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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

素足のピアニスト、アリス・沙良・オット+読響でベートーヴェン「第1ピアノ協奏曲」を聴く

2014年09月04日 07時00分57秒 | 日記

4日(木)。昨夕、池袋の東京芸術劇場で第10回読響メトロポリタン・シリーズ演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番ハ長調」、②リヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」で、指揮は1980年ドイツ生まれの34歳、ウィーン放送交響楽団の首席指揮者コルネリウス・マイスター、①のピアノ独奏は26歳のアリス・沙良・オットです

 

          

 

自席は2階K列11番、左ブロック左から2つ目の席です。会場はほぼ満席 会場のそこかしこには日本テレビ系列と思われるテレビ・カメラが設置されています ステージを見ると、中央にスタインウエイが鎮座し、ピアノ椅子の向こう側にもテレビカメラがピアニストの指使いを映すべくスタンバイしています。もちろんこれはリモコン操作で首を上下左右に振る優れものです カメラの足を隠すため、黒い布で覆っているのが、まるでカメラがロングスカートをはいているように見えます

オケのメンバーが登場します。弦楽器の配置は、左奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。対向配置で多いケースはヴィオラとチェロが逆に位置するパターンですが、マイスターが選んだ配置はとても珍しい態勢です。高音部と低音部を左右対称に限りなく近い形にしたものです

オケがスタンバイしたところでコンマスの登場です。この日は荻原尚子という人です。私は初めて見る人ですが、小柄で、長い髪を後ろで束ねたところは指揮者の三ツ橋敬子によく似ています

ワイン・レッドのサマードレスを身にまとったアリス・沙良・オットがマイスターに伴われて登場します いつものように彼女は素足です リサイタルの時もそうでしたが、彼女はピアノを弾くときに靴を履きません。自分の意志を直接素足からペダルに伝えるという意図があるのかもしれません しかし、夏は良くても冬は辛いのではないか・・・と思いますが 彼女は日系ドイツ人ですが、私は密かに、彼女の出身はドイツでも日本でもなく「不思議の国のアリス」ではないかと思っています

 

          

 

マイスターのタクトでベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番」の第1楽章が開始されます 彼の指揮姿を見ていて「この人はオペラ指揮者だな」と思いました 華麗な指揮ぶりでオケを良く歌わせます。プログラムのプロフィールを見ると、弱冠34歳の若者ですが、すでにウィーン国立歌劇場をはじめ世界各国のオペラハウスで振っています

長い序章の後、アリスのピアノが入ってきます。この曲は第1番という番号がついていますが、実質的には第2番目の協奏曲です。曲想としては、ベートーヴェンらしさが表れる第3番の前の、どちらかというとモーツアルトに近い穏やかな曲想です アリスのピアノで聴いていると、あれ、これモーツアルトみたい、と感じました ただし、それはカデンツァに至るまでの話です。第1楽章終盤のピアノ独奏によるカデンツァが始まると、まさにベートーヴェンそのものの世界に突入します ベートーヴェン自身の作曲によるカデンツァは3種類ありますが、多分、一番最後に作曲した曲を演奏したのだと思います。当時はピアノ製作の技術が日進月歩の時代で、ベートーヴェンの作品は後に行くほど音域が広がって行ったからです。アリスは極限の集中力でカデンツァを弾き切りました

第2楽章はいきなりピアノ独奏から入りますが、抒情的に表情豊かに奏でていきます。とくに、クラリネットとの対話は大変美しく、ベートーヴェンのラルゴを堪能できました そして間を置かず入った第3楽章は、アリスの喜びに満ちたピアノが超スピードで走ります。マイスターの伴奏は、決してソリストを邪魔することなく、しっかりとサポートしていきます

演奏が終わると、会場一杯の拍手 とブラボーが飛び交う中、アリスは深々と頭を下げ、オケにも頭を下げます。そして指揮者にオケを立たせるよう求めます。こういうところはステージマナーとして素晴らしいと思います 4回目にステージに呼び戻された時、椅子に座り、少し考えてから、おもむろにベートーヴェンの「エリーゼのために」を演奏しました。これがまた、しみじみと素晴らしい演奏でした

          

          

             (2012年11月5日のピアノ・リサイタルのプログラム)

 

休憩後はリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」です。管楽器を中心にオケが拡大します。この曲は「夜・日の出」「登山」「頂上」「下山」から成る交響曲なのですが、いつも思うのは、彼は何でも音楽にしてしまう、ということです 「英雄の生涯」(自分自身の生涯)にしても、「家庭交響曲」(自分の家庭の話)にしても、誇大妄想的とでも言えるような大管弦楽曲に仕立て上げています

マイスターの前に譜面台はありません。ブラスによって「夜」が静かに演奏されます この曲を聴いていても、やはりマイスターはオペラ指揮者だな、と思います

この曲は、純粋にアルプス登山を音楽にした”音による絵画”として割り切って聴くのが一番良いのかも知れませんが、大管弦楽が咆哮する高いテンションが持続すると、時に嫌気が差してきます 最後の「下山」で収束するとやれやれと思ってしまったりします。それでも、途中、歌劇「ばらの騎士」の甘美な世界と同じ曲想が弦楽器で演奏されると、やっぱりリヒャルト・シュトラウスはいいな、と思います 最後に誤解のないように言っておきますが、マイスターはまた是非聴いてみたい素晴らしい指揮者だと思います

 

          

 

演奏が終わってロビーに出ると、アリス・沙良・オットのサインを求める人たちが長い列を作っていました 私は2012年11月5日のリサイタルの時にショパン「ワルツ・アルバム」にサインをもらっているので、今回はまっすぐ帰ってきました

 

          

         

コメント (2)
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