16日(木)その2.よい子はその1も見てね モコタロはそちらに出演しています
昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でオッフェンバック「ホフマン物語」初日公演を観ました 出演はホフマン=レオナルド・カパルボ、ニクラウス/ミューズ=小林由佳、オランピア=安井陽子、アントニア=木下美穂子、ジュリエッタ=大隅智佳子、リンドルフ他=エギルス・シリンス、アンドレ他=青地英幸、ルーテル他=伊藤貴之、ヘルマン=安東玄人、ナタナエル=村上敏明、スパランツァーニ=晴雅彦、シュレーミル=須藤慎吾、ステッラ他=谷口睦美。合唱=新国立劇場合唱団、管弦楽=東京交響楽団、指揮=マルコ・レトーニャ、演出・美術・照明=フィリップ・アルローです
この日、東京劇術劇場ではサーモグラフィー・カメラを撤廃していましたが、新国立劇場では継続して設置しています また、サントリーホール他のホールではクロークを再開していますが、新国立劇場はまだ再開していません コートを預ける人がいなくなる春を待っていたのかもしれません。さすがは私立でなく国立です。したたかです
会場は、超人気プロとは言えない演目のせいか、初日公演にしてはちらほらと空きが目立ちました
私が新国立オペラでフィリップ・アルロー演出の「ホフマン物語」を観るのは、2003年、2005年、2013年、2018年に続いて今回が5度目です 私は2002年のシーズンから新国立オペラの会員になっていますが、過去の上演記録を見たら、2003年の出演者にニクラウス/ミューズ=エリナ・ガランチャとあり、観て聴いたはずと思うものの、まったく思い出せません 当時はオペラを聴くようになって日が浅かったので、ガランチャと言われてもピンとこなかったと思われます できるならあの日に戻りたい、と思います
歌劇「ホフマン物語」はジャック・オッフェンバック(1819-1880)が1877年から80年にかけて作曲、1881年パリのオペラ・コミック座で初演された未完のオペラです
物語の舞台は歌劇場に隣接する酒場。公演終演後に歌姫ステッラとの逢瀬の約束を交わした詩人で音楽家のホフマンは、酒を飲みながら3人の女性との失恋物語を学生たちに語り始める 機械仕掛けのオランピアに、そうとも知らず恋をする物語 胸を病む恋人アントニアが激しく歌い息絶えてしまう物語 ヴェネツィアの高級娼婦ジュリエッタに影を奪われる物語 回想を終え、恋の空しさに絶望して酔いつぶれたホフマンの前に、詩の女神ミューズが姿を現す
ホフマンを歌ったレオナルド・カパルボはアメリカ出身のテノールですが、ジュリアード音楽院に学び、マリリン・ホーンに師事、ヨーロッパやアメリカを中心に活躍しています 力強い歌唱力と役に成り切った演技力が印象的でした
ニクラウスとミューズの2役を歌った小林由佳は国立音楽大学・大学院修了、文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリアに留学、二期会を中心に活躍しているメゾ・ソプラノです 美しい歌唱で聴衆を魅了しました
オランピアを歌った安井陽子は桐朋学園大学・大学院修了、文化庁派遣芸術家在外研修員としてウィーン国立音楽大学に留学、二期会会員として活躍しているソプラノです 機械仕掛けの人形の動きを見事に再現、歌も超絶技巧の最高音を張り上げ、聴衆から圧倒的な喝さいを浴びました ネジが切れて回転するシーンなどは前回(2018年)の時よりも進化していると思いました シン安井陽子の誕生です
リンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダベルトゥットの4役を歌ったエギルス・シリンスはラトヴィア出身のバス・バリトンですが、深みのある歌唱で存在感が抜群でした
アントニアを歌った木下美穂子は武蔵野音楽大学・大学院修了、新国立オペラでも活躍しているソプラノですが、「きじ鳩は逃げた」をはじめ透明感のある美しい歌唱が印象に残りました
ジュリエッタを歌った大隅智佳子は東京藝術大学・大学院修了、新国立オペラでも活躍しているソプラノですが、声に力があり良く通ります 出演者の中では一番声が出ていたのではないかと思います
新国立劇場合唱団のコーラスはいつもながら素晴らしく、今回は高度な演技力が求められますが、見事に演じ切りました
スロヴェニア出身のマルコ・レトーニャ指揮東京交響楽団は歌手に寄り添いつつ、自らも登場人物の心情を歌い上げました とくに、第3幕(アントニアの幕)では、ヴァイオリン・ソロや、オーボエ、フルートといった木管楽器がアントニアの悲しい心情を歌い上げていました
フィリップ・アルローの演出は色彩感に溢れ、美しくファンタジックな世界を描いていました
カーテンコールが繰り返され、幕が下りたのは22時25分を回っていました 家に帰ったのが23時を過ぎていたので、「リバーサルオーケストラ」の最終回が見られませんでした それだけが心残りです