3日(水)。昨日のブログで湊かなえさんの「Nのために」を取り上げましたが、昨日の日経夕刊「らいふ」欄のコラム「プロムナード」に、湊かなえさんが「わたしと『告白』」というテーマでエッセイを書かれています。超訳すると
「2008年8月に『告白』でデビューして6年経つが、今年8月16日に英語版『告白』がアメリカ、イギリスで発売された ウォールストリートジャーナルなど複数のメディアに取り上げられたが、ロサンゼルス・タイムスは大絶賛してくれた
日本のメディアはまったく取り上げなかったので、”奥ゆかしさに欠ける行為”で申し訳ないが書かせてもらう
これまで15冊の作品を書いてきたが、そのつど自分では『告白』よりもずっとよいものを書けたと思っても、湊かなえの上には「『告白』の」が付いてきた
何も成長していないということか。そんな風に思っていた時にアメリカでの反響を聞いたので書かざるを得なかった。もちろん、新作もよろしくお願いしたい
」
確か湊さんは瀬戸内海の小島、因島出身で現在、淡路島に住んでいらっしゃるはず。ネット時代の今、ベストセラーは地方の島に住んでいようが、実力さえあれば書けるのだということを証明されています
閑話休題
道尾秀介著「水の柩(ひつぎ)」(講談社文庫)を読み終わりました 道尾秀介の作品はこのブログでも何度も取り上げてきました。彼の取り上げる小説のテーマは少年・少女の成長物語です。この作品も例外ではありません
主人公の吉川逸夫は温泉旅館・河音屋の跡取り息子で中学2年生の14歳。父母、祖母と一緒に住んでいる。平凡な毎日に飽きたらず「何か変化がないか」と憂いながら生きている 文化祭をきっかけに同級生の木内敦子と言葉を交わすようになる。彼女は「20年後の自分へ」と題する手紙をタイムカプセルから回収して、別の手紙を入れたいとして、逸夫にその作業を手伝うように頼む。実は彼女はクラスメイトからイジメに遭っていて、手紙には彼女たちへの復讐の言葉が書かれていた
それを回収しようというのだ。同じころ、逸夫は祖母のいくが50年前から出生について家族にウソをつき続けたきたことを知ってしまう
逸夫の提案で、いくと敦子と逸夫はダムに向かう。そして、自分の身代わりである人形をダムに落とす。これによって彼らは過去を清算して新しい人生を歩むきっかけができるのか・・・・・
実は逸夫の住む温泉旅館・河音屋の従業員である笑子の何気ない言葉が逸夫の成長に大きく影響を与えています 彼女は言います。「ぜんぶ忘れて、今日が1日目って気持ちでやり直すの」。この言葉の意味を逸夫は考えます。「笑子の言いたかった『忘れる』というのは、本当に記憶から消したり、思い出さないようにするのではなく、『乗り越える』という意味だったのだろうか」と
それにしても、読み終わってなお分からないのは、この本のタイトル「水の柩(ひつぎ)」の意味です。この小説で重要な舞台となる水を堰き止めるダムに関係があるらしいことは分かりますが、何故「柩」なのか疑問が残ります