3日(金)。産経新聞電子版によると、ロシアのソプラノ歌手、アンナ・ネトレプコのコンサートが中止になりました 記事の内容は次の通りです
「ロシア出身の世界的なソプラノ歌手、アンナ・ネトレプコが5日に台北で予定していたコンサートが中止されることになった ネトレプコはロシアのプーチン大統領に近いとされ、ウクライナが制裁対象にした芸術家らに含まれ、市民団体などから反発が出たためだ 台湾メディアによると、ネトレプコは台湾フィルハーモニック(NSO)主催のコンサートで地元歌手らと共演する予定だった。だが、予定が発表されると、『侵略を正当化した人が台湾で稼いでいいのか』といった批判が噴出 台湾の文化部(文部科学省に相当)も『台湾の戦争に対する態度は、はっきりしている』と反対を表明した NSOは2月28日、コンサートの中止を発表、チケット購入者には代金を払い戻すという。オーストリア在住のネトレプコはロシアによるウクライナ侵攻後、繰り返して戦争への反対を表明し、一時中止した活動を欧州で再開している ネトレプコは台湾のコンサート中止を受け、『まことに遺憾だ。過去の言動が誤解を受けた可能性がある。私はプーチン大統領と数回しか会ったことがなく、ロシア政府から支援を受けたこともない』との声明を発表した」
この記事を見て真っ先に思ったのは、日本でも近々ネトレプコのコンサートがあったはずだ、ということです ネットで検索してみたら出てきました
3月15日(水)19時からサントリーホールで「プレミアムコンサート」が開かれます 共演はテノール歌手ユーシフ・エイヴァゾフ(ネトレプコの2番目の夫)で、バックはミケランジェロ・マッツァ指揮東京フィルです ヴェルディ、ドニゼッティ、プッチーニ、チャイコフスキーなどのアリアを歌うようです サントリーホールのWEBサイトによると、A席24000円のみ残席ありで、S席29000円、B席19000円、C席14000円、P席12000円はソルドアウトとなっています
ネトレプコはライブで聴きたい数少ない歌手ですが、私にとっては苦い経験があるので、今回もチケットは取りませんでした というのは、ネトレプコは2011年6月のメトロポリタン・オペラ来日公演で「ラ・ボエーム」ミミを歌う予定でしたが、3月11日の東日本大震災と東京電力の原発事故の影響を受けて来日せず、代わりにバルバラ・フリットリが歌うことになったからです 彼女の歌を聴きたくて高額なチケット代を払ったのにフイになりガッカリしました それ以来、ネトレプコについては「METライブビューイング」を鑑賞することで我慢しようと思うようになりました 今回の日本公演のチケットを買った皆さん、急きょ中止にならないといいですね
ということで、わが家に来てから今日で2971日目を迎え、NATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請しているフィンランドで、ロシアの徴兵から逃れようと国境を越えて入国するロシア人が増えていることから、先月28日、ロシアとの国境沿いにフェンスの設置工事が始まったが、2026年までに全長およそ200キロのフェンスが建設される予定である というニュースを見て感想を述べるモコタロです
ロシアが主権国家ウクライナに侵攻したから 周辺諸国は明日はわが身と警戒する!
昨日、夕食に「なべしぎ」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました 「なべしぎ」は先月下旬の朝日新聞に載っていた料理研究家きじまりゅうた氏のレシピで、初挑戦しました 材料は豚肉、茄子、ピーマンで、味噌味になっています。初めてにしてはとても美味しくできました
昨夜、すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル「室内楽シリーズ 文学と音楽と 深谷まりプロデュース編」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第15番 イ短調 作品132」、②テレマン「ガリバー組曲」、③トライバー「フルートまたはヴァイオリンとギターのための二重奏曲」、④ベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 作品135」より第2楽章、⑤ベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130」より第5楽章です 演奏はヴァイオリン=深谷まり、ビルマン聡平、ヴィオラ=中恵菜、チェロ=森澤泰、ギター=秋田勇魚、朗読=柴田元幸です
開演に先立ち、本公演の”仕掛け人”深谷まりさんによる「プレトーク」がありましたが、この日のプログラムを組み立てるまでの苦労話などを、制限時間いっぱいの14分にわたり興味深くお話しされ、久しぶりに充実したプレトークを聞いたと満足しました
