28日(火)。わが家に来てから今日で2996日目を迎え、不倫口止め料の支払いをめぐる疑惑で、近く起訴される可能性が取りだたされているアメリカのトランプ前大統領が集会を開き、「ニューヨークの地方検事は、不正な司法省の指示のもと犯罪でも問題でもない案件で私を捜査していた。あの馬面は好きになれない」と検察批判を展開した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
NY地方検事はトランプについて「あの馬鹿面は好きになれない」と言ってるかもね
昨日、夕食に「鶏のクリームシチュー」と「生野菜とツナのサラダ」を作りました シチューは市販のルーを2種類混ぜています
昨夜、サントリーホールで東京都交響楽団「第971回定期演奏会Bシリーズ ~ リゲティ生誕100年記念」を聴きました プログラムは①リゲティ「虹~ピアノのための練習曲集第1巻より」(日本初演)、②同「ヴァイオリン協奏曲」、③バルトーク「中国の不思議な役人」(全曲)、④リゲティ「マカーブルの秘密」です
演奏は②のヴァイオリン独奏と④のヴァイオリン独奏と声=パトリツィア・コパチンスカヤ、③の合唱=栗友会合唱団、指揮=大野和士です
1曲目はリゲティ「虹 ~ ピアノのための練習曲集第1巻より」の日本初演です この曲はジェルジ・リゲティ(1923-2006)が1985年にピアノ用に作曲、2012年に管弦楽版として編曲し、同年4月27日に初演されました
楽員が配置に着きますが、弦楽はコンマスの四方、第2ヴァイオリン首席の遠藤、チェロ首席の伊東、ヴィオラ首席の鈴木、コントラバス主席の池松の5人しかいません あとは管楽器と打楽器、そして下手にチェレスタ、ハープの高野麗音がスタンバイします
大野の指揮で演奏に入ります リゲティの曲というので身構えていましたが、弦楽器を中心とする繊細で美しい曲でした
小室敬之氏のプログラム・ノートによると、セロニアス・モンクやビル・エヴァンスといったジャズピアニストからインスパイアされて作曲したとのことで、納得しました
ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」はいいですね
【注】これ以降はコパチンスカヤの演奏とパフォーマンスについて触れていますので、本日の「都響スペシャル」を聴く方はお読みにならないことをお勧めします。
2曲目はリゲティ「ヴァイオリン協奏曲」です この曲はヴァイオリニストのサシュコ・ガヴリロフから委嘱を受けて1990年に作曲され、1992年に最終稿が完成しました
第1楽章「前奏曲」、第2楽章「アリア、ホケトゥス、コラール」、第3楽章「間奏曲」、第4楽章「パッサカリア」、第5楽章「アパッショナート」の5楽章から成ります
ヴァイオリン独奏のパトリツィア・コパチンスカヤは1977年(現在の)モルドヴァ生まれ。2021/2022シーズンにはベルリン・フィルとバーミンガム市響のアーティスト・イン・レジデンスとして活動するなど、世界を駆けまわっています
コパチンスカヤが水色の衣装で登場し、大野の指揮で第1楽章に入ります 冒頭は独奏ヴァイオリンによって「蜜蜂のささやき」のような繊細な音楽が奏でられ、しだいに激しい演奏が展開します
第2楽章は独奏ヴァイオリンの美しい演奏で始まりますが、突然、ソリストは憑依しアグレッシブな演奏が繰り広げられます
第3楽章は独奏ヴァイオリンが高い音域で抒情的な音楽を奏で、第4楽章は最弱音による繊細な演奏が続きます
そして第5楽章に入ると、コパチンスカヤはヴァイオリンを弾きながら歩き回ったり、飛び跳ねたり(彼女は裸足だった!)、大声で「アーッ」と叫んだり、オケに向かって「ワーッ」と叫び「みんなも一緒に」と挑発したりします
これに指揮者とオケが反応して一斉に「ワーッ」と叫びます
すると今度は客席に向かって「ワーッ」と叫び聴衆を挑発します
何割かの聴衆が「ワーッ」と返していました
これがヴァイオリンが下手だったら、ただのアホですが、べらぼうに巧いから説得力があるのです
