23日(土)。昨夕、X部長に誘われてHCビル地下のKで飲みました。ここは魚貝類が新鮮で美味しく日本酒に合います 1時間半ほど飲んで、時間が早いのでJR
で上野に向かいました。例によってカラオケ・スナックFで歌合戦
です。そんな訳で、今朝は6時に起きられずアップに1時間以上”遅刻”してしまいました。今朝も頭が痛い
閑話休題
井上和雄著「ベートーヴェン 戦いの軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」(音楽の友社)を読み終わりました これは同氏の「モーツアルト 心の軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」とともに新日本フィルの第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんからいただいたものです
著者の井上和雄さんは昭和14年生まれ、神戸大学経済学部大学院卒業。在学中にブタコレラ・クヮルテットを結成、昭和51年に中央公論社刊「モーツアルト大全集」の懸賞論文「読者のモーツアルト論」入選。神戸商船大学経済学部教授(昭和63年現在)です
この本はアメリカを代表するブタペスト・クヮルテットの向こうを張ってブタコレラ・クヮルテットというアマチュア弦楽四重奏団を結成した井上さんが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を、演奏する立場から分析し、曲を通してベートーヴェンの人生をたどったエッセイです
「モーツアルト 心の軌跡」を読んだ時にも感じたことですが、30数年前にヤマハ音楽教室でフルートを1年間習っただけの素人クラシック音楽愛好家にはとても歯が立たない本です しかし、モーツアルトの作品と比較してベートーヴェンの特徴を述べた部分は、なかなか鋭い分析を展開しています。例えば、弦楽四重奏曲第7番ヘ長調”ラズモフスキー第1番”の第3楽章「アダージョ」について次のように書いています
「ブランディス弦楽四重奏団を聴いたときの感動はそれだけではなかった。それは第3楽章アダージョがもつ悲しみと慰めの感情の質にある。それは場合によっては、ほとんど崇高とも思えるものにまで深められ高められるといっても、これはまた、何と懐かしい悲しみであろうか 誰もが間違いなく感ずる悲しみなのである。それはモーツアルトの悲しみではない。そういえばモーツアルトにも涙を流さんばかりのものがある
たとえばヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲の第2楽章とか、ト短調の弦楽五重奏曲の第4楽章の序奏がそれである。しかし、このときのモーツアルトは、まるで感情失禁を犯したかのような印象さえ受けて、その悲しみが痛々しい
ところが、ここでみるベートーヴェンの悲しみは、あまりに懐かしくて、僕らの感情の殻をあっという間に溶かせてしまう温かさがある
」
曲を離れて印象に残るのは芸術家ベートーヴェンと生活者ベートーヴェンのあまりにも大きな落差ですこれは他の本からは得られない知識です。ベートーヴェンは生涯独身を通したのですが、自分に子供がいないことからか、甥のカールの面倒をよく見ていました。過干渉がカールにとっては重荷になり、結局ベートーヴェンの干渉に耐えられなくなり拳銃自殺を図ります
井上さんは、これまでのベートーヴェン研究が、あまりにもベートーヴェンを絶対視して、生活者としてのベートーヴェンは常識外れだったことを声高に言ってこなかったことを批判しています
個々の弦楽四重奏曲については、もう一度、CDで曲を聴きながら読み返そうと思っています そうしないと本当の意味でこの本の内容を理解することが出来ないからです。シンドイですが「モーツアルト 心の軌跡」の次にチャレンジしようと思います