プログラム前半はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第15番 イ短調 作品132」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770ー1827)が1825年に作曲、同年11月6日ウィーンでシュパンツィク四重奏団により初演されました 5楽章形式を取り、卓越した作曲技法と精神的な深さという点で、後期の弦楽四重奏曲の中でも最高峰の作品の一つに数えられます 第1楽章「アッサイ・ソステヌート」、第2楽章「アレグロ・ノン・タント」、第3楽章「モルト・アダージョ」、第4楽章「アラ・マルチャ、アッサイ・ヴィヴァーチェ」、第5楽章「アレグロ・アパッショナート」の5楽章から成ります
左からビルマン聡平、深谷まり、中恵菜、森澤泰の並びで第1楽章の演奏に入ります 極めて内省的な音楽で、後期のベートーヴェンの深みを感じさせます 第2楽章では中間部のバグパイプのような音色の演奏が印象的です 第3楽章の自筆譜の冒頭には、ベートーヴェン自身により「病が癒えた者の神に対する聖なる感謝の歌、リディア旋法による」と書かれています ベートーヴェンは作曲中に持病が悪化したため作曲を一時中断しましたが、その病が癒えたことに対する感謝の気持ちをアダージョに乗せて表したのです 4人による静謐で祈りに満ちた演奏がじわじわと迫ってきます 第3楽章から第4楽章にかけては、ビルマン聡平を筆頭に4人が冗舌な(よく歌う)演奏を展開します 4人の中ではヴィオラの中恵菜だけが弦楽四重奏団(「カルテット・アマービレ」)のメンバーで弦楽四重奏曲には普段から馴染みがあると思われますが、オーケストラ活動を中心とするこのメンバーで充実した演奏に仕上げるまでには、相当の努力と協同作業があったのだろうと推測します 聴きごたえのある素晴らしい演奏でした
プログラム後半は、翻訳家で東大名誉教授の柴田元幸氏による文学作品の朗読と弦楽器の演奏によるコラボレーションです
1曲目はジョナサン・スイフト著「ガリバー旅行記」がテーマです ジョージ・フィリップ・テレマン(1681-1767)は1726年にイギリスで出版され大ブームとなったスイフトの「ガリバー旅行記」の物語を下敷きに、序曲と4つの部分から成る冗談音楽「ガリバー組曲」を作曲しました ①「序曲」、②「リリパットのシャコンヌ」、③「ブロブディンナグのジグ」、④「夢みるラピュータ人と目覚まし係」、⑤「典雅なフウイヌムの踊りと野蛮なヤフーの踊り」の5曲から構成されています
まず最初にビルマン聡平と深谷まりのヴァイオリン二重奏によりテレマン「ガリバー組曲」の「序曲」が演奏され、次いで、第1曲「リリパットのシャコンヌ」が演奏され、深谷のヴァイオリンと秋田勇魚のギターによるトライバー作曲「ヴァイオリンとギターのための二重奏曲」の「イントロダクション」の演奏を背景に、柴田元幸氏がスイフトの「ガリバー旅行記」の「リリパット国渡航記」の一節を朗読します それが終わると、再びビルマン聡平と深谷まりのヴァイオリン二重奏でテレマン「ガリバー組曲」の第2曲「ブロブディンナグのジグ」が演奏され、次いで、深谷のヴァイオリンと秋田のギターによるトライバーの二重奏の「スケルツォ」の演奏を背景に柴田氏が「ブロブディンナグ国渡航記」の一節を朗読し・・・ということを繰り返します ヴィルマン聡平と深谷まりの、また深谷と秋田勇魚のデュオが素晴らしく、それに輪をかけて柴田氏の身ぶり手ぶりを交えての朗読が迫真に満ちていて、まるで紙芝居にのめり込む子どものように熱心に耳を傾けている自分に気が付きました その時、私は思いました。「これこそ芸術ではないか」
後半の2曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 作品135」(1826年作曲)の第2楽章「ヴィヴァーチェ」の演奏に乗せて、柴田氏がパウル・アーサー著「写字室の旅」の一節を朗読します 実質的なスケルツォのユーモアを湛えた躍動感のある音楽に乗せて、3杯のスコッチをいっぺんに注文する男の話をミステリータッチで朗読し、オチで聴衆をどっと笑わせました プレトークで深谷さんは「物語に相応しい音楽について、柴田氏と何度もやり取りをした」と語っていましたが、この曲こそその「やり取り」の対象だったのではないかと思います。まさに、文学と音楽がマッチしたセンスのある選曲でした
最後はベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130」(1825年作曲)の第5楽章「カヴァティーナ:アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ」の静謐な演奏に乗せて、柴田氏が、木の人形を作ったお爺さんの物語(「ピノキオ」)を内容とするレベッカ・ブラウン著「ゼペット」を朗読し、しみじみとした気持ちにさせました これも選曲がピッタリでした
素晴らしいコンサートでした 何を置いても柴田元幸さんを引きずり込んだのが大きいと思います 私はコンサートを聴いて心の底から感動することはあまりないのですが、この公演は本当に感動を覚えました これまで開催されてきた156回の「室内楽シリーズ」の中でも屈指の好企画だと思います 少人数による「室内楽シリーズ」では、こういう企画こそやってほしいと思います 仕掛け人の深谷まりさんの企画力と交渉力と実行力に最大限の拍手を送ります