27日(水)。昨日の日経朝刊の「文化」欄に東京藝術大学名誉教授の岡山潔氏が「ハイドンの調べに人間味~日本・ウィーンの学生弦楽四重奏を指導、引き出す」というエッセイを書いています 要約すると、
「ハイドンは古典派の祖であり、交響曲や弦楽四重奏曲の『父』と呼ばれる その位置づけから厳格なイメージを持つ向きもあるが、人間の深い精神性や生きる喜び、愛、悲しみ、絶望などの感情をユーモアのセンスを織り交ぜながら描いた音楽は、言葉のように聴衆に語りかけてくる
自分が企画・指導して、彼の68の弦楽四重奏曲をウィーン音楽演劇大学と東京藝術大学の学生により5年がかりで演奏、録音した
1週間で完成する曲もあれば数カ月かかる曲もあった。ウィーン音楽演劇大学は、今やハンガリー、ルーマニア、ポーランド、アジア系など、多国籍の学生から成っている
この録音は東京芸大出版会からCDとしてリリースされたが、今回の多国籍の若手演奏家による全曲演奏をハイドンはきっと喜んでくれているような気がする
」
岡山潔は1990年から2010年3月まで東京藝術大学の教授を務め、その後、名誉教授を務めていますが、併せて2008年から岡山潔弦楽四重奏団を主宰して活躍しています CDでなく、生演奏で彼の愛弟子たちのハイドンを聴いてみたいと思います
閑話休題
ところで、ハイドンで一番好きな曲は何か?と問われれば「弦楽四重奏曲第67番ニ長調”ひばり”」と答えます この曲は1790年に、エステルハ―ジ侯爵家のヴァイオリニスト兼実業家のヨハン・トストからの依頼により作曲されました
『ひばり』というタイトルはハイドン自身が名付けたのではなく、第1楽章の冒頭に現れる旋律がひばりのさえずりに似て聴こえることから付けられたと言われています
この曲を初めて聴いたのは今から35年以上も前のことで、当時はLPレコード全盛の時代でした。音楽仲間の集まりがあり、主催者のOさんがオーディオ・チェック用にかけたのがイタリア弦楽四重奏団によるハイドンの『ひばり』でした 彼は、英国の名門スピーカー”タンノイ”の所有者で、「何ヘルツが出ていない」などと音に対する不満を述べていました。私はそんなことはどうでもよく、イタリアSQの演奏する『ひばり』に聴き惚れていました
何と爽やかで豊かな音楽なのか、と感歎しました
〔イタリアSQの”ひばり”のCD。LPは探したが見つからず〕
Oさんと私の違いは、Oさんはレコードはほんの数枚しか持っておらず、オーディオ装置におカネをかける主義だったのに対して、私は、そこそこのオーディオ装置で当時1,000枚以上(その後2,000枚まで増えた)のレコードを聴くことに力点を置いていたことです
その後Oさんは、『タンノイ・アーデン』の裏ぶたを開け、綿を詰めたり出したりして”音の改造”に腐心していましたが、思い通りの音が得られなかったようで、「JBLを買うから、タンノイを2本15万円で買い取ってくれないか」と訊いてきました クラシック音楽を聴く者にとってタンノイのスピーカーは”夢”です
”改造”されているとはいえ、タンノイはタンノイです。正規料金なら1本15万円でも買えない値段です。願ってもないことなので、即金で手に入れました。自宅の持ち込んで早速イタリアSQのハイドンの『ひばり』を聴きましたが、思い通りの音、思い通りの演奏でした
今ではLPレコードを滅多に聴かないので、タンノイもお休み中ですが、何年後かに仕事をリタイアしたら、嫌というほど聴くことになるでしょう