かくしてコパチンスカヤはヴァイオリンと声と演技力を武器にオケと聴衆を巻き込んで、サントリーホールは興奮の坩堝と化しました
コパチンスカヤはアンコールに、コンマスの四方恭子を指名し、2人でリゲティ「バラードとダンス」(2つのヴァイオリン用)を丁々発止のやり取りで演奏、繰り返しのカーテンコールで満場の拍手を浴び、会場の温度を2度上昇させました 本公演と翌28日の公演が都響ソロ・コンマスとして最後となる四方さんにとって、忘れられない演奏になることでしょう
プログラム後半の1曲目はバルトーク「中国の不思議な役人」(全曲)です この曲はベーラ・バルトーク(1881-1945)がロシアバレエの主宰者ディアギレフの依頼により1918年から翌19年にかけてピアノ版を作曲、1924年に管弦楽版に編曲、1926年11月にケルンで初演されました
ステージは大幅な配置換えが行われます オケは16型の通常のスタイルとなり、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの都響の並び
コンマスは四方恭子、隣は山本友重というダブル・コンマス態勢を敷きます。舞台下手にはハープの高野麗音が控えます
2階正面のP席には栗友会合唱団がスタンバイします
物語は、娘をおとりに金を取ろうとする不良3人に、中国の官吏(マンダリン)が殺されるが、娘への執着のために生き返り、最後にその愛を得て死ぬというものです
大野の指揮で演奏に入りますが、クラリネット、オーボエのソロが素晴らしかった また、ここぞという時の高野のハープが美しく鳴り響いていました
全体的に物語の残虐性が良く伝わってくるアグレッシブで集中力に満ちた演奏でした
最後の曲はリゲティ「マカーブルの秘密」です この曲は1974年から77年にかけてオペラとして作曲され、1992年に管弦楽版が作曲されました
小室氏のプログラムノートによると、この曲の物語は「退廃的な架空の国を舞台に、地獄からやってきたネクロツァールが、彗星がぶつかって世界が滅びると予言。しかし誰もまともに取り合わず、皆が自分の欲望に沿って行動を続けるという極めてグロテスクで不条理なコメディ」です
オケが前半の小規模な編成に戻ります 四方コンマス以下、楽員がスタンバイして指揮者を待っていると、舞台下手から、顔にマサイ族のような化粧を施し、ステージ衣装の上に古新聞やら透明のゴミ袋を貼り付けた、まるでニワトリに扮したピエロのようなコパチンスカヤが、何語か分からない意味不明を言葉を吐きながら登場
大声で叫んだり、大笑いしたり、そうかと思うと急に静かになったり、指揮者の譜面台を叩いたり、オーケストラの面々を挑発したり、やりたい放題を始めました
やがて 下手から大野が登場、「いったいどうなってんねん
このカオスは
」という驚きの顔で指揮台に上り、演奏に入りました
コパチンスカヤはヴァイオリンを弾いたり、弾きながら叫んだり、意味不明の言葉を吐いたりと、相変わらずやりたい放題です
ついに大野はキレて、客席の方に振り返り「WBCの栗山監督~、今日ばかりは助けてください~、こんなのやってられませ~ん
」と叫び、聴衆にバカ受けしました
しかし、コパチンスカヤはいい加減にやっているわけではありません
多少のアドリブはあるでしょうが、ちゃんと楽譜を見て演奏しています
小室氏の解説によると、どうやら彼女の発している言葉は「ナチスのゲシュタポやソ連のKGBを、コミュニケーション不能な相手として戯画化している」ようです
コパチンスカヤは、この曲でもヴァイオリンと声と演技力を武器に、指揮者、オーケストラ、そして聴衆を巻き込んでホールをカオスの状態に陥れ、スタンディング・オベーションを巻き起こしました
私も立ち上がって拍手をしました
だって、前の人が立ってステージ上のコパチンスカヤが見えないんだもん
ここで私は悟りました。なぜスタンディング・オベーションは連鎖して皆が立つのか・・・前の人が立つとステージが見えなくなるから
これを「スタンディング・オベーション連鎖の法則」と名付けます。勝手に
「今年 最も印象に残ったコンサート」を12月末に振り返った時、本公演は最有力候補として挙げられていることでしょう