17日(日)。昨日、横浜みなとみらいホールでヴァイオリニスト諏訪内晶子が主宰する「国際音楽祭NIPPON」のフィナーレを飾る「アンサンブル・コンサート」を聴きました 午後のコンサートは通常2時か3時、あるいは夕方6時か7時の開演が多いのですが、4時の開始です。主催者側に4時にこだわる何らかの理由があったのでしょう
ホール入口近くに諏訪内晶子が1990年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝した時の写真が何枚か飾られていました 当時彼女は18歳でした。あれから23年も経ってしまったとはとても信じられない想いです
優勝した本選の模様を収録したレーザーディスクを持っていたのですが、LDプレーヤーが故障したため涙ながらに手放しました
さて、この日のプログラムは①ブラームス「ピアノ三重奏曲第1番ロ長調」、②ラヴェル「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」、③メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」の3曲ですが、②のラヴェルは後から追加されたプログラムです 演奏はヴァイオリン=諏訪内晶子、チェロ=ピーター・ウィスぺルウェイ、ピアノ=江口玲です
自席は1階C8列10番と、かなり前の席で、演奏者の表情が良く見える位置です 2020人収容のホールは9割方埋まっている感じです。このホールは開演の合図がドラの音です。いかにも中華街を擁する横浜のホールらしい”音の顔”です
会場後方にはNHKのカメラが数台構えています。いずれ録画放送するはずです
黒のドレスに身を包まれた諏訪内がウィスペルウェイ、江口とともに登場します 彼女はスタイルがいいのでファッション・ショーから抜け出てきたような雰囲気です
1曲目のブラームス「ピアノ三重奏曲第1番ロ長調」は、ブラームスの中で一番好きな曲です まず江口のピアノが第1主題をゆったりと奏で、次いでウィスペルウェイのチェロがふくよかな調べを奏でます。この時、思わず背筋が寒くなりました
さらに諏訪内の温かいヴァイオリンが入ってきて3者のアンサンブルが続きます
何と感動的な音楽、何と詩情あふれる演奏でしょうか
理想のテンポで理想のブラームスが目の前で演奏されている喜びに浸りました
何年か前、韓国のチョン姉弟のトリオ(指揮者チョン・ミュンフンのピアノ、上の姉チョン・ミョンファのチェロ、下の姉チョン・キョンファのヴァイオリン)による演奏でこの曲を聴きましたが、あまりにもテンポが速すぎて、意識が着いていけなかったのを思い出しました チョン・ミュンフンはチャイコフスキーコンクール・ピアノ部門の入賞者ですが、ピアニストよりも指揮者としての彼の方がいいな、と思いました
第3楽章のアダージョをこんなに感動的に演奏したのを聴いたことがありません チェロが良く歌い、ヴァイオリンが絡み、ピアノが支えます
15分の休憩にホワイエに出ましたが、収容人数2020人のホールにしては狭いような気がしました2006人収容のサントリーホールのホワイエがさほど狭く感じないのは多分、奥行きがあるからではないか、その点、みなとみらいホールは横に長い代わりに奥行きがないからではないかと思いました。気のせいかもしれませんが
休憩後に追加されたラヴェル「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」は4つの楽章から成るソナタですが、時にバルトークのような曲想が見え隠れした面白い曲でした 第3楽章の冒頭はチェロが厳かに演奏しますが、メロディーがまるで「君が代」なので
ました。
さてトリはメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」です。作曲者36歳の時の作品ですが、モーツアルトの短調の曲に倣って言えば”疾走する哀しみ”と表現するのが相応しい曲想です 第3楽章「スケルツォ」はメンデルスゾーン特有の主題が軽快に”駆け巡る”曲想です
そして第4楽章「アレグロ・アッサイ・アパッショナート」で華やかにフィナーレを飾ります。何とも見事なアンサンブルです
今年はまだ19回しかコンサートに行っていませんが、その中ではダントツの第1位です