12日(日)。昨日の朝日新聞朝刊に「業界2割『マスク着用継続』指針 ~ 政府、指針見直し状況調査」という見出しの記事が掲載されていました クラシック音楽に関する記事の概要は次の通りです
「マスク着用を13日から個人の判断に委ねる運用に変えるのに合わせて政府は10日、業界団体ごとのガイドラインの見直し状況を発表した 2割弱の団体が、従業員らに引き続き着用を求めるとしている。指針は政府の要請を受けて195の業界団体が作った。このうちクラシック音楽やエステなどの18団体は着用の対象を従業員のみとする
一方、新型コロナが5月8日に感染症法上の分類で『5類』に引き下げられると、これまでの指針を維持するかどうかは業界団体が判断することになる。オフィスなどのガイドラインを作っている経団連は、廃止する方針だ
」
これに関連して、新国立劇場はホームページで「3月13日以降の新国立劇場主催公演における新型コロナウイルス感染対策について」という「お知らせ」を掲載しました 内容は次の通りです
「先日、政府によるマスク着用の考え方が見直され、3月13日以降マスクの着用は屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねられることとなりました これを受けて、3月13日以降、新国立劇場の主催公演につきましては、来場者の皆様のマスク着脱は原則としてお客様の判断に委ねることといたします。個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いいたします。劇場内では、引き続き咳エチケットにご協力いただくとともに、以下の場面においては、マスクの着用を推奨いたします
〇大声で、または長時間会話をする場合
〇咳、くしゃみが出る場合
〇舞台に向けた声援を行う際
お客様におかれましては、何卒ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
なお、新国立劇場における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインは3月13日に改訂版を公開予定です」(以上)
上記のうち「個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いいたします」というのは、「マスクを着用していない人がいても、個人の自由なので、批判しないでほしい」ということだろうし、「劇場内では、引き続き咳エチケットにご協力いただく~」というのは、「咳が出る時はハンカチで口元を押さえる」とか「咳がなかなか収まらない時は、一旦席を外しロビーに出る」ということでしょう また、マスクの着用を推奨する行為のうち「舞台に向けた声援を行う場合」というのは、ブラボーをかける際にはマスクをしてください、ということです
私としては、3月13日以降もしばらくの間は、マスクを着用してコンサート通いを続けようと思っています
ということで、わが家に来てから今日で2980日目を迎え、中国共産党の習近平総書記が10日、全国人民代表大会で国家主席として3期目入りを決めたが、最高指導部は習氏の側近で固められた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
ブレーキ役がいない状態は ロシアの独裁者プーチンと 同じ道を歩む恐れが大きい
岡田暁生著「モーツァルトのオペラ『愛』の発見」(講談社学術文庫)を読み終わりました 岡田暁生は1960年京都生まれ。大阪大学大学院博士課程単位取得満期退学。京都大学人文科学研究所教授。著書に当ブログでもご紹介した「音楽の危機 『第九』が歌えなくなった日」「音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉」「西洋音楽史 『クラシック』の黄昏」(以上中公新書)、「モーツァルト よみがえる天才」(ちくまプリマー新書)の4冊をはじめ、「オペラの運命」「ピアニストになりたい」「クラシック音楽とは何か」など多数あり
本書は「恋愛哲学者モーツァルト」(新潮選書・2008年3月刊行)を改題し文庫化したもので、以下の各章から構成されています
はじめに :「時代の子」としてのモーツァルト
第1章 モーツァルトとオペラ史における愛の発見
第2章 愛の勝利《後宮からの逃》と青春の輝かしき錯覚
第3章「昔はあんなに愛し合っていたのに」《フィガロの結婚》と喜劇の臨界点
第4章 悪人は恋人たちの救世主《ドン・ジョバンニ》と壊れた世界
第5章 臍をかんで大人になる?《コシ・ファン・トゥッテ》と男女の化学結合
第6章 清く正しく美しく《魔笛》と市民社会のイデオロギー
著者は「はじめに」の中で、本書で言わんとしていることについて次のように書いています
「本書は《後宮からの逃走》から《魔笛》に至るモーツァルトの5つの喜劇オペラを、恋愛5部作として読み解こうとする試みである 私の知る限り、モーツァルトのオペラ創作を~ワーグナーの《ニーベルングの指環》と同じ意味において~『連作』として捉える試みは、これまでなかったように思う
しかしながら、虚心坦懐に音楽を聴き、そして台本を読めば読むほど、これら5つのオペラが続きものであることは、疑いの余地ない自明なことであると思えてくる
恋愛をめぐる特定のモチーフ(とりわけ嫉妬と和解)が、尋常ではない執拗さでもって発展的変奏を施されながら、ひとつの長編小説を紡いでいく
《後宮からの逃》《フィガロの結婚》《ドン・ジョバンニ》《コシ・ファン・トゥッテ》《魔笛》・・・この5つのオペラは、単に偶然的にこの順で並んでいるのではない。モーツァルトは自分の創作の前後関係などは頓着せず、そのときたまたま手に入った台本に、霊感のおもむくまま次々素晴らしい音楽を書き飛ばしていったのではない
5つのオペラのそれぞれが、その時以外には書かれようがなかった絶対的な必然性をもって、モーツァルトの創作の配置の中で自分の位置を主張しているのだ
」
著者は上記の観点からそれぞれのオペラの特徴や本質を明らかにしていきます そして、「あとがき」の中で著者は「音楽史で最も愛おしい作曲家はモーツァルトである」とした上で、次のように書いています
「『真面目』と『不真面目』の間の、ぞっとするように鋭利で、悪魔的で、しかし切なくなるほど真摯な両義性・・・私にとってのモーツアルトはまさにこうした危うさにあるのだが、あれこれ本を読んでみても、人と話していても、こういう部分で強い共感を見出すような機会は、そう多くはなかった」
つまり、ベートーヴェンやマーラーの音楽に比べ”軽い”癒しの音楽と捉えられがちなモーツアルトだが、実はその本質はもっと深いところにある、という考え方に立ち、オペラの名作を分析し鋭く抉っていきます 私にとっては意外な発見も多かったです
モーツアルト愛好家には堪らなく面白い本です
クラシック・ファンの皆さんには、すでに当ブログでご紹介した下記の書籍と併せてお薦めします