした演奏者が座り、すぐ後ろに琵琶をひっくり返したような形の共鳴箱(?)が、左右にはスピーカーのような物が設置されています 私の座席の位置はベスト・ポイントでオンド・マルトノの正面です。ソリストの大矢素子が明るいブルーのドレスで登場します

ジョリヴェ(1905-1974年)の「オンド・マルトノ協奏曲」は1947年に作曲されました 第1楽章冒頭を聴く限り、いったいどれがオンド・マルトノの音か判らなかったのですが、次第に存在感を増して主張するようになりました その音はエレクトーンのようでもあり、ノコギリをヴァイオリンの弓でこすったような音のようでもある不思議な音です 一言でいえば”宇宙の神秘”とでも表現すべき響きです

さて、いよいよ待ちに待った萩原麻未の登場です。深緑の生地を黒のヴェールで覆ったようなシックなドレスで登場します これまで、彼女は白か赤かどちらかの色のドレスを着ていたように思いますが、今回は”大人の雰囲気”を漂わせていました いつものように笑顔で一礼しピアノに向かいます

藤岡の合図でシューマン「ピアノ協奏曲イ短調」が始まり、萩原のピアノが力強く入ります にこやかに会場に顔を向けていた彼女の表情が、ピアノに対峙した瞬間、獲物を追いかける雌豹に変貌します彼女の演奏姿を見るといつも、若き日のマルタ・アルゲリッチを想い起します 何という素晴らしいピア二ズム集中力に満ち溢れ、彼女の演奏姿から目が離せません 幸い座席がベストに近い位置にあるので彼女の指使いがよく見えます 彼女の本領は第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」で発揮されます。最後のフィナーレでテンポを落とす箇所がありますが、いつか上原彩子がBBCフィルと演奏した時のように極端にテンポを落とすことなく、萩原麻未は自然の流れに身を任せて”適切な”テンポで演奏します。そして圧倒的なフィナーレを迎えます

会場一杯の拍手、ブラボーが舞台に押し寄せます 雌豹から再び笑顔の萩原麻未に戻り何度も聴衆の拍手に応えます 国内で彼女の演奏するコンサートはすべて聴いていますが、今まで聴いた中でもこの日のシューマンは最高の部類に入る素晴らしい演奏だったと思います。これからも彼女の出演するコンサートは追っかけて行きます

最後に出演者全員が再び舞台に登場して一礼し、コンサートを締めくくりました この日のコンサートは4人が4人とも素晴らしい演奏で、こんなに充実したコンサートは1年に何回もあるものではない、と思いました しかも、文化庁の主催ということもあって、S席が3,500円、A席が2,500円、B席が1,000円と格安なのは良心的だと思います

一夜明けた今朝も、萩原麻未の躍動感に溢れる演奏姿とシューマンのフィナーレのメロディーが目と耳に焼き付いて離れません

 

           

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